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教条的自然保護運動

2006年12月13日09時59分 / 提供:PJ

pj
滋賀県の比良スキー場は赤字続きで、04年3月に廃止された。06年4月から07年11月までの1年半をかけての撤去工事が継続中である。毎日、朝から夕方まで大型のヘリが瓦礫を運び続けている。山上には鉄筋コンクリート造りの宿泊施設もあり、総量は数千トンに上るだろう。輸送費は数億円かかるそうである。

 スキー場事業者は施設の撤去はもちろん、土を埋めた場所は掘り返し、植生を回復し、すべて50年前の原状に戻し、今後も長期にわたっての復元管理せよ、というものだ。事業者の親会社である私鉄がその費用を負担する。ということは私鉄沿線の住民が運賃を払って負担することにつながるわけだ。

 このような、完全ともいえる原状回復が実現した背景には自然保護運動がある。その運動を担った滋賀県勤労者山岳連盟の「比良八雲ヶ原アピール」と称した「勝利」宣言文があり、一部を引用する。

 『廃業したスキー場の跡地を原状に回復させると言う他にあまり例を見ない事業を事業者、県そして自然を愛する私達が連携して成功させ、自然回復の先例として全国に発信するべきだと思います』。

 気になるのは原状回復のための費用と資源の大量消費である。2トン程度吊れるヘリは1時間飛ぶと600L〜700Lほどのガソリンを食う。とても大食いなのだ。飛び始めてから現在3カ月余り、来年の11月まで飛ぶのかは知らないが、まだとても終わりそうにない。50年前に戻すために大量の石油を消費してよいのだろうか。大量のCO2の排出も問題である。

 ヘリで運ぶために細かく砕いてあるのだから、コンクリートなど、埋めても無害なものは山上に穴を掘って埋めて土で覆い、植林をしてはいけないのだろうか。山上にはブルドーザーが活躍中であるのでこうした工事ならば簡単であり、環境の負荷も小さい。

 何故、原状回復にそれほど拘るのか、理解に苦しむ。原状回復のために必要な資源消費の方が環境には大きな問題ではないのだろうか。

 このような、何がなんでも原状回復という運動は教条主義的であり、合理性に欠ける。中高年の登山が盛んだが、彼らが使うストックが登山道のコケなどの植物を傷めるとして、ストックの使用中止を声高に言う極端な自然保護主義者も存在する。ストックを止めれば安全性が犠牲になる。足の弱い人は行けなくなる。登山を安全に楽しむ人がいればこそ、山の自然保護は意味を持つという面もある。誰も行かない山がいかに美しくても、さして意味があるとは思えない。

 自然は神聖不可侵のものとする極端な考えが問題なのだ。自然破壊をよいと云っているのではない。もちろん自然保護も大切だ。だが他の問題との整合性やバランスを考えて欲しいと思う。

 マスコミは自然保護、環境のためといえば誰も反対できない風潮を作り出した。その裏には過去の自然破壊がひどかったことがあったのも確かだ。しかし上記の「宣言」にあるように、他のスキー場の廃止に際してまで同様の完全な原状回復を求める運動を起こそうとするのは行き過ぎであろう。視野をより広くもってもらいたい。この件がモデルケースとならないように願う。【了】

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パブリック・ジャーナリスト 岡田 克敏

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