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「崖っぷち犬」報道に疑問、そんなに日本は平穏か?

【PJ 2006年11月28日】− 22日朝、テレビ各局のワイドショーでは、徳島市内の絶壁に迷い込んだ犬のニュースがトップニュースとして取り上げられていた。犬の様子を生中継し、他のニュースを取り上げているときも画面の片隅に生中継映像がはめこまれていた。この「崖っぷち犬」は、同日、出動した徳島市消防局のレスキュー隊によって「救助」された。

 消防は犬を助けるためにいるのだろうか。消防法消防組織法に、犬の救助に関連する業務は一行たりとも書かれていない。今回、誰が何を根拠に出動を命令し、危険な断崖に消防署員を配置したのか。徳島市民の税金は、犬を救助するために支払われているのではない。付近住民が「警察に言ったけど何もしてくれない」とインタビューに答えていたが、当然である。消防が救助したことのほうが異常だ。あの時、他に要救助者が出て、犬を助けるために出動していたことで救助が遅れたとしたら、大問題なのだ。野犬を捕獲するのは保健所の仕事であるし、どうしても犬を助けたいと言うならボランティア活動に期待するしかない。

 今回の「美談」は、職務外の救出作業をした消防局と、能天気にそれを大々的に報じたマスコミの合作である。

 2003年度に、全国の自治体で殺処分された犬と猫の総数は44万頭にも上る。つまり、一日1200頭あまりの犬猫が、狂犬病予防法動物の愛護及び管理に関する法律に基づいて、行政機関によって殺されている。一匹の犬にあれほどの時間を割けるマスコミなのに、なぜこのことを取り上げないのか。

 マスコミは、「崖っぷち犬」で動物愛護を訴えたかったのではないのだろう。ただ、分かりやすい映像と、「命は大切」という分かりやすい話で、放送時間を埋めたかっただけなのだろう。ワイドショーで取り上げる話題がなかったのかもしれない。それなら、いじめ自殺問題を徹底的に取り上げることもできたはずだ。犬一匹の救出劇を報じるより、もっと伝える価値のある、議論する価値のある「命」の問題がこの社会にはある。犬の命の大切さを伝えることで、いじめられている子供たちに自殺を思いとどまらせようとしたのか。それほどマスコミは愚かではないだろう。

 「崖っぷち犬」がトップニュースになるほど、日本は平穏ではない。あまりに悲惨なニュースがありふれていて、伝えるべきニュースの優先順位が分からなくなっているのではないか。冷静に考えてほしい。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小林亮一【 宮城県 】
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