主婦が見た朝鮮半島分断の象徴、「板門店」
2006年11月23日08時24分 / 提供:PJ
ソウルから一時間ほどバスに乗り朝鮮半島分断の象徴、板門店に行った。これは中央高速観光という観光会社のツアーで、日本円で8000円くらいの料金。行き帰りのバス、昼食代が含まれていた。
観光バスの中ではガイドさんが何度も何度も、韓国と北朝鮮の戦争の歴史背景、板門店でのわれわれの行動予定や、絶対にしてはいけないことなどを説明していた。笑顔での説明だったが、もし軍事境界線近くで突然に駆け出したり不振な行動をとると、当然のごとく北朝鮮から銃で狙われるという説明を受ける。そのため昼食の際はアルコール禁止。
板門店に近づくと幾つかのポイントでバスに軍人が乗り込んできて、パスポートのチェックを受ける。バス後方でのチェックを終えバスの通路、私のすぐ脇を入り口に向かって歩く軍人さんの背中に黒々とした銃が背負われているのを見て目が釘付けになった。すぐ手の届くようなところで本物の銃を見たのは初めてだ。
板門店に入る手前の国連軍が警備するキャンプで、観光会社のバスから国連軍のバスに乗り換えた。運転手も国連軍の軍人。板門店に入る直前でバスを降り、スクリーンのある部屋に集められて映像を見ながら軍事境界線の説明を聞く。そこで手渡された「宣言書」を読んでサインをした。
宣言書には一行目から「敵の行動によっては危害を受ける、または死亡する可能性がある」と書かれている。最後まで読まなくても、もうそれ以上の危険はないだろうから、軍事境界線まで行くか行かないかは二三行読んで、そこで判断すればよい。「私は観光客だから撃たないでね」という意味があるらしい青いバッジを胸の見えやすいところにしっかりつけて出発だ。
板門店の見学の仕方であるが、バスを下りるとすぐ二列に整列させられた。学校を卒業してから二列に整列し、全体行動をするのは初めてかもしれない。ちょっと違和感を覚え、ここは韓国だなぁと実感した。
このツアーの最大のメインイベント、板門店の会談場見学は軍事境界線のある建物だ。会談場は北からも南からもドアがあり解放されていて、なんとこの建物の中では、半分から向こうの北朝鮮側に立って記念撮影も出来るのである。
さて、北朝鮮側の出入り口には韓国軍の軍人が一人、警備にあたっているのだが、私たちが傍にいてもこぶしを握ったポーズのまま微動だにしない。さらに彼の隣に立ってみて驚いたのが、息遣いさえ消えていること。人の気配がまったくない。まるで頑丈なマネキンの横に立ったような無機質な感じがしたので、思わず彼の横顔をじっと見てしまったほどだ。見た感じでは20代前半の若者。我が息子と重なる。私たちが部屋から出た後に少しは大きく肩で息をする時間はあるのだろうか?そんなことが気になって仕方がなかった。
ところで北と南は一体いま何のために分断しているのだろう。1953年7月27日、休戦協定が締結されたとき、ここ板門店にある橋で捕虜交換が行われたそうである。解放された人は北か南か自分で方向を決め、一度渡ったら二度と帰ることができなかったということでその橋は「帰らざる橋」といわれている。『そうか、渡ったあとで気が変わっても遅かったのだな』と思った。
つまりこの民族が北に住んでいるか南に住んでいるかはそれくらいの差でしかない。離れ離れになった家族が、毎年分かれた家族を偲びに訪れるという板門店近くの「自由の橋」の韓国旗に書かれた寄せ書きを見て、理不尽な歴史はまだ今も続いているのだと改めて思った。【了】
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観光バスの中ではガイドさんが何度も何度も、韓国と北朝鮮の戦争の歴史背景、板門店でのわれわれの行動予定や、絶対にしてはいけないことなどを説明していた。笑顔での説明だったが、もし軍事境界線近くで突然に駆け出したり不振な行動をとると、当然のごとく北朝鮮から銃で狙われるという説明を受ける。そのため昼食の際はアルコール禁止。
板門店に近づくと幾つかのポイントでバスに軍人が乗り込んできて、パスポートのチェックを受ける。バス後方でのチェックを終えバスの通路、私のすぐ脇を入り口に向かって歩く軍人さんの背中に黒々とした銃が背負われているのを見て目が釘付けになった。すぐ手の届くようなところで本物の銃を見たのは初めてだ。
板門店に入る手前の国連軍が警備するキャンプで、観光会社のバスから国連軍のバスに乗り換えた。運転手も国連軍の軍人。板門店に入る直前でバスを降り、スクリーンのある部屋に集められて映像を見ながら軍事境界線の説明を聞く。そこで手渡された「宣言書」を読んでサインをした。
宣言書には一行目から「敵の行動によっては危害を受ける、または死亡する可能性がある」と書かれている。最後まで読まなくても、もうそれ以上の危険はないだろうから、軍事境界線まで行くか行かないかは二三行読んで、そこで判断すればよい。「私は観光客だから撃たないでね」という意味があるらしい青いバッジを胸の見えやすいところにしっかりつけて出発だ。
板門店の見学の仕方であるが、バスを下りるとすぐ二列に整列させられた。学校を卒業してから二列に整列し、全体行動をするのは初めてかもしれない。ちょっと違和感を覚え、ここは韓国だなぁと実感した。
このツアーの最大のメインイベント、板門店の会談場見学は軍事境界線のある建物だ。会談場は北からも南からもドアがあり解放されていて、なんとこの建物の中では、半分から向こうの北朝鮮側に立って記念撮影も出来るのである。
さて、北朝鮮側の出入り口には韓国軍の軍人が一人、警備にあたっているのだが、私たちが傍にいてもこぶしを握ったポーズのまま微動だにしない。さらに彼の隣に立ってみて驚いたのが、息遣いさえ消えていること。人の気配がまったくない。まるで頑丈なマネキンの横に立ったような無機質な感じがしたので、思わず彼の横顔をじっと見てしまったほどだ。見た感じでは20代前半の若者。我が息子と重なる。私たちが部屋から出た後に少しは大きく肩で息をする時間はあるのだろうか?そんなことが気になって仕方がなかった。
ところで北と南は一体いま何のために分断しているのだろう。1953年7月27日、休戦協定が締結されたとき、ここ板門店にある橋で捕虜交換が行われたそうである。解放された人は北か南か自分で方向を決め、一度渡ったら二度と帰ることができなかったということでその橋は「帰らざる橋」といわれている。『そうか、渡ったあとで気が変わっても遅かったのだな』と思った。
つまりこの民族が北に住んでいるか南に住んでいるかはそれくらいの差でしかない。離れ離れになった家族が、毎年分かれた家族を偲びに訪れるという板門店近くの「自由の橋」の韓国旗に書かれた寄せ書きを見て、理不尽な歴史はまだ今も続いているのだと改めて思った。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 山下 真由美
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