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深刻化する自殺の増加。変死体の目撃者は語る

2006年11月20日13時39分 / 提供:PJ

pj
深刻化する自殺の増加。変死体の目撃者は語る
目撃者が、水死体の漂着が多い場所だと語る。東京・荒川放水路の平井大橋付近。(撮影:穂高健一)
東京・荒川放水路の河口付近には、ヘリコプターの飛来がなぜか多い。公共用の東京へリポートが江東区・木場にあるせいだろうか。それにしては平井大橋(蔵前橋通)から四ツ木橋(水戸街道)あたりの上空を執拗に旋回している。左岸の河川敷には首都高・中央環状線が走っている。交通情報を提供するヘリだろうか。ふだんはそのていどの気の留め方だった。

 小中学生の自殺がこのところ急増してきた。そのうえ、学校長までもが問題解決への苦悶と逃避から死を選ぶ傾向にある。多くのマスコミはいまや深刻な社会問題として、連日にわたって取り上げている。サラ金、ヤミ金融の強引な取り立て、ローン地獄から自殺する、経済的な理由も目立つ。高年齢化社会が進み、病苦による自殺も世相の影の部分だ。

 98年以降は毎年、自殺者が年間3万人を越えている。その数は交通事故の死者よりも多い。警察関係者などを除いた、一般人となると、身近なところで自殺者を知る機会は少ない。あっても、せいぜい生涯に一度か、二度くらい。3万人強の死者の実感が持てないのが現実だろう。

 マスコミに登場する知識人や学識経験者は、訳知り顔で自殺の要因と背景を活発に語る。大半が現地取材もせず、マスコミ報道から得られた情報のみで論評する。そのうえ、頭のなかで考える自殺概念、つまり形通りのコメントを述べる傾向が強い。

 自殺者が遺した遺書の検証すらなく、文面をそのまま鵜呑みにして語る。『死者は時として自分を飾った、偽りの言葉を遺す』という警戒心すら持ち合わせていない。『もっと現場から、足で語れ』といいたくなる論者が多い。

 東京・荒川放水路の河川敷は、一般車の進入禁止だ。野田貞夫さんは平井大橋の袂に立つガードマンの責任者。工事許可書もつトラックやミキサー車がくれば、鉄製の頑丈なゲートを開ける。河川敷に住むホームレスたちが自転車で行き来する都度、かれらに気さくに声をかけてゲートを開閉する。

 これらホームレスや釣り人(釣りは禁止)によって、荒川で水死体が発見される。すると、パトカーなど警察関係車両が数多くやってくる。野田さんたちガードマンはとたんにゲートの開閉で忙しくなる。上空には報道ヘリが飛ぶ。

 「周辺は自殺のメッカだよ」と野田さんが教えてくれた。今年6月から半年間で、水死体5遺体をみたという。平井大橋(東京湾を基点にした上流6キロ)から木根川橋(同8キロ)の間、2キロの間だ。範囲は間違いないかと、念を押すと、野田さんはこの2キロが仕事のテリトリーで、それを越えた上流にも、下流にも出向かないという。

 野田さん自身も5遺体のうち1体は第一発見者だったという。平井大橋の橋脚に死体が引っかかっていたと、橋脚を指す。水路とすれば、荒川と綾瀬川の合流地点だ。「荒川の中央は流れが速い。両岸は逆に葦が多く、流れが滞留する。だから、上流から流れてきた、死体が引っ掛かりやすいみたいだな」と死体発見場所の状況について語る。

 「私には非番の日があるし、半年間に5遺体を目撃したが、実際はもっと多いと思う。ホームレスならば、もっと見ているはずだよ」とつけ加えた。野田さんが目撃した水死体はすべて男性だったという。「1体は全裸だったから、きっと殺されたんだろうな」と推量する。荒川は激流ではないし、着衣が水の流れに奪われるとは考えにくい。野田さんの推理は当たっているかもしれない。

 平井大橋を渡ったところに新小岩公園がある。この上空でも、報道ヘリが飛来し、旋回することがある。すると、公園にたむろって酒を飲むホームレスたちが、急に河川敷に戻ってくる。30年来の年季の入ったホームレスもいる。野田さんがかれら事情を聞けば、公園内の樹木の枝で首を吊った自殺だよとか、団地の飛び降り自殺があったとか教えてくれるのだという。

 ホームレスは警察の目を厭い、捜査の聞き込みに関わりあいたくないから、公園から逃げ出してくるのだ。こうした一連の説明から、荒川下流の報道ヘリの飛来の多さが理解できた。思わぬ自殺のメッカがあったものだ。

 変死体がこうも数多ければ、警察はずいぶん多忙だろう。それでも、一つひとつしっかり検視されていると思う。しかし、何者かが橋上から被害者の四肢をつかんで川に投げ込んだり、故意に背後から突き落としたりしても、特別な外傷が残っていないと、殺人だと断定するのはむずかしいだろう。
 今年は秋田県で、川や用水路にわが子を投げ込む事件があった。そのような初動捜査の判断が難しい事件などが重ね合わさってくる。

 野田さんの説明から、年々増えてくる自殺が身近なものとして、かいま見られた。他方で、自殺増加を隠れ蓑で利用した、悪質な他殺事件が増えてきた、そんな世相がことのほか気になった。【了】

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記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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