株投資の税率アップは、団塊世代の大問題!
2006年11月20日07時11分 / 提供:PJ
個人投資家の株式譲渡益や配当の課税は、現在は10%の軽減税率が適用されている。これに対し、政府税制調査会は、この軽減税率を2008年中に廃止することで、大筋合意したという。そうなると、現在の軽減税率は譲渡益が07年末まで、配当は07年度末までの時限措置となっているため、政府・与党が延長を決めなければ、期限切れ後の税率は20%に上ることになる。
ひと昔前のことなら、株式投資をするのは、金持ちだけという発想があったが、現在は必ずしもそうではない。普通のサラリーマンでも、ネット取引をする層が増えている。昼間は、仕事で取引ができない人のための、夜間取引市場まで始まった。それなのに、これでは時代の趨勢に逆行しているのではないか、と疑問を持たざるを得ない。
そこで、これらを早くから問題視し「この株式譲渡益と配当の税率アップは、もう一つの重要な2007年問題である。慎重に対応し、個人投資家の意欲をそいではならない」と主張する日本個人投資家協会理事・岡部陽二氏に話を伺ってみた。
岡部氏は、かつて大手銀行役員、証券会社の会長を歴任し、国際的に活躍した後、広島国際大学教授として医療福祉の分野でも活躍している。著書も多く、百戦錬磨の金融の専門家として著名である。現在、(財)医療経済研究機構・専務理事でもあるが、とかく目先の動きに気をとられがちな個人投資家にむけて「岡部陽二のブログ」も開設。社会的な見地からのアドバイスをしている。
“2007年問題”といえば、団塊の世代が定年退職し、熟練した労働力の不足として社会に影響を与える大問題とされている。だが、影響はその問題だけでなく、退職後の彼等にとって、株式投資の譲渡益と配当の税率アップは、年代的にも社会的不公平さを生むという。
働いて所得税を納めて、株式運用すればまた税金というのは納得がいかない
岡部氏は、「定年退職後の団塊の世代は、年金だけでは足りない生活費を補うために、これまでの貯蓄を取り崩して使うだけではなく、効率的に運用して運用益を挙げようとする投資意欲の高い世代である。彼らがすでに所得税を納めた貯蓄資金を、株式に運用して得た運用益に課せられる税金が、退職した年から2倍になるというのは、納得のいかない制度改悪であろう」と主張する。
団塊世代には実に心強い、もっともな理屈であるが、「なぜか政治家からも声が上がらず、証券業界の反対も声が小さい。もっと議論すべきである」と、岡部氏は、関係者の腰の引けた姿勢に苦言を呈する。
もっとも、政治家たちがこの動きに、消極的なのには、理由がないこともない。株式投資をするのは、一部の金持ち層である、という世間一般のイメージから、政治家として、軽減税率の廃止に表立って文句を言いたくない、という心理があるようだ。しかし、これもまた、問題ではある。団塊の世代の生活実態を理解せず、彼らの要望を無視することは、政治家としての手腕を問われることにもなりかねない。また、政策について、きちんとした説明をしないで、シンプルで安直なイメージに頼るだけの政治では、有権者を見くびっていると思われても仕方がない。
金持ちを優遇しない株式軽減税制も可能である
岡部氏は、証券税制は、各国の事情によって異なるが、と前置きして次の事情を教えてくれた。「米国・英国では譲渡益課税・配当課税とも原則総合課税であるが、株式を長期保有した場合の譲渡益課税については、両国ともに軽減措置がとられている。ことに、英国では個人貯蓄口座制度が定着。18歳以上の個人が投資した株式や株式投信のキャピタル・ゲインは一定限度まで非課税とされている。わが国同様、資本市場の発達が遅れているドイツでは、1年以内の短期保有を除き、株式譲渡益については原則非課税としている。配当課税については、法人段階での課税との二重課税を回避する種々の方策を採用している国が多い」という。日本では、これらの方式を参考に、投資額の範囲を決めておくことで、金持ち優遇とはならないように、することも可能なはずであるとも。
また、今後の日本の証券市場の税制について、次の3点を挙げている。1)上場株式などの配当ならびに譲渡所得にかかる現行税率10%を、少なくとも個人金融資産に占める株式の比率が30%に達するまでの間、恒久税制として定着させる。ちなみに、この「個人金融資産に占める株式の比率(2001年)」は、日本7%に対し、米国34%、フランス29%、イタリア22%である。
2)上場株式などの譲渡損失の繰越譲渡期間を現行の3年から7年程度に延長し、損益通算の対象を株式投信・未公開株投資などのリスク商品全般に拡大する。3)個人の株式への中長期投資を奨励する観点から、1年以上の長期保有譲渡益については、軽減税率を適用する。
こうすることによって、日本の習慣を「貯蓄から証券投資へ」のシフトにし、時代の要請にこたえ得るものになる、という。【了】
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ひと昔前のことなら、株式投資をするのは、金持ちだけという発想があったが、現在は必ずしもそうではない。普通のサラリーマンでも、ネット取引をする層が増えている。昼間は、仕事で取引ができない人のための、夜間取引市場まで始まった。それなのに、これでは時代の趨勢に逆行しているのではないか、と疑問を持たざるを得ない。
そこで、これらを早くから問題視し「この株式譲渡益と配当の税率アップは、もう一つの重要な2007年問題である。慎重に対応し、個人投資家の意欲をそいではならない」と主張する日本個人投資家協会理事・岡部陽二氏に話を伺ってみた。
岡部氏は、かつて大手銀行役員、証券会社の会長を歴任し、国際的に活躍した後、広島国際大学教授として医療福祉の分野でも活躍している。著書も多く、百戦錬磨の金融の専門家として著名である。現在、(財)医療経済研究機構・専務理事でもあるが、とかく目先の動きに気をとられがちな個人投資家にむけて「岡部陽二のブログ」も開設。社会的な見地からのアドバイスをしている。
“2007年問題”といえば、団塊の世代が定年退職し、熟練した労働力の不足として社会に影響を与える大問題とされている。だが、影響はその問題だけでなく、退職後の彼等にとって、株式投資の譲渡益と配当の税率アップは、年代的にも社会的不公平さを生むという。
働いて所得税を納めて、株式運用すればまた税金というのは納得がいかない
岡部氏は、「定年退職後の団塊の世代は、年金だけでは足りない生活費を補うために、これまでの貯蓄を取り崩して使うだけではなく、効率的に運用して運用益を挙げようとする投資意欲の高い世代である。彼らがすでに所得税を納めた貯蓄資金を、株式に運用して得た運用益に課せられる税金が、退職した年から2倍になるというのは、納得のいかない制度改悪であろう」と主張する。
団塊世代には実に心強い、もっともな理屈であるが、「なぜか政治家からも声が上がらず、証券業界の反対も声が小さい。もっと議論すべきである」と、岡部氏は、関係者の腰の引けた姿勢に苦言を呈する。
もっとも、政治家たちがこの動きに、消極的なのには、理由がないこともない。株式投資をするのは、一部の金持ち層である、という世間一般のイメージから、政治家として、軽減税率の廃止に表立って文句を言いたくない、という心理があるようだ。しかし、これもまた、問題ではある。団塊の世代の生活実態を理解せず、彼らの要望を無視することは、政治家としての手腕を問われることにもなりかねない。また、政策について、きちんとした説明をしないで、シンプルで安直なイメージに頼るだけの政治では、有権者を見くびっていると思われても仕方がない。
金持ちを優遇しない株式軽減税制も可能である
岡部氏は、証券税制は、各国の事情によって異なるが、と前置きして次の事情を教えてくれた。「米国・英国では譲渡益課税・配当課税とも原則総合課税であるが、株式を長期保有した場合の譲渡益課税については、両国ともに軽減措置がとられている。ことに、英国では個人貯蓄口座制度が定着。18歳以上の個人が投資した株式や株式投信のキャピタル・ゲインは一定限度まで非課税とされている。わが国同様、資本市場の発達が遅れているドイツでは、1年以内の短期保有を除き、株式譲渡益については原則非課税としている。配当課税については、法人段階での課税との二重課税を回避する種々の方策を採用している国が多い」という。日本では、これらの方式を参考に、投資額の範囲を決めておくことで、金持ち優遇とはならないように、することも可能なはずであるとも。
また、今後の日本の証券市場の税制について、次の3点を挙げている。1)上場株式などの配当ならびに譲渡所得にかかる現行税率10%を、少なくとも個人金融資産に占める株式の比率が30%に達するまでの間、恒久税制として定着させる。ちなみに、この「個人金融資産に占める株式の比率(2001年)」は、日本7%に対し、米国34%、フランス29%、イタリア22%である。
2)上場株式などの譲渡損失の繰越譲渡期間を現行の3年から7年程度に延長し、損益通算の対象を株式投信・未公開株投資などのリスク商品全般に拡大する。3)個人の株式への中長期投資を奨励する観点から、1年以上の長期保有譲渡益については、軽減税率を適用する。
こうすることによって、日本の習慣を「貯蓄から証券投資へ」のシフトにし、時代の要請にこたえ得るものになる、という。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 伊藤 昭一
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