デスク余話『ライブドア裁判』
2006年11月18日09時41分 / 提供:ライブドア・ニュース
堀江被告(資料写真:吉川忠行)
六本木編集週報No.25
【ライブドア・ニュース 2006年11月18日】− 当事者ということもあるので、わが社の元社長・堀江貴文被告(34)の証券取引法違反事件、いわゆるライブドア裁判のことを少し書いておきたいと思う。今週も14日(火)ときのうの17日(金)の2回、2回目と3回目の被告人質問が行われた。やはり本人質問ということでメディアの関心も高くなり、久しぶりに東京地裁前の傍聴券受け付けも活気づいたという感じだ。堀江被告については、弁護士から「余り調子づかないように」とクギを刺されているらしいが、検察に対する反発はやはり強烈で、きのうの検察側質問では「揚げ足を取られるのが嫌なんだ」などと相当に毒づいたらしい(今日の新聞等でも報じられたとおり)。
思えば、私も事件記者が出発ということがあって、支局時代は殺人や詐欺事件など通常の刑事裁判の取材は何回も経験したことがある。しかし、しょせん地方レベルの話。東京で大型経済事件の取材や裁判記事に関わることは、まるで想像していなかった。
これまでの知識では、よほど計画性、悪質性がなければ、経済事件の判決には「必ず執行猶予が付くものだ」という程度の認識だったが、どうもこのLD事件についてはそんな様相ではないようだ。コトの社会的影響(失われた株の時価総額は6000億円ともいわれる)は大変なものだったとは言いながら、自社株売却益の計上による粉飾決算、風聞の流布といった今回の容疑は、本当に犯罪性をすぐに証明できるようなものだったのかどうか。
私は経済問題には本当に疎いのだが、身内や関係者をかばうとの意味では決してなく、やはり検察は相当に「無理をしているな」と思うのが正直なところだ。鈴木宗男氏とともに捕まった、外務省の佐藤優氏の著作『国家の罠』(新潮社)を読んだときにも感じたのは、いま日本の検察は明らかに変質しつつあるということ。“国策捜査”という言葉を検察官自身が認める場面がこの本に描かれているが、今回のLD事件についてもそうした臭(にお)いが付きまとう感は否めない。もっと言えば、巨悪=政治家による汚職の摘発には慎重になりすぎている検察が、社会の関心をそらすかのようにこうした経済事件に向かうのは、いささかの失望感を抱かせる現実なのである。
インターネットのブログ上でも、今回のLD事件に関して検察を批判する書き込みが圧倒的に目立っていると思う。一方にあるマスコミによる検察ベッタリの記事展開にも、“マスコミ不信”を思わせる苛烈(かれつ)な批判論調が多いことは私の想像を超えたものだった。自らも襟を正さないといけないところだが、わがLDニュースに関してはでき得る限りの客観報道を心がけてきたつもりだ。被告人質問に関しても、詳細な一問一答を記事化しており、これは同業者からも評価を受けていると聞く。この調子で進めていきたい。
結局のところ、宮内証言、中村証言などで業務上横領の話などが出てきて、今のところは弁護側のシナリオがほぼ効果的に演出できているということだろう。もちろん、このことだけで堀江被告を無罪、あるいは微罪とする展開にはならないだろうが、少なくとも検察の強引さを浮かび上がらせてはいる。最終的に堀江被告に有利に進んでいくとも、個人的には思っていない。しかし、経済犯罪への捜査手法のあり方、今後の犯罪報道のあり様には一種の試金石となりそうだ。
裁判の行方はまだ分からないので、今の時点での評価は難しい。ただ、裁判でいくら堀江被告が無罪ないし微罪になったとしても、株主に対する重大な背徳行為があったとの事実が消えるわけではない。また、上場企業の社長が「私は何も知りませんでした」で済まされるわけではないことも自明だ。ある経済評論家は、この裁判の展開の怪しさに言及しながら「裁判と堀江被告の事業者責任問題は別」とブログに書いておられたが、全くそのとおりなのだと思う。【了】
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