青年よ!『夢追い人』のフリーターになれ(上)
2006年11月17日05時21分 / 提供:PJ
20−30歳代の青年が、臨時雇用の身で働くものをフリーターと呼ぶ。マスコミに登場する教育者、TVコメンテーター、新聞の論説者のなかには、『職業選択の決定を先送りし、せっかく就職しても早期に離脱し、正業に就かない若者だ』と、社会の脱落者呼ばわりするものもいる。そのうえ、現在はその気になれば、正社員で働ける口がいっぱいあるのに、根の張らないバイトに甘んじている、それは職業観の低さだと、さげすんだ見方をする。
東京都内の某中学校が作成した『職場体験記』の小冊子を入手した。それは中学2年生の80余人がそれぞれ『職場体験新聞』を作り、全員分を取りまとめたものだ。巻頭には校長の『職場体験実習を終えて』という表題で記されている。ニートやフリーターの増加は現代社会の課題の一つだとし、職場の早期離脱を嘆いている。そのうえで、中学生に望ましい勤労観や職業観を身につけさせるのが、職場体験の狙いだと記されている。
校長の発想は正社員を至上主義とするものだ。高校や大学を卒業し、正社員として企業に就職するのが正道、とみなす。終身雇用時代の崩壊が進むなかにあっても、なおかつ『寄らば大樹の陰』の発想を十代の生徒たちに教える。はたして一つ会社にしがみつく人材が将来の日本を支えるのだろうか、という疑問が拭えない。
過去にさかのぼれば、封建時代だった江戸幕府の下で、大名に仕える藩士たち、その身分を尊ぶ発想と似ている。地位や職に対して流動性を失ってことが、徳川幕府全体の疲弊につながった。それが倒幕の要因になってしまったのだから。フリーターが世に向けてみずからの言葉で、生き方や価値観などを正確に発信する機会が少ない。フリーターの実態が解っているようで、分かっていない。
実際はどうなのか。東京・豊島区に在住するフリーター3人に集まってもらい現状とか、目標とか、不満や提案とかを存分に語ってもらった。そこには夢や希望を持ち、力強く邁進していく、かれらのスパイラル・アップの姿があった。
「フリーターには仕事の責任感がない、何事もちゃらんぽらん、ふだんは遊んでばかり。目標がないとみられています。皆がみんな、そうではない」と福島正則さん(21)は話す。福島さんは私大の国際開発学科に一年通ったあと、2年目で退学し、フリーターになった。「大学に入学するまえは、海外の勉強ができると期待していました。しかし、授業に失望し、これならば大学にいかなくても勉強できると思ったんです」。他方で、音楽(楽器演奏)がやりたかったので、退学した。同時に、スーパーマーケットの荷受けのバイトをはじめた。
「大学を飛び出した後、正直なところ将来への悩みがつきまといました。悩んだ末に、親の鍼灸業のあとを継ぐことに決めました。来年からは鍼灸の専門学校に行きます」と、目標の変更があったと教えてくれた。いまは専門学校の入学金と授業料を貯めている。仕事内容は早朝6時半から始まる7時間の荷受け作業。無断欠勤とか、早退とかは一度もないという。責任感に満ちた働きぶりのようだ。
日向(ひゅうが)邦弘さん(20)は高校卒業後、音楽の専門学校に行きたかった。しかし、経済的な理由があった。他方で、独学でも音楽は学べると判断して働くことに決めた。大手ピザ屋に入った。「社会に出た第一歩から、バイトでも仕事の厳しさを感じました。理不尽なことで怒られ、遅刻寸前に社に飛び込めば、ペナルティーが科せられる。
ポスティング(1000枚のチラシを一軒ずつ入れさせられる。4時間かかる)。先輩のミスまでも押し付けられるんです」。それでも歯を食いしばり耐えてきた。いまでは支店のマネージャー補佐役まできたのだ。そこにはバイトと正社員の勤労観の違いなどみじんもなかった。「わたしはどこまでも音楽を貫き通します。そのために必要なお金を稼いでいます」と日向さんは力強く語ってくれた。
音楽を目指す点では、福嶋杏美(あずみ)さん(21)も同様だ。定時制高校に入学したが、4日間で学校に行かなくなった。高校生なのに、いきなり四桁の足し算とか、アルファベットとかを書かされた。それにはやるせなさを感じた。まわりの生徒たちと友だちになれそうにもなかった。「学校に通わないなら、止めなさい、と親から言われた」。現在はパチンコ屋に勤務する。
職場環境となると、『うるさい、臭い(タバコ)、客層が悪い』と三つを上げる。それでも、ローカルなパチンコ屋だから、楽だという。同業に勤める仲良しの友達のところは『挨拶がうるさく、長い時間働かされる、休憩がない』、それに比べたら、自分は恵まれているほうだという。
福嶋さんの音楽活動は5人でグループを組む。彼女はボーカルだ。「25歳までに、私にはプロデビューしたい」と福嶋さんは語る。スタジオ代、活動費、以前に買った楽器のローン代の支払い。どこまでも自分の夢を達成するために働いている。パチンコ屋は時給が高いのが魅力だと、彼女は語った。この熱意と気迫は、寄らば大樹の陰の正社員からは、なかなか生まれないだろう。【了】
■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド
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東京都内の某中学校が作成した『職場体験記』の小冊子を入手した。それは中学2年生の80余人がそれぞれ『職場体験新聞』を作り、全員分を取りまとめたものだ。巻頭には校長の『職場体験実習を終えて』という表題で記されている。ニートやフリーターの増加は現代社会の課題の一つだとし、職場の早期離脱を嘆いている。そのうえで、中学生に望ましい勤労観や職業観を身につけさせるのが、職場体験の狙いだと記されている。
校長の発想は正社員を至上主義とするものだ。高校や大学を卒業し、正社員として企業に就職するのが正道、とみなす。終身雇用時代の崩壊が進むなかにあっても、なおかつ『寄らば大樹の陰』の発想を十代の生徒たちに教える。はたして一つ会社にしがみつく人材が将来の日本を支えるのだろうか、という疑問が拭えない。
過去にさかのぼれば、封建時代だった江戸幕府の下で、大名に仕える藩士たち、その身分を尊ぶ発想と似ている。地位や職に対して流動性を失ってことが、徳川幕府全体の疲弊につながった。それが倒幕の要因になってしまったのだから。フリーターが世に向けてみずからの言葉で、生き方や価値観などを正確に発信する機会が少ない。フリーターの実態が解っているようで、分かっていない。
実際はどうなのか。東京・豊島区に在住するフリーター3人に集まってもらい現状とか、目標とか、不満や提案とかを存分に語ってもらった。そこには夢や希望を持ち、力強く邁進していく、かれらのスパイラル・アップの姿があった。
「フリーターには仕事の責任感がない、何事もちゃらんぽらん、ふだんは遊んでばかり。目標がないとみられています。皆がみんな、そうではない」と福島正則さん(21)は話す。福島さんは私大の国際開発学科に一年通ったあと、2年目で退学し、フリーターになった。「大学に入学するまえは、海外の勉強ができると期待していました。しかし、授業に失望し、これならば大学にいかなくても勉強できると思ったんです」。他方で、音楽(楽器演奏)がやりたかったので、退学した。同時に、スーパーマーケットの荷受けのバイトをはじめた。
「大学を飛び出した後、正直なところ将来への悩みがつきまといました。悩んだ末に、親の鍼灸業のあとを継ぐことに決めました。来年からは鍼灸の専門学校に行きます」と、目標の変更があったと教えてくれた。いまは専門学校の入学金と授業料を貯めている。仕事内容は早朝6時半から始まる7時間の荷受け作業。無断欠勤とか、早退とかは一度もないという。責任感に満ちた働きぶりのようだ。
日向(ひゅうが)邦弘さん(20)は高校卒業後、音楽の専門学校に行きたかった。しかし、経済的な理由があった。他方で、独学でも音楽は学べると判断して働くことに決めた。大手ピザ屋に入った。「社会に出た第一歩から、バイトでも仕事の厳しさを感じました。理不尽なことで怒られ、遅刻寸前に社に飛び込めば、ペナルティーが科せられる。
ポスティング(1000枚のチラシを一軒ずつ入れさせられる。4時間かかる)。先輩のミスまでも押し付けられるんです」。それでも歯を食いしばり耐えてきた。いまでは支店のマネージャー補佐役まできたのだ。そこにはバイトと正社員の勤労観の違いなどみじんもなかった。「わたしはどこまでも音楽を貫き通します。そのために必要なお金を稼いでいます」と日向さんは力強く語ってくれた。
音楽を目指す点では、福嶋杏美(あずみ)さん(21)も同様だ。定時制高校に入学したが、4日間で学校に行かなくなった。高校生なのに、いきなり四桁の足し算とか、アルファベットとかを書かされた。それにはやるせなさを感じた。まわりの生徒たちと友だちになれそうにもなかった。「学校に通わないなら、止めなさい、と親から言われた」。現在はパチンコ屋に勤務する。
職場環境となると、『うるさい、臭い(タバコ)、客層が悪い』と三つを上げる。それでも、ローカルなパチンコ屋だから、楽だという。同業に勤める仲良しの友達のところは『挨拶がうるさく、長い時間働かされる、休憩がない』、それに比べたら、自分は恵まれているほうだという。
福嶋さんの音楽活動は5人でグループを組む。彼女はボーカルだ。「25歳までに、私にはプロデビューしたい」と福嶋さんは語る。スタジオ代、活動費、以前に買った楽器のローン代の支払い。どこまでも自分の夢を達成するために働いている。パチンコ屋は時給が高いのが魅力だと、彼女は語った。この熱意と気迫は、寄らば大樹の陰の正社員からは、なかなか生まれないだろう。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一
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