「部落地名総鑑」の2ちゃんねる流出は実在したのか
2006年10月31日10時04分 / 提供:PJ
27日のPJオピニオン「ネット社会における『部落地名総鑑』の卑劣さ 」では、2ちゃんねるに「部落地名総鑑」が掲載され、削除されたとの毎日新聞の記事を引用したが、騒動の経過を調べているうちに、掲載・削除が本当にあったのか疑問が湧いてきた。この記事では、今回の騒動を検証したい。
同記事中の「部落地名総鑑が2ちゃんねるに掲載された」との記述は2通りに解釈できる。一つは「2ちゃんねるのスレッド(記事)に部落地名総鑑の内容が書き込まれた」、もう一つは「2ちゃんねるのスレッドに部落地名総鑑へのリンクが張られた」である。
2ちゃんねるにおけるスレッド削除の手順は、1)削除依頼の専用掲示板に削除依頼が書き込まれる、2)「削除人」と呼ばれる運営ボランティアがその内容を確認する、3)「削除人」が当該記事を削除する、となっている。ボランティアによる削除の基準は、削除ガイドラインに明確に示されている。部落地名が掲載された場合、削除理由の「差別・蔑視の意図がある地域名または苗字等の書き込みは、その真偽を問わず削除対象になります」に該当する。これは、他の削除理由よりも優先度が高い削除理由の一つとされている。
しかし、三重県内の公務員が掲載を発見したとされる21日から、「すでに削除されていた」と報道される26日までの削除依頼掲示板には、該当する削除依頼は書き込まれておらず、少なくとも一般的な手順で削除された事実はない。2ちゃんねるではメールや電話での削除依頼は受け付けていないため、削除依頼掲示板への書き込み以外で削除されるとすれば、裁判所の決定・仮処分による削除だけである。今回、裁判所が削除を命令した事実もない。
一方、現在の2ちゃんねるのシステムでは、2ちゃんねるのサーバーにファイルをアップロード・ダウンロードすることはできない。従って、画像ファイルや文書ファイルその他を流通させるためには、2ちゃんねる以外のサーバーにそのファイルをアップロードし、そのリンクをスレッドに掲載して、ダウンロードを可能にする必要がある。この場合、ファイルを削除できるのは、ファイルがアップロードされているサーバーの管理者で、2ちゃんねるはそのファイルの内容や削除について一切の責任はない。リンク先がファイルではなく、サイトの場合でも同様である。2ちゃんねるの利用者が多いため、社会的影響を考慮してリンクの削除を依頼することも考えられるが、今回の騒ぎでそのような削除依頼は出されていない。
削除依頼掲示板を調べる限り、以上の理由から、今回、2ちゃんねるでの「部落地名総鑑」の流出はなかったと考えられる。では、なぜこのようなことが起こったのか。
この問題に関して、2ちゃんねるに書き込みがある。その内容を見てみると、今回の騒ぎは20日のある書き込みが発端かもしれない。これは、「ふしあなトラップ」と呼ばれるいたずらで、掲示板の名前の欄に「fusianasan」と入力することで、入力者のコンピューターの情報(IPアドレスやドメイン名など)が掲示板に表示される機能を利用したものである。「無修正画像が見られる裏2ちゃんねるにアクセスする方法」などとして入力を促してドメインを表示させるいたずらが、一時期頻繁に行われていた。今回の「ふしあなトラップ」は、「被差別地域がどこにあるのかを記載したホームページへのアクセス方法」とする内容であった。
この「ふしあなトラップ」にかかってしまったユーザーが数人いた。表示されたドメイン名の解析によって、その中の一人は21日に三重県人権センターのパソコンからアクセスしたことがわかっている。つまり、人権に関する情報を収集していた三重県人権センターの職員が、「ふしあなトラップ」に気づかずに、被差別部落の地名が記載されているとされるホームページにアクセスしようとして「fusianasan」と入力したものの、存在しないホームページへのアクセスは不可能だったため、そのホームページが削除されたと考え、「ネットに流出したが既に削除された」と関係機関に連絡した、というのが真相ではないだろうか。
「部落地名総鑑」はこれまで紙媒体で複数が発見されているが、部落解放同盟大阪府連が先月30日、電子媒体を初めて回収したことを発表した。「ふしあなトラップ」はこのような状況で行われたいたずらで悪質だが、実際には2ちゃんねるでの流出はなかったにも拘わらず、関係機関がぴりぴりした中で騒ぎが大きくなったのではないか。
なお、今回の件に関して、「『部落地名総鑑』と題して37都道府県ごとに約430の地名リストを列挙。住所とともに『○○駅前』『○○大学隣』といった場所の目印や、『刑場跡』『朝鮮人』などの記述もあった。」と産経新聞が報道しているが、これは、部落解放同盟が初めて回収した電子媒体に関する別のニュースからの憶測記事である可能性が高い。
ネット社会における「部落地名総鑑」の存在は、今回の騒ぎとは無関係に卑劣であると思う。しかし、事実に基づかない報道で、「2ちゃんねる」や「被差別部落問題」が実態から離れて一人歩きすることも避けなければならない。【了】
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同記事中の「部落地名総鑑が2ちゃんねるに掲載された」との記述は2通りに解釈できる。一つは「2ちゃんねるのスレッド(記事)に部落地名総鑑の内容が書き込まれた」、もう一つは「2ちゃんねるのスレッドに部落地名総鑑へのリンクが張られた」である。
2ちゃんねるにおけるスレッド削除の手順は、1)削除依頼の専用掲示板に削除依頼が書き込まれる、2)「削除人」と呼ばれる運営ボランティアがその内容を確認する、3)「削除人」が当該記事を削除する、となっている。ボランティアによる削除の基準は、削除ガイドラインに明確に示されている。部落地名が掲載された場合、削除理由の「差別・蔑視の意図がある地域名または苗字等の書き込みは、その真偽を問わず削除対象になります」に該当する。これは、他の削除理由よりも優先度が高い削除理由の一つとされている。
しかし、三重県内の公務員が掲載を発見したとされる21日から、「すでに削除されていた」と報道される26日までの削除依頼掲示板には、該当する削除依頼は書き込まれておらず、少なくとも一般的な手順で削除された事実はない。2ちゃんねるではメールや電話での削除依頼は受け付けていないため、削除依頼掲示板への書き込み以外で削除されるとすれば、裁判所の決定・仮処分による削除だけである。今回、裁判所が削除を命令した事実もない。
一方、現在の2ちゃんねるのシステムでは、2ちゃんねるのサーバーにファイルをアップロード・ダウンロードすることはできない。従って、画像ファイルや文書ファイルその他を流通させるためには、2ちゃんねる以外のサーバーにそのファイルをアップロードし、そのリンクをスレッドに掲載して、ダウンロードを可能にする必要がある。この場合、ファイルを削除できるのは、ファイルがアップロードされているサーバーの管理者で、2ちゃんねるはそのファイルの内容や削除について一切の責任はない。リンク先がファイルではなく、サイトの場合でも同様である。2ちゃんねるの利用者が多いため、社会的影響を考慮してリンクの削除を依頼することも考えられるが、今回の騒ぎでそのような削除依頼は出されていない。
削除依頼掲示板を調べる限り、以上の理由から、今回、2ちゃんねるでの「部落地名総鑑」の流出はなかったと考えられる。では、なぜこのようなことが起こったのか。
この問題に関して、2ちゃんねるに書き込みがある。その内容を見てみると、今回の騒ぎは20日のある書き込みが発端かもしれない。これは、「ふしあなトラップ」と呼ばれるいたずらで、掲示板の名前の欄に「fusianasan」と入力することで、入力者のコンピューターの情報(IPアドレスやドメイン名など)が掲示板に表示される機能を利用したものである。「無修正画像が見られる裏2ちゃんねるにアクセスする方法」などとして入力を促してドメインを表示させるいたずらが、一時期頻繁に行われていた。今回の「ふしあなトラップ」は、「被差別地域がどこにあるのかを記載したホームページへのアクセス方法」とする内容であった。
この「ふしあなトラップ」にかかってしまったユーザーが数人いた。表示されたドメイン名の解析によって、その中の一人は21日に三重県人権センターのパソコンからアクセスしたことがわかっている。つまり、人権に関する情報を収集していた三重県人権センターの職員が、「ふしあなトラップ」に気づかずに、被差別部落の地名が記載されているとされるホームページにアクセスしようとして「fusianasan」と入力したものの、存在しないホームページへのアクセスは不可能だったため、そのホームページが削除されたと考え、「ネットに流出したが既に削除された」と関係機関に連絡した、というのが真相ではないだろうか。
「部落地名総鑑」はこれまで紙媒体で複数が発見されているが、部落解放同盟大阪府連が先月30日、電子媒体を初めて回収したことを発表した。「ふしあなトラップ」はこのような状況で行われたいたずらで悪質だが、実際には2ちゃんねるでの流出はなかったにも拘わらず、関係機関がぴりぴりした中で騒ぎが大きくなったのではないか。
なお、今回の件に関して、「『部落地名総鑑』と題して37都道府県ごとに約430の地名リストを列挙。住所とともに『○○駅前』『○○大学隣』といった場所の目印や、『刑場跡』『朝鮮人』などの記述もあった。」と産経新聞が報道しているが、これは、部落解放同盟が初めて回収した電子媒体に関する別のニュースからの憶測記事である可能性が高い。
ネット社会における「部落地名総鑑」の存在は、今回の騒ぎとは無関係に卑劣であると思う。しかし、事実に基づかない報道で、「2ちゃんねる」や「被差別部落問題」が実態から離れて一人歩きすることも避けなければならない。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小林 亮一
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