郵政トップの確執 民営化「空中分解」の恐れ
2006年10月29日15時16分 / 提供:J-CASTニュース
2007年10月の実施まであと1年足らずに迫った郵政民営化の先行きが危ぶまれている。民営化を「構造改革の本丸」とした小泉前政権とは対照的に、安倍政権は05年秋の総選挙で民営化に反対して自民党を離党した造反組議員の自民復党に動くなど、民営化推進に逆行する動きを見せているほか、現場は全国特定郵便局長会(全特)の抵抗で郵便局改革プランが事実上暗礁に乗り上げるなど迷走しているからだ。日本郵政公社の生田正治総裁と、民営化後の4事業会社を束ねる日本郵政の西川善文社長の両トップの経営をめぐる不協和音も指摘されるなど"空中分解"の恐れさえ指摘される始末だ。
郵政民営化は現在、日本郵政公社が行っている郵政事業を07年10月から持ち株会社日本郵政の下に、(1)手紙・ハガキや小包を扱う郵便事業会社(2)全国2万4,700の郵便局網を運営する郵便局(ネットワーク)会社(3)郵便貯金を継承する「ゆうちょ銀行」(4)簡易保険事業を引き継ぐ「かんぽ生命保険」――の4つの民営会社に再編・分割するもの。
政府・自民党に消極的空気が急拡大
このうち、ゆうちょ銀とかんぽ生命は民営化4年後に株式上場し、その後5年間で日本郵政が保有するこの金融2社の市場で株式を売却して、国の経営関与を無くす完全民営化を実現することになっている。また、郵便、郵便局の2社に関しても国の経営関与は残すものの、民間企業並みの会計制度の導入や収益面での独立採算の徹底で抜本的な経営合理化を図ることシナリオだ。
「民営化郵政の経営が立ち行かなくなれば、多額の税金投入で尻拭いをしなければならない」(政府筋)だけに、民営化まで1年を切った今、「本来なら政府・与党や公社、日本郵政や全特、労組など関係者は一致団結しマナジリを決して改革の仕上げに取り組まなければならない局面のはず」(公社幹部)。しかし、安倍政権に代わった途端に、政府・自民党は「民営化は小泉前政権の遺物。下手にコミットすれば来夏の参院選に悪影響を及ぼしかねない」(関係筋)と民営化推進に消極的空気が急拡大している。逆に「郵政造反組の復党を年内に実現するべきだ」(片山虎之助自民党参院幹事長)といった改革逆行の動きも強まっている。
政治の改革熱の失速は民営化の現場にも大きな影響を与えている。特に全国1万9,000の特定局長で組織する「全特」は、自分たちの既得権の復権に向けて改革の骨抜きを狙う姿勢を鮮明にし始めている。特定局長に対する「世襲制排除」「転勤あり」「60歳への定年引き下げ」「郵便局舎私有の撤廃」などの郵便局改革マスタープランの実現が事実上頓挫しているのは象徴的だ。このままでは、民営化後の郵便局会社では、旧郵政官僚も含めた一般職員と、特定局長との間で労働条件に大きな格差がある、異常な”二重基準”が温存されそうな雲行きだ。
郵政トップの西川社長の経営手腕に疑問
さらに深刻なのが、民営化郵政のガバナンス(企業統治)の欠如だ。日本郵政トップの西川社長が求心力を持ち、官業体質が残る約26万人の職員の意識改革も含めて民営化を引っ張ることが期待されるが、関係者からは未だに「西川社長は金融2社の株式処分にしか関心も知見もない」などと経営手腕を疑問視する見方が渦巻いている。一方で、03年4月の公社化以降、郵便事業のテコ入れやコンプライアンスの強化などに辣腕を振るってきた生田総裁は民営化と同時に表舞台を去る。
「本当は生田氏には民営化後も日本郵政の顧問などとして残ってもらい、西川さんを支えてほしい」(日本郵政関係者)との声がある。しかし、民営化で分社化される4事業会社のトップ選びなどをめぐり、西川氏が竹中平蔵民営化担当相(当時)の威光を盾に生田総裁の意見を受け付けなかったことなどが災いして、両氏の確執も指摘される。政治も経営もリーダシップへの大きな疑問符が付く中、郵政民営化に向けた時計の針だけは刻一刻と進んでいる。
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