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デスク余話『福田和也氏抄』

2006年10月28日10時30分 / 提供:ライブドア・ニュース

六本木編集週報No.22

【ライブドア・ニュース 2006年10月28日】− 週中は大手メーカー各社の中間決算のニュースがポツポツ。あの日産がゴーン社長就任後初の営業減益を出したり、ソニーもパソコン用リチウムイオン電池の不具合から営業利益を91%も減らすなど、話題に事欠かない。

 ところで、少し前に文庫本の隆盛とイイ本がけっこう出されていることに触れた。つい先日も、『悪の読書術』(福田和也、講談社現代新書)という面白い文庫本を読み終えたばかり。人気作家である林真理子、高村薫、宮部みゆき、それに村上春樹や藤沢周平といった人の作品(対象になったベストセラー作家は14人)とその楽しみ方に触れた後、読書の意味とその価値に関して論考した、この作者らしいお手軽本だ。

 途中、私も好きな塩野七生さんを讃美(さんび)したくだりとか、「江國香織は天才である」とする解説などに大いに啓発される。「批評家はいるが書評家はいないのが日本である」とする、これまたこの人らしい分析も含めて全体に勉強させられることしきりだった。

 それにしても、この慶応の先生であり文芸評論家との肩書を持つ氏の、該博な知識というのはすさまじいものがある。古今東西の書籍を渉猟しているだけでなく、音楽や映画、食べ物にも大変詳しい(『とんかつは裏切らない』などという論文まである)。

 何より驚くのは、サブカルチャーにやたら詳しいこと。漫画本は言うに及ばず、最近の若者の風俗、特にオタクと呼ばれている人々の生態にやたらと精通している(昭和35年生まれの氏も、外見だけからするとオタクの雰囲気が漂うが…)ことは一驚だ。それはともかく、今回読んだ本にも、高野文子や大島弓子、山岸凉子、吉田秋生、ねこぢるといった人の名前(何の作品だかは分かりますよね?)が、何のてらいもなく自然に記されていることにももうビックリするしかない。底知れない知識。オタクの文化に詳しいのも、個人的な付き合いのほか、関連書籍を多数読んでいるからだと想像するだけである。

 私が、この方の作品に初めて触れたのは『遥かなる日本ルネサンス』(文藝春秋)という本だった。確か15、6年前本屋で本当に偶然に手に取ったもの。しかし、この日本の近代文学と作家を論証した、気鋭の学者の本を一読して大変に驚いた。「この人はタダ者ではない」と思ったものだ。まだ確か、慶応の講師のときの本だと思う。

 その後も『ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法』(PHP文庫)などを読んで、その膨大な読書量と旺盛(おうせい)な執筆欲に驚嘆させられるばかりだった。世の中にはこんな人もいるのですな。氏の学問的業績は分からないのだが、賞もいくつか取っているし(三島由紀夫賞、平林たい子文学賞など)、それなりの評価を受けている人物なのだと思う(ひどく嫌う人もいるという)。

 今回、この稿を書くにあたってネットでいくつかの関連サイトを検索してみた。ただそこで、氏の個人的人間性を激しく非難しているブログに行き当たったりして、別の意味でもエラク面白かった。稀代(きだい)の読書家、文筆家、知識人としての氏を尊敬する気持ちに変わりはないが、なるほど一筋縄ではいきそうにない人格のようではありますな。【了】 ライブドア・ニュース 満富俊吉郎

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