【書評】検証「国策逮捕」ー東京新聞特別取材班ー
2006年10月18日07時26分 / 提供:PJオピニオン
9月25日発行のライブドア関連本、「検証国策逮捕ー東京新聞特別取材班ー」は面白かった。1月の強制捜査以降のライブドア・村上ファンド関連の動きを裁判も含め詳述している。また、堀江被告や村上被告らの生い立ちや宮内被告や中村被告ら事件に登場する人物との関係などディテールまで調べて書いており、ライブドア関係の本を始めて読む人には最適だろう。
本のタイトルになっている国策逮捕(捜査)を「政府の意図や世論・マスコミの動向に沿って行う逮捕(捜査)」と定義し、「政府が重要政策を遂行、転換したりする時に、捜査当局がそれに連動して行う捜査であることが多い」と説明する。
小泉政権末期に起こった事件のタイミングは「国策逮捕」をうかがわせるに充分だが、はっきりと「国策捜査」として検察を断罪していない。これは、明らかに検察側リークとわかる反ライブドア情報を、大量に報道した東京新聞も含めたマスコミの「罪の意識」の表れかもしれない。さらにファイナンシャル・タイムス紙を始めとした海外マスコミが、ライブドア擁護と思われる論調を掲載したことと無縁ではないことをうかがわせる記述もある。
こうした筆者達のジャーナリストとしての「罪の意識」は、終章「国策捜査か、否か」の中でもうかがえる。この章で、筆者達は、検察庁を管轄する法務省幹部のコメントを紹介する。「ライブドア捜査が恣意的と言うなら、特捜がやる捜査は全部恣意的だ。捜査対象を決める段階で、必ず特捜の意思が入る。それを国策捜査というなら、検察がやる捜査は全部国策捜査だよ」というわけだ。これはライブドア事件・村上ファンド事件が国策捜査であると認めるコメントになっている。
著者が「東京新聞特別取材班」というのも珍しい。いわば東京新聞社全体でライブドア関係の情報を総まとめし、堀江裁判の行われている時期にぶつけてみようとの心意気が感じられる。最後を締めくくる「検察の強大な権力は、常に国民の側になければならない」との言葉は青臭いが、こうした心意気を示すものだろう。
また、PJニュースの小田編集長が頻繁に登場し、堀江被告とのインタビューの様子やメールでのコミュニケーションが紹介されており、PJの一人としては素直に嬉しい。特に、家宅捜査後、小田氏が堀江氏に出したメール「最近、ライブドア社内に自由闊達な雰囲気がなくなりかけてきたのではないか?」に対する堀江氏の返信は興味深い。
「お疲れ様です。お心遣い、ありがとうございます。確かに新しい社員とは直接交流も少なく、親近感が薄れているかもしれません。ネットメディアやサービス、コマースあたりは大丈夫なんですが・・・。これからも何か気付いたことがありましたら、お知らせ下さい」
小田氏は、「これまでにもらったことのないようなメールだった」と振り返り、「堀江が力を入れたかったのは、メディア事業やネットを使った言われるいわゆる『本業』といわれる部分だったと思う。ところが実際には、ファイナンスが稼ぎ頭になって、・・・堀江自身、経営方針を見失っていた。ちょうどその時、特捜の強制捜査が重なった」と分析している。
現役記者によるライブドア関連書籍としては、「ヒルズ黙示録」(朝日新聞刊)があり、ライブドア関係書物としては丹念な取材と資料で定評があるようだ。著者の大鹿靖明氏は「ライブドアに物申す」の中で、「ヤツらは、実に悪かった」と近鉄球団買収騒動やニッポン放送買収騒動等、「ハイウェイスター」を気取った堀江氏らの姿を、「この国の歴史を少しは進める大いなる役割を果たしてきたといえる」と、「不良を愛でる優等生」の目で一定の評価をしている。
この他、「粉飾資本主義」(東洋経済刊)で大御所の奥村宏氏がエンロンと比較してライブドア批判を展開している。また、元公認会計士の田中慎一氏が「ライブドア監査人の告白」(ダイヤモンド社)を出版し、ライブドア監査人として帳簿の疑惑点を厳しく指摘したらライブドアの監査人をはずされた事情を告白しているなど、総じてライブドアや堀江被告を倫理的な側面から批判的に論評するものが多い。
11月には堀江被告の証人喚問が行われるという。一つの山だ。多くの新聞・雑誌・書籍の記述・論評のどれが正しいのかは裁判所が判断するわけだが、今後とも情報開示を充分に行い、願わくば誰にとってもわかり易い判決を望みたいものである。【了】
■関連情報
ライブドアブックス:東京新聞特別取材班著『検証「国策逮捕」―経済検察はなぜ、いかに堀江・村上を葬ったのか』光文社、2006年
PJニュース.net
本のタイトルになっている国策逮捕(捜査)を「政府の意図や世論・マスコミの動向に沿って行う逮捕(捜査)」と定義し、「政府が重要政策を遂行、転換したりする時に、捜査当局がそれに連動して行う捜査であることが多い」と説明する。
小泉政権末期に起こった事件のタイミングは「国策逮捕」をうかがわせるに充分だが、はっきりと「国策捜査」として検察を断罪していない。これは、明らかに検察側リークとわかる反ライブドア情報を、大量に報道した東京新聞も含めたマスコミの「罪の意識」の表れかもしれない。さらにファイナンシャル・タイムス紙を始めとした海外マスコミが、ライブドア擁護と思われる論調を掲載したことと無縁ではないことをうかがわせる記述もある。
こうした筆者達のジャーナリストとしての「罪の意識」は、終章「国策捜査か、否か」の中でもうかがえる。この章で、筆者達は、検察庁を管轄する法務省幹部のコメントを紹介する。「ライブドア捜査が恣意的と言うなら、特捜がやる捜査は全部恣意的だ。捜査対象を決める段階で、必ず特捜の意思が入る。それを国策捜査というなら、検察がやる捜査は全部国策捜査だよ」というわけだ。これはライブドア事件・村上ファンド事件が国策捜査であると認めるコメントになっている。
著者が「東京新聞特別取材班」というのも珍しい。いわば東京新聞社全体でライブドア関係の情報を総まとめし、堀江裁判の行われている時期にぶつけてみようとの心意気が感じられる。最後を締めくくる「検察の強大な権力は、常に国民の側になければならない」との言葉は青臭いが、こうした心意気を示すものだろう。
また、PJニュースの小田編集長が頻繁に登場し、堀江被告とのインタビューの様子やメールでのコミュニケーションが紹介されており、PJの一人としては素直に嬉しい。特に、家宅捜査後、小田氏が堀江氏に出したメール「最近、ライブドア社内に自由闊達な雰囲気がなくなりかけてきたのではないか?」に対する堀江氏の返信は興味深い。
「お疲れ様です。お心遣い、ありがとうございます。確かに新しい社員とは直接交流も少なく、親近感が薄れているかもしれません。ネットメディアやサービス、コマースあたりは大丈夫なんですが・・・。これからも何か気付いたことがありましたら、お知らせ下さい」
小田氏は、「これまでにもらったことのないようなメールだった」と振り返り、「堀江が力を入れたかったのは、メディア事業やネットを使った言われるいわゆる『本業』といわれる部分だったと思う。ところが実際には、ファイナンスが稼ぎ頭になって、・・・堀江自身、経営方針を見失っていた。ちょうどその時、特捜の強制捜査が重なった」と分析している。
現役記者によるライブドア関連書籍としては、「ヒルズ黙示録」(朝日新聞刊)があり、ライブドア関係書物としては丹念な取材と資料で定評があるようだ。著者の大鹿靖明氏は「ライブドアに物申す」の中で、「ヤツらは、実に悪かった」と近鉄球団買収騒動やニッポン放送買収騒動等、「ハイウェイスター」を気取った堀江氏らの姿を、「この国の歴史を少しは進める大いなる役割を果たしてきたといえる」と、「不良を愛でる優等生」の目で一定の評価をしている。
この他、「粉飾資本主義」(東洋経済刊)で大御所の奥村宏氏がエンロンと比較してライブドア批判を展開している。また、元公認会計士の田中慎一氏が「ライブドア監査人の告白」(ダイヤモンド社)を出版し、ライブドア監査人として帳簿の疑惑点を厳しく指摘したらライブドアの監査人をはずされた事情を告白しているなど、総じてライブドアや堀江被告を倫理的な側面から批判的に論評するものが多い。
11月には堀江被告の証人喚問が行われるという。一つの山だ。多くの新聞・雑誌・書籍の記述・論評のどれが正しいのかは裁判所が判断するわけだが、今後とも情報開示を充分に行い、願わくば誰にとってもわかり易い判決を望みたいものである。【了】
■関連情報
ライブドアブックス:東京新聞特別取材班著『検証「国策逮捕」―経済検察はなぜ、いかに堀江・村上を葬ったのか』光文社、2006年
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