国連大学エリザベス・ローズ・ホールで行われた国際シンポジウム「人身売買をなくすために」の会場(撮影:佐谷恭)

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人身売買の現状と対策を報告する国際シンポジウム「人身売買をなくすために」(アジア財団日本事務所主催)が5日、東京・渋谷の国連大学で開かれ、アジアや欧州で同問題に取り組むNGO幹部や弁護士などが各国の状況をそれぞれ説明した。

 報告では「日本では人身売買といえば子どもや女性の売春に関連するものだという間違った認識があるが、大人の男性が強制労働させられることもある」との指摘が行われた上で、売春に関する問題がその中でも深刻であるとした。日本からの代表者の1人である「人身売買禁止ネットワーク」(JNATIP)の吉田容子弁護士は、「経済格差があり、日本での職を求める人々がだまされ、利用されることが原因の根本にあるが、そうした人びとの“需要”があることも問題」と話し、日本が人身売買の最大の受け入れ国となっている現状を分析した。

 英国のNGO「アンタイ・スレーバリー・インターナショナル」のマイク・ケイさんは、人身売買の解決と予防のためには、法整備とNGO・政府の協働が必要と主張。これに対し、アジア財団カンボジア事務所のムウル・サムヌィンさんは「法律を効果的に適用することがまず重要だが、政府の腐敗もありなかなか機能しない」と同国の実状を報告した。

 一方、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)駐日事務所のナタリー・カーセンティ首席法務官は、こうした報告を受けて「人身売買の被害者は本国への強制送還などにより、差別やほかの危害を加えられたり、再び人身売買の被害に遭う危険性もある。生きる権利を持ち、奴隷のような状態から解放されるように支援すべき」と各国政府やNGOに要求した。【了】

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