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小学校での英語教育に反対する

【PJ 2006年10月03日】− 伊吹文明文部科学大臣が「美しい日本語を話したりできないのに、外国語を必修化とするのは賛成じゃない」と発言したのを受けて、小学校での英語教育必修化に反対の意見が相次いでいる。わたしも、小学校での英語教育必修化には反対である。

 小学校での英語教育必修化は、今年3月に中央教育審議会外国語専門部会が小学5年生からの必修化を提言したのを受けて、具体的に動き出した。すでに、公立小学校の93.6%以上が総合学習の時間などを利用して英語教育を始めているが、必修化は、学校間の英語教育の格差を埋める狙いもある。しかし、マスコミ各社の世論調査の結果を見ると、初等教育における英語必修化について賛否が相半ばしており、文部科学省や教育機関と国民との間には、温度差がある。

 2002年に、文部科学省の英語教育改革に関する懇談会がまとめた 「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」では、「日本人の多くが、英語力が十分でないために、外国人との交流において制限を受けたり、適切な評価が得られないといった事態も生じている」との現状分析がなされている。英語必修化の動きは、このような認識に沿ったものであろう。しかし、どれだけの日本人が、英語を使えないことの不利益を実感しているのか。英語必修化に半数が反対しているのは、英語が使えなくたって構わない、と考えている人が半数いる、ということではないのか。

 先日、あるニュース番組の特集で、英語を教える幼稚園が取り上げられていた。英語を勉強してどんなことがしたいですか?との問いに、外国の人に道を聞かれたら教えてあげたい、外国の人と友達になりたい、と答えている園児たち。外国人教師の示す絵を見て、すばらしい発音で「This is an apple.」「He is playing tennis.」と楽しそうに大きな声で叫ぶ。こんな「教育」の延長線上に、文部科学省が夢想する国際交流があるとは思えない。

 母国語であれ外国語であれ、言葉は表現のための道具である。表現したい、伝えたいなにものかがなければ、言葉など不要である。国際会議に出かけていくと、英語がうまく使えない日本人を見かけることがしばしばある。意見表明では英語の原稿を準備していくことができるため、流暢に話すことができるが、その後の質疑応答では、質問がわからず、言いたいことがうまく言えず、四苦八苦している日本人が大勢いる。

 では、その人たちは、外国人と意見交換できないかと言えば、そんなことはまったくない。休憩時間に、質問してくれた人と、英語の電子辞書を片手に、たどたどしくても立派に意見交換をしている。相手がその人の意見を聞きたいと思い、発表者が自分の考えを伝えたいと思えば、意見交換はできるのである。大事なのは、言葉ではなく、主張である。

 すべての小学生に英語を学ばせて、なにをさせようというのか。英語が話せることで、国際人として生きられるのなら、こんなに楽なことはない。全ての国民が英語を話せるようになることで、日本の国際化が進展すると信じている人がいるのだとすれば、それは大きな間違いである。英語を流暢に話しても中身が空っぽなままでは、何の価値もないことを認識すべきだと思う。小学校での英語必修化に反対している人たちは、そういう現実に気がついているだろう。

 余談だが、安部晋三総理大臣が、所信表明演説の中で「イノベーション」や「カントリーアイデンティティ」などの外来語を多用したことが話題になっている。しかし、これらは英語ではなく、日本人にしか通じない「日本語」である。正しくは、技術革新はtechnological innovation、国家像はnational identityである。外国語らしき適当な単語を散りばめれば、具体的な内容がない所信表明にも格好がつくと思ったのか。政府が目指す英語教育と、国際社会の一員と言いながら決して外には向いていない外交姿勢を象徴しているようで、肌寒い思いがした。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小林亮一【 宮城県 】
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