時のことば『首相補佐官』
2006年09月29日14時43分 / 提供:ライブドア・ニュース
官僚たちを自在に動かせるかがカギ
【ライブドア・ニュース 2006年09月29日】− 25日に正式就任した安倍晋三内閣総理大臣は、翌26日に新内閣を組閣した。噂されたような大きなサプライズはなし。まずは論功行賞を重視し、自分の息のかかった人物の範囲で“新味”を打ち出したということだろう。その力量に関しては、「未知数」としか言いようがない。ここでは各大臣への評価は措(お)くとして、安倍総理の強調する「官邸機能の強化」に関して考えてみたいと思う。その布石としてまず挙げられるのが、首相補佐官5人の任命ではないだろうか。新聞記事として何回も取り上げられているが、ここではその実力について論評を加えてみたい。
まず顔ぶれである。話題性と重みからして筆頭に上がるのは、拉致問題担当の中山恭子元内閣官房参与。拉致被害者5人の帰国後に「北朝鮮にいったん戻すべき」とする外務省の田中均アジア大洋州局長(当時)に、安倍首相ともども頑強に抵抗したのは有名な話だ。今なお家族会からの信頼は厚いが、当初、構想したような「拉致被害者担当相」となることは見送られた。外務省との摩擦を避けるためだろう。
広報を担当する世耕弘成氏(参院)も、話題性という意味ではかなりニュース価値のある人事かもしれない。同氏は元NTT報道担当課長の経歴があり、小泉内閣では広報戦略部隊の要として働いた。その力量は認めなければならないだろうが、力があるゆえにマスメディアが巧みに操られる危険もある。もうその兆候は現れていると考えるのは、筆者のうがち過ぎだろうか。
その他、国家安全保障担当として小池百合子前環境大臣(衆院)。英語やアラビア語ができるから、というふざけた見方もある。教育再生担当の山谷えり子氏(参院)は、安倍総理と教育問題に対する理念がごく近いことから任用となった。いわば側近の政治家といえる。それに、根本匠氏(衆院)。経済財政担当として、経済問題への政策立案、首相へのアドバイスが期待されている。筆者はこの人をよく知らないのだが、政策通でありその力量への評価は高いと聞く。
そもそも首相補佐官というのは、どういう存在なのだろうか。
法的には、1996年から内閣法に規定された内閣官房の官職の一つ。内閣の重要政策に関して首相に進言(アドバイス)し、またその命を受けて諸問題への意見を具申することを職務とする。当初、定員は3人だったが、01年の省庁再編のときに5人に増員された。
法律的にはそうなったものの、その誕生の過程は流動的だった。キッカケになったのは、細川政権のとき(93年8月)に、同首相が法的根拠のない首相の顧問として、田中秀征元経企庁長官を首相特別補佐に命じた人事。いわば、首相の私的な相談相手として出発したわけだが、その後、外務省北米第一課長だった岡本行夫氏(現外交評論家)が96年と03年の2回、経歴を買われて沖縄問題やイラク問題を担当する首相補佐官に選ばれたことが記憶に新しい。しかし、多くは内閣機能の前面に出るような存在ではなかったのがこれまでのところだ。
そして、今回の安倍人事である。安倍首相は内閣機能の強化と、ワシントン型のトップダウン政治を公言しているので、これから補佐官の地位はかなり向上することが予想される。しかし、そこが逆に問題にもなりうるわけで、国家安全保障担当の補佐官と外相・防衛庁長官、教育再生担当補佐官と文部科学相との関係はどうなるのだろう。さらに言えば、拉致問題に関しても中山恭子補佐官が情報のカヤの外に置かれる可能性だって、考えられないことではない。
ついでに言っておくと、今回の内閣人事の一つのサプライズは、事務方の内閣官房副長官の的場順三氏だろう。旧大蔵省の出身で内閣内政審議室長や国土庁事務次官を務めた。私も身近にいたことがあるが、確かに頭のいい人ではあると思う。しかし、70歳を超えた“旧人”が果たして、現役の官僚たちを制御できるだけの力を残しているのかどうか。
旧内務省系以外で初の抜擢になっただけに、余計にその行方が心配だ。これは、首相補佐官に対しても言えることだが、政府の一番の課題は案外、内閣官房と官僚たちのせめぎ合いではないかとも思えてくる。日本の官僚機構は強固。早くも不協和音が聞こえ始めている。【了】 ライブドア・ニュース 満富俊吉郎
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