今週のお役立ち情報
「報道は市民を勇気づけるもの」=市民メディア
【PJ 2006年09月19日】−
皆さん、市民メディア「人権と報道関西の会」をご存知だろうか。同会は、何かの事件報道で傷ついたり、報道されたことに対して、メディアに物申したいことがあるのに、メディアが取り合ってくれないなど、いわゆる「報道被害」に悩んでいる市民のために、一緒に考え、その市民の悩みを一緒に打開していきましょうという主旨で、1986年に発足した市民のための市民メディアだ。会の発起人、呼びかけ人は、弁護士、大学教授、メディアの記者などで構成されている。
世話人の一人Aさんは、関西の地方テレビ局で番組制作を担当しているが、同会で、報道被害に苦しむ人たちへの支援活動を続けておられる。そこで活動されているAさんに、市民メディア発足に至った端緒や、同会が目指す報道のあり方などについて、聞いてみた。
−Aさんは、どのようなきっかけで、市民メディア「人権と報道関西の会」との関わりを、見出されたのでしょうか。
「私は、1970年代、報道記者をしていたのですが、その当時、冤罪事件に出会い、報道が無実の人を犯人と決め付けるやり方に疑問を持ちました。報道は犯人探しなのか、あるいは、犯人を徹底的に叩くことなのか、報道の仕事とは何なのかなど、随分、悩みました」
「そして、その悩みや疑問を、私は率直に、自分が勤めている会社をはじめ、様々なところで、発言しました。その結果、取材のやり方、報道のやり方は、改善された部分もあったのですが、本質的には、変わりませんでした」
「冤罪事件に出会い、色々と葛藤する最中、市民メディアを作るという話があり、私は、結成準備の段階から、会に関わり、世話人をやっています」
−Aさんは、テレビのお仕事に従事しておられるということですが、既存メディアの犯罪報道は、具体的には、記者がどのような活動をすることにより、私たち受け手側に、その情報が伝えられることになるのでしょうか。
「新聞・テレビは夜討ち朝駆けで得た警察情報を基に犯罪報道を行っています。建前としては警察をチェックする役割と言いますが、現実の報道は容疑者=犯人と決め付けています。事件が起きたら誰が犯人なのか、容疑者が逮捕されると証拠が何なのかを警察に聞いて回ります。メディアからすると犯罪報道という名の商品ですから、人々の耳目を集めないと商品にならない。自分で考えることをせずに、過度に警察情報に依存しているのではないかと懸念される現状があります」
「マスメディアの記者が大学まで出てやっていることは、一口に言えば警察官のご機嫌取りみたいな仕事。これがジャーナリズムかと疑問を持つ現場の記者たちは非常に多いです」
「警察の捜査が違法ではないのか、捜査のあり方に問題はないのかなど、記者は警察をチェックする役割がある筈ですが、本気でチェックする姿勢を見せると、警察官と親しくなれない。親しくなれなければ、情報をもらえない。情報がもらえなければ、記事が書けない。そういう事情が、マスメディアの記者にはあるのです。結局、取材・報道そのものが限りなく、『犯人視報道』になっていきます」
−今のお話ですと、記者の情報収集の方法が、何らかの形で改善されると、市民の報道被害は減少するかのように思われますが、記者の情報収集の方法などを、全般的に改善することはできないのでしょうか。
「過度の警察情報依存体質、記者クラブ制度の問題、現状の実名報道の見直し、欧米にある報道評議会の設立、あるべき記者の役割などの課題について、真剣に議論していけば犯罪報道は改革できると思います。しかし、一方でメディア間の競争が年々激しくなっています。メディアは現状の報道姿勢を変えるのではなく、生き残りのためと称して視聴率競争、部数獲得競争など、勝つことのみに力点が入っていて、一個人の訴えは、メディアの中では通らないシステムになっています」
−既存メディアでは、一個人の訴えが通らないシステムなので、市民メディアでは、一個人の訴えに対して、きめ細やかな対応で、みんなと一緒に考えていこうということですか。
「報道は、人を傷つけるのではなく、市民を勇気付けるものであってほしいと思うのが、私たちの会の考え方です。そして報道被害を生んだ場合は、会として報道被害者の訴えに耳を傾け、ともに被害回復に向けて、闘って行きたいと考えています。1999年に京都で起きた児童殺害事件で被害者家族のみならず周辺住民にも深刻な取材・報道被害が出たのですが、その時の住民のメディアとの闘いを『マスコミがやってきた』(現代人分社刊)という本にまとめました。今後とも報道被害に苦しむ人たちと手を取り合って活動していきたいと思っています」【了】
■関連情報
市民メディア「人権と報道関西の会」
人権と報道・連絡会
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 渡辺 直子【 兵庫県 】
この記事に関するお問い合わせ / PJ募集
世話人の一人Aさんは、関西の地方テレビ局で番組制作を担当しているが、同会で、報道被害に苦しむ人たちへの支援活動を続けておられる。そこで活動されているAさんに、市民メディア発足に至った端緒や、同会が目指す報道のあり方などについて、聞いてみた。
−Aさんは、どのようなきっかけで、市民メディア「人権と報道関西の会」との関わりを、見出されたのでしょうか。
「私は、1970年代、報道記者をしていたのですが、その当時、冤罪事件に出会い、報道が無実の人を犯人と決め付けるやり方に疑問を持ちました。報道は犯人探しなのか、あるいは、犯人を徹底的に叩くことなのか、報道の仕事とは何なのかなど、随分、悩みました」
「そして、その悩みや疑問を、私は率直に、自分が勤めている会社をはじめ、様々なところで、発言しました。その結果、取材のやり方、報道のやり方は、改善された部分もあったのですが、本質的には、変わりませんでした」
「冤罪事件に出会い、色々と葛藤する最中、市民メディアを作るという話があり、私は、結成準備の段階から、会に関わり、世話人をやっています」
−Aさんは、テレビのお仕事に従事しておられるということですが、既存メディアの犯罪報道は、具体的には、記者がどのような活動をすることにより、私たち受け手側に、その情報が伝えられることになるのでしょうか。
「新聞・テレビは夜討ち朝駆けで得た警察情報を基に犯罪報道を行っています。建前としては警察をチェックする役割と言いますが、現実の報道は容疑者=犯人と決め付けています。事件が起きたら誰が犯人なのか、容疑者が逮捕されると証拠が何なのかを警察に聞いて回ります。メディアからすると犯罪報道という名の商品ですから、人々の耳目を集めないと商品にならない。自分で考えることをせずに、過度に警察情報に依存しているのではないかと懸念される現状があります」
「マスメディアの記者が大学まで出てやっていることは、一口に言えば警察官のご機嫌取りみたいな仕事。これがジャーナリズムかと疑問を持つ現場の記者たちは非常に多いです」
「警察の捜査が違法ではないのか、捜査のあり方に問題はないのかなど、記者は警察をチェックする役割がある筈ですが、本気でチェックする姿勢を見せると、警察官と親しくなれない。親しくなれなければ、情報をもらえない。情報がもらえなければ、記事が書けない。そういう事情が、マスメディアの記者にはあるのです。結局、取材・報道そのものが限りなく、『犯人視報道』になっていきます」
−今のお話ですと、記者の情報収集の方法が、何らかの形で改善されると、市民の報道被害は減少するかのように思われますが、記者の情報収集の方法などを、全般的に改善することはできないのでしょうか。
「過度の警察情報依存体質、記者クラブ制度の問題、現状の実名報道の見直し、欧米にある報道評議会の設立、あるべき記者の役割などの課題について、真剣に議論していけば犯罪報道は改革できると思います。しかし、一方でメディア間の競争が年々激しくなっています。メディアは現状の報道姿勢を変えるのではなく、生き残りのためと称して視聴率競争、部数獲得競争など、勝つことのみに力点が入っていて、一個人の訴えは、メディアの中では通らないシステムになっています」
−既存メディアでは、一個人の訴えが通らないシステムなので、市民メディアでは、一個人の訴えに対して、きめ細やかな対応で、みんなと一緒に考えていこうということですか。
「報道は、人を傷つけるのではなく、市民を勇気付けるものであってほしいと思うのが、私たちの会の考え方です。そして報道被害を生んだ場合は、会として報道被害者の訴えに耳を傾け、ともに被害回復に向けて、闘って行きたいと考えています。1999年に京都で起きた児童殺害事件で被害者家族のみならず周辺住民にも深刻な取材・報道被害が出たのですが、その時の住民のメディアとの闘いを『マスコミがやってきた』(現代人分社刊)という本にまとめました。今後とも報道被害に苦しむ人たちと手を取り合って活動していきたいと思っています」【了】
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市民メディア「人権と報道関西の会」
人権と報道・連絡会
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パブリック・ジャーナリスト 渡辺 直子【 兵庫県 】
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