今週のお役立ち情報
少年の実名報道に踏み切った読売新聞
【PJ 2006年09月09日】−
先月28日、山口県周南市の専門学校で女子学生(20)が殺害された事件で、殺人の疑いで指名手配されていた同級生の少年(19)の遺体が7日、隣接する山口県下松市の山中で発見された。警察は、被疑者死亡のまま書類送検する方針と見られている。各種メディアは、遺体発見のニュースを一斉に報じた。
この事件は、被疑者が未成年ということで、マスコミ各社は当初から「少年事件」として匿名報道に徹してきた。しかし、8日付の朝刊では、全国紙の中で読売新聞だけが唯一、少年の顔写真の掲載と実名の報道に踏み切った。同紙は掲載記事に“おことわり”を付記し、「容疑者が死亡し、少年の更生を図る見地で氏名などの記事掲載を禁じている少年法の規定の対象外となったと判断したことに加え、事件の凶悪さや19歳という年齢などを考慮し、実名で報道します」と、その理由を示している。
前日(7日)の日本テレビのニュース番組「リアルタイム」も、同様の理由を示して実名報道に切り替えていることから、この実名報道への切り替えは、読売系列の報道部門の総意としての判断と見ることができる。ただし、8日付の読売系列のスポーツ紙「報知新聞」は匿名報道のままとなっている。
確かに被疑者の少年が死んでしまったら、「少年の更生を図る」という少年法の最大の目的は失われてしまい、匿名報道の根拠は崩れることになる。読売新聞の判断には一理あると言わなければならない。同時に、その判断からは「本来、すべての犯罪が実名報道されるべきであり、少年法による規制は例外的措置である」という価値観を読み取ることができる。だが、そうであるならば、「事件の凶悪さ」とか「19歳という年齢」などという基準の曖昧な理由をあげて実名報道の理由を補強する必要は無かったのではないか。補強理由に「凶悪さ」とは何か、18歳11カ月だとどうなのかといったグレーゾーンをあえて残した所に、読売新聞の“逃げ道”を感じる。
一方、他の大多数のマスコミは匿名報道を続けている。被疑者の生死にかかわらず「少年事件」として匿名報道を続けることも、各社の価値判断であり、見識である。結果的には無難な選択のようにも思えるが、この判断に当たって各社は、被疑者の少年が死んでしまった以上、実名報道することの意味がどこにあるのかを慎重に吟味したはずである。
今回、自殺した被疑者の少年の氏名を巡り、マスコミ各社の対応が分かれたことについては、各社の価値観の問題であり、是非を論ずるところではない。だが、少年の死後、その氏名や顔写真を報道することの「情報価値」を考えると、きわめて興味本位のニーズしか思い当たらないことも事実だ。マスコミには正確な情報を伝える義務はあるが、被疑者やその家族に社会的制裁を加える権利は無いということを、あらためて考えさせる報道であった。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 成越 秀峰【 神奈川県 】
この記事に関するお問い合わせ / PJ募集
この事件は、被疑者が未成年ということで、マスコミ各社は当初から「少年事件」として匿名報道に徹してきた。しかし、8日付の朝刊では、全国紙の中で読売新聞だけが唯一、少年の顔写真の掲載と実名の報道に踏み切った。同紙は掲載記事に“おことわり”を付記し、「容疑者が死亡し、少年の更生を図る見地で氏名などの記事掲載を禁じている少年法の規定の対象外となったと判断したことに加え、事件の凶悪さや19歳という年齢などを考慮し、実名で報道します」と、その理由を示している。
前日(7日)の日本テレビのニュース番組「リアルタイム」も、同様の理由を示して実名報道に切り替えていることから、この実名報道への切り替えは、読売系列の報道部門の総意としての判断と見ることができる。ただし、8日付の読売系列のスポーツ紙「報知新聞」は匿名報道のままとなっている。
確かに被疑者の少年が死んでしまったら、「少年の更生を図る」という少年法の最大の目的は失われてしまい、匿名報道の根拠は崩れることになる。読売新聞の判断には一理あると言わなければならない。同時に、その判断からは「本来、すべての犯罪が実名報道されるべきであり、少年法による規制は例外的措置である」という価値観を読み取ることができる。だが、そうであるならば、「事件の凶悪さ」とか「19歳という年齢」などという基準の曖昧な理由をあげて実名報道の理由を補強する必要は無かったのではないか。補強理由に「凶悪さ」とは何か、18歳11カ月だとどうなのかといったグレーゾーンをあえて残した所に、読売新聞の“逃げ道”を感じる。
一方、他の大多数のマスコミは匿名報道を続けている。被疑者の生死にかかわらず「少年事件」として匿名報道を続けることも、各社の価値判断であり、見識である。結果的には無難な選択のようにも思えるが、この判断に当たって各社は、被疑者の少年が死んでしまった以上、実名報道することの意味がどこにあるのかを慎重に吟味したはずである。
今回、自殺した被疑者の少年の氏名を巡り、マスコミ各社の対応が分かれたことについては、各社の価値観の問題であり、是非を論ずるところではない。だが、少年の死後、その氏名や顔写真を報道することの「情報価値」を考えると、きわめて興味本位のニーズしか思い当たらないことも事実だ。マスコミには正確な情報を伝える義務はあるが、被疑者やその家族に社会的制裁を加える権利は無いということを、あらためて考えさせる報道であった。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 成越 秀峰【 神奈川県 】
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