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「ずいぶん秋らしくなりましたね」八ヶ岳連峰(下)

2006年09月02日05時58分 / 提供:PJ

pj
 「ずいぶん秋らしくなりましたね」八ヶ岳連峰(下)
八ヶ岳連峰・天狗岳からのぞむ雲がかかった横岳。その下の箕冠山に遠足の団体が見える。(撮影:小田光康、8月29日)
(中)からのつづき 硫黄岳山荘から山頂までは緩やかな約20分の登り。山頂は台地のように広がっているのだが、北斜面は爆裂火口で切り立った崖になっている。近づくと滑落する危険があるので用心しなければならない。山頂に午後2時過ぎに到着。PJ小田はその時、PJニュースの原稿がたまっているのではないかと急に気になりだし「穂高さん、きょうのうちに山を下りましょうよ。みなさん、心配しているかもしれませんし。PJ安居院さんが原稿が出なくて気をもんでいると思います」と投げかけた。PJ穂高さんは一つ返事で「そうしましょう。みなさん原稿が出ていないので、気になっていますよ。一気に下りましょう」と賛成してくれた。

 それから赤岳鉱泉まで2人とも無言のまま、ひたすら早足で下った。足元の赤くザレた斜面以外、途中の景色は良く覚えていないほどだ。赤岳鉱泉山荘まで降りてきたが、立ち寄らずに行者小屋に向かった。ここからはなだらかな登り下りがつづく。硫黄岳山頂から行者小屋まで2時間弱で到着。すぐにテントをたたみ、下山準備をした。食料をすべて持ってきたのだが、ゴミの量がすごくなっていた。山でもゴミの持ち帰りは鉄則。高所であれば登山客が何気なくポイ捨てたゴミは、ヘリコプターで山麓まで運ばなければならず、ゴミ処理の費用が莫大にかかる。ゴミをビニール袋にいい加減に突っ込んだせいでかさばり、荷物がふくらんでしまった。

 行者小屋から美濃戸山荘まで大きな荷物を背負いながら、転げ落ちるように山を下りた。駐車場で車に乗り、PHSのつながる場所までいちもくさんに走った。道端に車を止め、PJニュースの原稿とメールのチェックを始めた。おそるおそる原稿の管理画面を開くと、たくさんの投稿記事があった。うれしい悲鳴である。その中に「どうして今日は記事がないのでしょう」というタイトルのPJ永野さんの原稿があった。「遅れて申し訳ありません」とパソコンの画面に謝りながら、その記事を出稿した。一通りのPJニュースの仕事が終わると、すでに午後9時をまわっていた。「温泉でも行きますか」と、2人でうなずき合った。近くの天然温泉で汗を流し、おでんの夕飯をとって、午後11時半には、車内に寝袋を広げて寝た。

 翌朝は4時半起床。原稿を一通りチェックして、車を奥蓼科・渋の湯方面に向けた。秘湯と評判で一度は行ってみたいと思っていた。するとPJ穂高さんが寝袋から出てきて「渋の湯だったら天狗岳ですね」との言葉を発した。突然のことだったので真意を測りかねた。穂高さんが「北八ヶ岳の天狗岳から見る赤岳と横岳は格別ですよ」と付け加えた。「なるほど、また山登りか」と合点した。当初は天狗岳登山は計画していなかったのだ。温泉につかって、東京に戻る予定だった。天狗岳は八ヶ岳連峰の北側に位置し、連峰一の展望で有名だ。山頂まで行けば、北は小諸・上田、東は小海、南は赤岳・横岳、西は諏訪と360度のパノラマが楽しめる。

 渋の湯の駐車場に車を止めて朝食をとり、ザックに昼食や軽登山の道具をつめて出発した。ここから黒百合平まではうっそうとした森の中を通る、つるつるの大きな岩が敷き詰められたような登山道だ。先日の雨のせいで岩がぬれていて、足をかけると滑って踏み外すことがたびたびあった。足をくじきやすいので注意が必要だ。昨晩、よく眠れたせいか歩くペースが速かった。通常2時間半かかる行程を1時間半で着いてしまった。

 黒百合平の空の色は突き抜けるような青さだった。見知らぬ大学生3人組が「こんにちは、良い天気ですね」とあいさつをしてきた。「日差しが強くて、肌がじりじりするほどだけど、風は冷たい。不思議ですね」と返答した。山での会話は穏やかで、なぜか文学的であり、哲学的でもある。空気が澄んでいるのか、薄いのか、空の青色と森の緑色のコントラストが強く写る。「最後まで一気に行きますか」と残り約1時間を踏み出した。

 黒百合平から天狗岳山頂までは岩にしがみついて登る難所が多い。途中、一息つくような踊り場では、南アルプスの稜線、蓼科山と車山高原、諏訪湖、そして佐久平。うわさで聞いていた八ヶ岳の360度のパノラマ風景が広がった。高度が上がるほど、風はますます冷たくなっていく。山頂まであと10分というところで山から下りてきた初老のジェントルマンに出会った。帽子を取り額の汗をぬぐって、彼はほほえみながら、こうあいさつした。「ずいぶん秋らしくなりましたね」。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小田 光康

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