Googleは、2007年11月5日(現地時間)、携帯電話の基本ソフトやアプリケーションを共通化しようという団体Open Handset Alliance(OHA)の設立と、Linuxベースの開発プラットフォームであるAndroidの発表を行った。前後して、Googleは米国でのFCCによる700MHz周波数帯の入札を表明した。これらによって、Googleがインターネットだけでなく携帯電話(通信事業)への本格的参入が取り沙汰されている。

 ここで、やはりGoogleはすごいとか、黒船襲来のごとく携帯市場の変革を唱えるのはたやすい。5年後に自分も含めてまわりのほとんどがAndroidケータイ(Googleフォン)を持っている状況になったとしても驚かないが、あえて別の見方をしてみたい。

 まず、現段階ではAndroidのSDKが発表されプログラムコンテストなどが行われているが、アライアンスへの賛同企業も参加目的や思惑もさまざまで温度差も多い。日本の大手携帯通信キャリアのある人物は、共通プラットフォームは確かにコストダウンにつながるし、動向として無視できないのでアライアンスには参加しているが、具体的なプランはないとしている。まあ、発表から数か月で成果の評価はできないので、現段階はGoogle自身も織り込み済みの状況だろう。

 では、もう少しマクロな視点で見てみよう。OHAの基本となるAndroid。Linuxという汎用OSをベースとしたプラットフォームは、確かにウェブ系のサービスやインターネットとの親和性は非常に高い。既存のウェブ上のサービスノウハウやソフトウェアが流用しやすい。開発効率が上がりコストダウンのメリットは計り知れない。

 しかし、汎用OSがゆえの欠点もある。最大の欠点はパフォーマンス問題だ。PCやサーバなら電源、熱対策など比較的対応しやすく、CPUの高速化によって複雑なOS(基本ソフト)の処理に必要なオーバーヘッドを吸収できるが、携帯電話やPDAは、いまだにプログラムサイズや部品点数、外形など「土地代」が非常に高い製品だ。とくに、ウェブと親和性の高いLinuxやWindowsといった基本ソフトは、ハードウェアに近い領域の処理やリアルタイム処理に弱い。組込み用にチューンされたリアルタイムLinuxやWindowsも存在するが、例えば自動車のエンジン制御などクリティカルな制御はいまだに専用OSや組込みプログラムに依存している領域が多い。

 携帯電話の基本機能である高周波を扱う通信ハードウェアの制御、液晶ディスプレイの制御に既存のモジュールやファームウェアを使わなければならないなら、ウェブ接続のために追加でAndroidを搭載する動機付けは単純ではない。Androidによるコストダウンが、余分なメモリや部品、あるいは性能の犠牲によって相殺される可能性がある。

 この問題は、Androidが携帯端末のすべてのハードウェアをリアルタイムで処理できれば解決される。その可能性は十分あるが、そのために超えなければならないハードルはもある。新規プラットフォーム導入による効率アップと、既存の携帯用既存ソフトウェア、たとえばシンビアンOSに汎用OS機能を強化するのでは、かかるコストや手間はあまり差はないかもしれない。

 もっとも、パフォーマンスの問題は時間と技術が解決するので、Androidがまったくダメというわけではないが、同時にAndroidでなければならないというわけでもない。実際、Googleブランドに乗るというメリットのほうがむしろ高い(いまのところ)。

 最後に、これは主観に左右される問題だが、共通プラットフォームによる製品は面白味に欠けるきらいがある。開発効率のアップやコストダウンは製品の値段や平均した品質などユーザーが受ける恩恵も少なくないが、突出した機能や琴線に触れる製品がでにくい。前出のキャリア担当者も、アライアンスへの参加は、ユーザーにいろいろな製品やサービスを提供できるあくまで選択肢のひとつだと述べていた。

 少なくとも「Googleフォン」は万能ではないはずだ。

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