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日米親善秘話〜里帰りを待つ人形。

日米親善秘話〜里帰りを待つ人形。
答礼人形・ミス茨城の“筑波かすみ”。もうあれから80年、友達の多くは里帰りをしました。でも私は、ウィスコンシン州ミルウオーキー博物館で帰れる日を、今日も待っています。(写真提供:瀬戸隆海氏(筑波かすみ里帰り実行委員会))
【PJ 2006年08月19日】− 1927(昭和2)年のこと。“ブラックサースデー”と呼ばれる金融恐慌がアメリカで起こった。迫り来る不安は西海岸を中心に、高質で低賃金の日本人労働者の排斥と、執拗な排日運動にと変化していった。そうした中、「金融不安と政情不安の責任を、日本人に転化してはならない」と考える一人のアメリカ人がいた。20年間日本に滞在し、両国の親善を願い続けた宣教師・シドニー・ルイス・ギューリック氏である。

 彼の発案によって、全米48州・260万人もの人々がその思いに応えた。1万2739体もの人形が世界的恐慌のさなか、日本に贈られたのである。ひな祭りにあわせて贈られたセルロイド人形は日本の子どもを喜ばせた。それが野口雨情や高野辰之作詞の”赤い靴”や、“アメリカ生まれの人形”として歌われた人形なのであった。

 日本国際児童親善会では答礼として、日本人形を贈ることにした。クリスマスに間に合うように送られた人形は58体。都道府県や外地から送られた人形には、ミス大日本“倭日出子”。ミス長野“長野絹子”。ミス茨城“筑波かすみ”などと、出身にちなんで命名され、神奈川県の神奈子、横浜の濱子などもあった。ミス日本は「倭は日出る国」という」意味、ミス長野の絹子とは、輸出向け主産品が絹製品であったからだ。またミス茨城は、地元の誇り筑波山と霞ヶ浦にちなんでいる。これが人形による国際交流の先達(「吉徳」社史)であった。

 だが、ギューリック氏の願いも空しく、その後日米は戦争に突入。第二次大戦中、日本に贈られた人形の多くは“仮面の親善使”(昭和18年2月19日付毎日新聞記事)や“鬼畜の国からの贈り物”という名のもとに処分され、あるものは無残にも「竹やりで刺殺」されたという。「人形に罪はない」、「可愛そうだ」という思いから、隠密裏に保管された人形の現存数は、わずか323体(日本郷土玩具博物館調査)だという。

 日本から贈られた人形の内、既に里帰りした人形は“倭日出子”以下31体。その一方、ミス佐賀、ミス熊本、ミス宮崎など多数が、今も里帰りを待つ。ミス茨城こと“筑波かすみ”もその一つ。現在ウイスコンシン州ミルウオーキーの市立博物館で、その日を待っている。茨城でも有志によって、今年10月を目標に“里帰り運動”が始まった。委員会代表幹事の鈴木進一氏は、「大恐慌以来の長い歳月、日米親善を果たした人形を一日も早く里帰りさせたい」と語る。

 シドニー・ギューリック氏の孫・デニー・ギューリック氏(メリーランド大学教授)は今も祖父の意思を引き継ぎ、日本に人形を贈り続け、時には講演会「こどもたちの日米平和使節」(平成18年7月、大阪歴史博物館)を開く。どんな時代でも、どの国とであっても、民間の国際親善とは軽やかで美しいものである。【了】

■関連情報
 「筑波かすみ里帰り実行委員会」への問い合わせは、“みつかいとうアクト21”(電話:0297ー72-0431)まで。
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資【 茨城県 】
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