14日、大停電の原因となった東電の高圧送電線を破損した三国屋(みくにや)建設所有のクレーン船。対岸は東京都。画面左が東京湾。(撮影:佐藤学)

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14日午前7時38分ごろ、東京都と千葉県の間を流れる旧江戸川で、クレーン船が水面から約16メートル上に川をまたぐように張られた東京電力の高圧送電線に接触し、損傷させたことが原因で、東京都心部と神奈川、千葉両県の一部、合わせて139万軒以上が停電した。被害軒数ベースで過去2番目に大きなこの停電で、首都圏の交通機関が大幅に乱れたほか、都内の信号が250個所以上で使用不能になり、渋谷区ではビルのエレベーターに人が閉じこめられるなど、大きな影響が出た。

 東京電力によると、事故の現場は東京都江戸川区南葛西7丁目と、旧江戸川東側の千葉県浦安市富士見3丁目の同社鉄塔の中間にあたる個所。水面から約16メートルの空中に張られた送電線に、東京湾から上ってきた三国屋(みくにや)建設所有のクレーン船のクレーン部が接触。外径約3センチのアルミより線4本で1組になっている送電線の川下部分の2組と川上部分の1組、計3組のうちの11本が損傷した。このため、千葉側の新京葉変電所(船橋市)から東京側の江東変電所(江東区)に送られる27万5000ボルトの電流がストップした。

 東電には同日正午現在、1万500件の問い合わせがあった。

 この事故で、東京23区の大部分や神奈川県、千葉県の一部、合わせて139万1000軒が停電した。被害を受けた地区は、東京都が江戸川、江東、中央、千代田、目黒、渋谷、世田谷、新宿、中野、品川、港、大田、葛飾と豊島の14区と町田市の合計97.4万軒。神奈川県は、横浜市の青葉と都筑、緑の3区と川崎市の麻生、多摩、宮前と高津の4区、両市合わせて22万軒。千葉県は、市川市と浦安市の一部の19.7万軒。

 停電は発生から約3時間後の午前10時44分に全面復旧したが、渋谷区内のオフィスビルではエレベーターに人が閉じ込められた。同区では、ビル設備の安全確認後、閉じこめられた人が救出されるまで一部停電が続いた。また、JRをはじめ首都圏の地下鉄・私鉄のダイヤが大幅に乱れた。新橋駅と東京湾のお台場を結ぶ「ゆりかもめ」が運転を見合わせたため、お盆休み中の観光客が多数足止めされた。

 1999年11月22日、埼玉県狭山市で航空自衛隊の航空機が墜落、高圧送電線を切断するという事故が起き、当時も首都圏の約80万世帯が停電した。この時の損害について、東電は自衛隊から賠償を受けたが、今回の事故の損害賠償請求は「検討中」(同社広報部)とのこと。送電線の接触事故について、同社の古谷聡・工務部長代理は、千代田区の本社で行われた記者会見で、「クレーンの事故は時々起きている。私どもとしては、事業者に安全面に気を配っていただくようお願いしている」と語った。

 今回の停電について、同社の吉田薫広報部課長は「過酷な事故レベル」と評価した上で、「早急な対応ができたが、多大なご迷惑をお掛けしました」と頭を下げた。東電の過去の大規模停電では、87年7月の気温の急上昇による停電の816.8万キロワット、280万軒が最も被害が多く、被害軒数としては今回が2番目。このほか大きな被害が出た停電は、86年の神奈川大停電の355万キロワット、133万軒、83年8月の神奈川県西部地震の256.9万キロワット、84.4万軒などがある。【了】

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