11日、日本外国特派員協会で講演する国境なき医師団日本会長の臼井律郎医師(撮影:吉川忠行)

写真拡大

国境なき医師団日本(MSF日本、東京都新宿区)会長の臼井律郎医師が11日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で講演し、「スーダンを忘れられた紛争地として見捨てたくないが、同地での活動が困難に直面しているのも事実」と現地での活動内容と現状を説明。隣国チャドのスーダン国境に近い町アドレでの活動状況を中心に、医師の思いを報告した。

 スーダン西部のダルフール地方では、アラブ民族と非アラブ民族の対立に端を発する紛争が始まった2003年から多くの人びとが家を失い、土地を追われているという。MSFは、チャドに逃れてくる難民を対象に人道支援活動から始め、その後ダルフールでも活動を開始した。しかし、7月に5人の外国人支援活動家が殺されるなどダルフール地方の情勢は悪化。チャドとの国境も閉鎖され、活動が困難になっている。

 臼井医師は「私たちは支援をするために行っているのであり、死ぬためにスーダンに行くのではない」と話し、状況によって支援を縮小せざるを得ない現状も伝えた。一方で、最近激化しているスリランカ内戦や、レバノンでのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍の戦争などばかりがメディアに取り上げられることで、スーダンが忘れられてはならないと強調。援助活動の必要性を訴えた。

 MSFはこれまで約3年間、ダルフール地方18カ所に、海外から170人を派遣し2600人の現地スタッフと医療支援をしてきた。【了】

■関連リンク
国境なき医師団日本