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深田久弥の遺業は? 日本百名山のみにあらず (上)

2006年07月13日09時56分 / 提供:PJ

pj
深田久弥の遺業は? 日本百名山のみにあらず (上)
右の記念碑には『百の頂きに 百の喜びあり 深田久弥』の直筆のことばが刻まれている。山梨県・茅ケ岳で。(撮影:穂高健一)
 山梨県・茅ヶ岳は、深田久弥(1903〜71)の終焉した地で有名になった。
昭和39(1964)年には深田久弥著『日本百名山』(新潮社・読売文学賞受賞)が発表された。そして、平成6(1994)年にNHK衛星放送で、約一年間にわたり『日本百名山』が放映された。山容の美しさ、エッセイ朗読の深い味わい、音楽の快い響きから、中高年齢層を中心とした登山ブームに火がついた。いまなお百名山ブームは衰えることを知らない。

 登山家の目で見ると、深田久弥の遺業は『日本百名山』よりも、ヒマラヤ研究にある。そう語るのが、日本山岳会会員の上村信太郎さんだ。上村さんは『エベレストでなにが起きているか』(山と渓谷社)の著者でもあり、世界の屋根・ヒマラヤには精通している。

 7月9日は朝から70パーセントの雨予報だった。上村さんから深田久弥の遺業を聞きながら、ふたりで茅ヶ岳に登った。登山口までのアクセスが悪く、JR韮崎駅からタクシーの利用だった。梅雨どきの重い雲の下だが、下車すると四方から鶯の鳴き声や、食べ頃の熟した桑の実が迎えてくれた。

 深田久弥記念公園はすぐ近くにあった。石碑や案内板から深田久弥の故郷は加賀の大聖寺だとか、作家、俳人、登山家、ヒマラヤ研究家という多彩な生前の活動ぶりとかがわかった。

 第一期の登山ブームは、昭和31(1956)年の日本山岳会隊(槙有恒隊長)によって世界で8番目に高い秀峰マナスル(8163メートル)に初登頂がなされたときからはじまった。ヒマラヤには8000メートル級の山岳が14座ある。当時の多くが未踏峰で、8000メートル級の初登頂として6番目に日の丸を山頂に掲げたのだ。それは世界に誇れる偉業で、日本中が沸いた。同時に、登山ブームに火がついたのだ。

 大学や社会人を中心とした山岳部が数多くできた。ヒマラヤには6、7000メートル級の未踏峰が多かったことから、先鋭な山岳部の遠征隊が目指すのは初登頂だった。他方で、ネパール、インド、パキスタン、中国(チベット)などは政情が不安定で、なおかつ国境問題を抱えている。国際的な紛争地となると、鎖国すらもめずらしくない。地図や現地情報は国家機密に該当し、入手しにくくなる。山岳の名前や所在地すら明瞭ではない。欧米や日本のヒマラヤ遠征隊とって、緻密な事前の現地調査が必要だが、情報に乏しかった。遠征隊の大きな壁になっていた。

 深田久弥は山の原稿で作家になった。そして、雑誌「岳人」に掲載し、ヒマラヤ関連の記事を書きつづけた。後に『ヒマラヤの高峰』にまとめられた。一つひとつの情報が断片でも、集大成されると貴重な情報源になる。

 「登山家で物書きという文筆家は、欧米ではあまり見かけないんです」と上村さんは語る。日本のアルピニストたちは深田久弥のおかげで、英米よりもはるかに豊富なヒマラヤ情報を入手できた。深田久弥は、当時の若いアルピニストに強い影響力を与えたのだ。
【つづく】


■関連情報
「エベレストでなにが起きているか」上村信太郎著(山と渓谷社)
「ヒマラヤ冒険物語」クリス・ボニントン著/田口二郎訳(岩波書店)

記者HP:穂高健一ワールド





※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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