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中田英引退、ラストパス「何を伝えることができるか」

【PJ 2006年07月05日】− 一流選手の引退には、常に美しい散り際を感じさせる。ドイツワールドカップ杯を最後に引退を表明した中田英寿(29)選手のメッセージは、まさに彼が得意とする強くて正確でしかも意表をつくダイレクトパスのように、まっすぐにファンの人たちの心に蹴り込まれた。大手メディアを通さなかったその直接のパスは、受け手によって様々な意味となる。すべてをかけて挑んできたサッカーに中田英選手が別れを告げたときの言葉は、サッカーを通して何を伝えることができたかであった。

 サッカー選手としての集大成と現役最後の場として、中田英選手はドイツワールドカップ杯の舞台を選んだ。同選手のホームページ「nakata.net」に掲載したメッセージのなかで、一次リーグの試合について「最後となるドイツでの戦いの中では、選手たち、スタッフ、そしてファンのみんなに『俺は一体何を伝えられることができるのだろうか』それだけを考えてプレーしてきた」と綴っている。

 「俺は一体何を伝えられることができるか」という言葉は、中田英選手が超一流選手であったことを物語る。対ブラジルとの敗戦後、ピッチに仰向けとなりこらえきれずに涙をこぼす中田英選手の姿を瞼に焼き付けたのはサポーターのみならず、テレビの前の数多くの日本の視聴者だったはずだ。それぞれが中田英選手と同じように、自分の生活の中の周りの人たちに「何を伝えることができるか」を自問すると、彼の偉大さに改めて気づかされる。

 もし、明日職場を離れるとしたら、これまでやってきた仕事を通して、あなたは同僚や後輩に伝えてきた何かがあるだろうか。もし、あなたが子を持つ親であれば、これまで息子や娘たちに何を伝えてきたのだろうか。既婚者であればお互いの配偶者に、独身者であれば、現在の恋人に、そして、別れた昔の恋人に伝えた確かなモノがあるだろうか。

 人に大切な何かを伝えることは容易ではない。中田英選手でさえ、「時には励まし、時には怒鳴り、時には相手を怒らせてしまったこともあった。だが、メンバーには最後まで上手に伝えることは出来なかった」と告白しているほどなのだ。しかし、このフレーズから中田英選手の純粋さや懸命さや不器用さが手に取るように伝わってくる。

 挑戦する前にあきらめたり、戦う前に「負け組」と自分で蔑んだり、言い訳を作るようでは、中田英選手の強くて早いダイレクトパスは受け止められない。彼のこれまでのプレーぶりからも、誰かに何かを伝えるためには、見かけのかっこ良さや片手間では決して得られないことを証明している。

 うかうかしていたら、「このぐらい早いパスに追いついて受け止められないようなら、世界で通用しないぞ!」と夢の中で中田英選手に怒鳴られるかもしれない。彼のように「俺は一体何を伝えられることができるか」という言葉が似合うような人は、それぞれ異なった「ピッチ」の内外に立っていても素敵な人に違いない。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト (PJ)コーディネーター 佐藤学【 東京都 】
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