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『身代金目的誘拐』

【ライブドア・ニュース 2006年06月30日】− 26日午後、白昼の東京・渋谷の路上で発生した女子大生誘拐事件。民間人の目撃証言もあり、スピード解決したことは不幸中の幸いと言わないといけないだろうが、この種の事件には常に悲劇の匂いがついて回る。自分の体験も踏まえて、誘拐罪の周辺に言及してみたい。

 抵抗できない婦女子が狙われることの多い誘拐事件で、真っ先に思い浮かぶのは「吉展ちゃん事件」だろう。東京・台東区に住む村越吉展ちゃん(当時4歳)が、元時計修理工・小原保(死刑執行)に誘拐され姿を消したのは1963年(昭和38年)。まさに『三丁目の夕日』の雰囲気がまだ残る時代で、日本中がこのいたいけな子供の行方を求めて騒然となったことを良く覚えている。犯人の小原は2年以上経って捕まったが、ほどなく吉展ちゃんは遺体で発見。その前にあった「雅樹ちゃん事件」などとともに、子供を狙った凶悪事件の続発に、多くの人が心を痛めた。

 刑法に規定されている身代金目的誘拐罪(第225条の2)は、文字通りこうした金銭の奪取を目的にした犯罪に対するものだ。法定刑は無期または3年以上の懲役。もともとは、営利、わいせつ、結婚などを目的とした誘拐に対する「営利目的等誘拐罪」(懲役1年以上10年以下)の中にまとめられていたが、1960年代に前記のような身代金目的の誘拐事件が続いたため、64年に刑法を改正して新設された。

 ここから分かる通り、「営利誘拐」と「身代金目的誘拐」は全く別の罪科ということになる。しばしば誤解されるが、営利誘拐は被害者本人の身柄が目的になるのに対して(例えば結婚目的)、身代金目的誘拐は被害者の身体や安全と引き換えにした金銭の喝取が目的となる。つまり、被害者はたまたまそこにいただけで、意図しない人物がさらわれてしまうこともあるし、目的とした一家の関係者なら誰でも(たとえお手伝いさんでも)ということもあり得るのだ。

 警察庁によると、戦後起こった身代金目的誘拐事件は288件。被害者が殺害された事件は34件。未解決のままなのは8件だけで、それ以外はすべて解決している。割に合わない犯罪なのである。

 今回のような女子大生誘拐事件というと、80年に起こった「名古屋女子大生誘拐殺人事件」を思い出す。名古屋の名門女子大に通う戸谷早百合さん(当時22歳)が誘拐され、直後に殺害された事件。犯人の木村修治は黒澤映画『天国と地獄』をヒントにしたと述べたことも話題になった。発生から約2カ月後に逮捕されたが、逮捕当日の新聞朝刊に載ったアルバイト先の飲食店の奥から顔をのぞかせる犯人・木村修治の、脅えたようなスクープ写真の強烈な印象は今もって忘れがたい。毎日新聞の特ダネだった。【了】ライブドア・ニュース 満富俊吉郎
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