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再論、弁護士会見を巡る人権上の問題

2006年06月15日09時20分 / 提供:PJ

pj
今月12日に掲載された記事「男児殺害 弁護士会見で危ぶまれる人権」 に対し、トラックバックなどを通じて、複数の方から賛否両論のご意見を頂いた。ご意見の中には勉強になる点が非常に多く、誠に勝手ながら、ご意見・ご感想を寄せてくださった皆さんに、この場を借りて御礼申し上げることをお許し頂きたい。「PJオピニオン」という記事の字数の制約上、言葉が至らない点があったことを反省しつつ、きょうは若干の補足をさせて頂きたい。

 前回掲載の記事では、「被疑者側の弁護士」が事件の詳細を語ることについて、問題点と思われる3つの要素を指摘した。第一は、被害者側の人権の問題である。これについて、被疑者側の弁護士が法的には「会見の前に被害者に面会する必要はなく」「被害者側と会見内容を綿密に打ち合わせる必要もない」ことは、何人かのご指摘の通りである。しかし、それは法律論であって、日常的に職業法律家に接触したことのない一般市民が期待する弁護士像からは乖離(かいり)していることを、まずもって理解してほしい。

 刑事事件は、民事事件とは異なり、被害者側が原告として法廷で加害者の責任を直接、追及することはできない。その役割は司直の手に委ねられる。他方、被害者にとっては、たとえ加害者側の弁護士であったとしても、弁護士は「人権について思慮深く、高い教養と良識を持った法律家」なのである。被疑者が謝罪の言葉を述べたのだとしたら、それは被害者に向けられたものであるべきで、マスコミに向けたものではないはずだ。

 その謝罪が弁護士から礼節をもって自分たちに届けられることを、被害者は期待する。被疑者の弁護士にとって、いつ、どこで被疑者の「謝罪コメント」を読み上げるのかなど些細な問題なのかもしれないが、被害者の傷や感情をも考慮し、裁判終結後の最終的な法的安定性や可能な限り多数の当事者の満足を希求することこそ、リーガルマインドというものではないのか。「自分も知らされていない、我が子が殺される直前の表情」を無断で発表されたら、「プライバシーが侵害された」と感じるのが多くの一般市民の素直な感情だと考える。

 第二に、今回の会見を巡る被疑者の人権については、被疑者と代理人たる弁護士の当事者間の問題であるから、当事者間の話し合いがきちんと為されていて、弁護士がその領域を守っているのなら良かろう。ただし、弁護士の守秘義務の観点からは会見内容に限度があるはずで、その点の注意を喚起したい。いずれにせよ、民事・刑事を問わず、市民が弁護士を信頼し、真実をつまびらかにできる環境が揺らぐことのないよう願うものである。

 さて、問題は、最後の「裁判員制度」との関連である。12日の記事では、「被疑者側の弁護士」が警察発表よりも先に事件の動機や犯行の手口の詳細を明らかにすることは、一体、誰の利益に資するのかも問題である、と書いた。司法当局の発表が絶対で、信用できるなどと主張する考えは毛頭ない。本来、警察権力はウソの発表をするかもしれないと疑ってかかるのが、ジャーナリズムの権力監視としての役割である。

 しかし、同時に、被疑者も必ずしも真実を語らないかもしれないという冷静な視点も合わせ持つことが肝要だ。真実は「公開の法廷」で明らかにされ、審理されるべきもので、マスコミというフィルターを通した事前情報が巷間に氾濫することを憂慮する。特に、本事件の場合、弁護士会見の段階で被疑者は死体遺棄容疑で逮捕されてはいたが、殺人容疑では逮捕されていないことに注意してほしい。

 あまりに詳細に立ち入った「被疑者側弁護士」の会見は、ワイドショー的好奇心に応えることにはなっても、市民の「知る権利」や「被疑者の人権擁護」という利益に本当にかなうものなのか、熟慮を要するところではないだろうか。今回の会見が一体、誰の利益に資するのか、あらためて一考すべき問題であると思うしだいである。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 成越 秀峰

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