男児殺害 弁護士会見で危ぶまれる人権
2006年06月12日06時37分 / 提供:PJ
秋田県藤里町で小学1年生の男の子(7)が殺害された事件で、逮捕された女(33)の弁護士2人が9日、記者会見を開き、殺害当時の状況や被疑者の心境などを明らかにした。会見の詳細は、当日のテレビ・新聞などのマスメディアで一斉に報じられた。
子どもが被害者となったこの事件は、発生当初から全国的な注目を集め、一般市民をも巻き込んで「犯人捜し」が行われた。この間、地元ではマスコミの「過熱報道」も問題となった。そして、被疑者が逮捕され、殺害を認める供述をしているとされる今、市民の関心は「なぜ、男の子が殺されなければならなかったのか」、「どうして事件を防ぎ得なかったのか」に移って来ている。今回の弁護士の記者会見は、そうした社会的ニーズに応じたものと意味づけることができよう。
しかし、会見を報じた映像・音声・活字のメディアを見聞する限り、今回、2人の弁護士は、かなり饒舌に事件の詳細に踏み込んだ発言をした印象を受ける。具体的には、▽男の子を自宅に招き入れたときの被疑者と男の子の会話、▽男の子の帽子を見て殺意が芽生えた様子、▽長さ150センチの腰ひもを後ろから首に回したこと、▽そのとき、男の子がきょとんとした表情でふりむいたことなど、従来なら刑事裁判の初公判で検察側の冒頭陳述を聴くまでわからないような生々しい内容であった。ここに、いくつかの人権上の危険性が潜む。
まず、被害者側の人権である。弁護士は会見の冒頭で、男の子の家族に対する「被疑者の謝罪のコメント」を読み上げた。しかし、この段階で、すでに2人の弁護士は被害者家族にこの「謝罪」を伝えていたのか、また、「被疑者側の弁護士」が男の子の殺害直前の表情までマスコミに伝えることについて被害者家族の了解を得ていたのかは、不明である。もし、事前に被害者家族に接触していなかったとしたら言語道断であるし、仮に接触していたとしても、会見の席でどこまでデリケートあるいはプライベートな情報を公開するのか、被害者側と綿密な打ち合わせがなされるべきである。
もう一つは、被疑者の人権である。弁護士を信頼して話したプライベートな情報が、すぐに記者会見を通じて公表されることが恒常化したら、被疑者は安心して弁護士に真実を語れるだろうか。今回、被疑者はどこまでの情報の発表を弁護士に認めたのか。
また、「被疑者側の弁護士」が警察発表よりも先に事件の動機や犯行の手口の詳細を明らかにすることは、一体、誰の利益に資するのかも問題である。来るべき裁判員制度の下では、マスコミ報道が、裁判員となる市民が法廷外で事前に心証形成する大きな要素となることは否定できない。われわれ市民は、被疑者側の一方的な会見に無批判に耳を傾けることの危うさを認識しなければなるまい。【了】
子どもが被害者となったこの事件は、発生当初から全国的な注目を集め、一般市民をも巻き込んで「犯人捜し」が行われた。この間、地元ではマスコミの「過熱報道」も問題となった。そして、被疑者が逮捕され、殺害を認める供述をしているとされる今、市民の関心は「なぜ、男の子が殺されなければならなかったのか」、「どうして事件を防ぎ得なかったのか」に移って来ている。今回の弁護士の記者会見は、そうした社会的ニーズに応じたものと意味づけることができよう。
しかし、会見を報じた映像・音声・活字のメディアを見聞する限り、今回、2人の弁護士は、かなり饒舌に事件の詳細に踏み込んだ発言をした印象を受ける。具体的には、▽男の子を自宅に招き入れたときの被疑者と男の子の会話、▽男の子の帽子を見て殺意が芽生えた様子、▽長さ150センチの腰ひもを後ろから首に回したこと、▽そのとき、男の子がきょとんとした表情でふりむいたことなど、従来なら刑事裁判の初公判で検察側の冒頭陳述を聴くまでわからないような生々しい内容であった。ここに、いくつかの人権上の危険性が潜む。
まず、被害者側の人権である。弁護士は会見の冒頭で、男の子の家族に対する「被疑者の謝罪のコメント」を読み上げた。しかし、この段階で、すでに2人の弁護士は被害者家族にこの「謝罪」を伝えていたのか、また、「被疑者側の弁護士」が男の子の殺害直前の表情までマスコミに伝えることについて被害者家族の了解を得ていたのかは、不明である。もし、事前に被害者家族に接触していなかったとしたら言語道断であるし、仮に接触していたとしても、会見の席でどこまでデリケートあるいはプライベートな情報を公開するのか、被害者側と綿密な打ち合わせがなされるべきである。
もう一つは、被疑者の人権である。弁護士を信頼して話したプライベートな情報が、すぐに記者会見を通じて公表されることが恒常化したら、被疑者は安心して弁護士に真実を語れるだろうか。今回、被疑者はどこまでの情報の発表を弁護士に認めたのか。
また、「被疑者側の弁護士」が警察発表よりも先に事件の動機や犯行の手口の詳細を明らかにすることは、一体、誰の利益に資するのかも問題である。来るべき裁判員制度の下では、マスコミ報道が、裁判員となる市民が法廷外で事前に心証形成する大きな要素となることは否定できない。われわれ市民は、被疑者側の一方的な会見に無批判に耳を傾けることの危うさを認識しなければなるまい。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 成越 秀峰
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