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町工場 この世にないモノが生まれるまで=大田区(上)

町工場 この世にないモノが生まれるまで=大田区(上)
12坪の小さな町工場だが、親子3人の頭の中には自由な発想の空間が広がっている。後藤孝社長(中央)に、長男の桂三さん(左)と次男の光央さん(右)。5日、東京都大田区の後藤金型興業所で。(撮影:佐藤学)
【PJ 2006年06月08日】− 東京都大田区の多摩川の河口にほど近いところに、親子3人だけの小さな町工場がある。そこで発明されたエアゾール容器用ガス抜きキャップ「e−CAP(イーキャップ)」が、05年2月に開かれた第16回大田区中小企業新製品・新技術コンクールで最優秀賞を受賞して以来、日本国内をはじめ、韓国や中国などの海外からも大きな注目を浴び始めた。「お金で創造力は買えない」という兄弟は、尊敬して止まない職人の父親と一緒に、モノ作りの難しさと達成感を味わい、期待に胸を膨らませている。都心にある高層ビル内のオフィス、知名度のある大企業、肩書などにはまったく興味のないふたり。自分たちが手掛けた製品が、様々なエアゾール缶に取り付けられ、消費者に使用してもらうことが彼らの夢だ。

 1970年に設立された後藤金型興業所は、主に殺虫剤、塗料スプレーなどのエアゾール缶に使用するプラスチックキャップ用の金型を手がけてきた。父親の後藤孝(66)社長のほかには、長男の桂三(39)さんと次男の光央(33)さんのたったふたりが従業員。90年代に入って、取引先の製缶メーカーが生産コストの安い海外工場に次々とシフトしたため、その金型の注文も激減の一途を辿り、何か手を打たなければいけないという危機感がじわじわと押し寄せていた。

 一方、国内では、ゴミとして捨てられたヘアースプレーやカセットボンベなどの廃エアゾール缶内に残ったガスが原因で、ゴミ収集車の中でガスが漏れて引火する事故が多発し、作業員が火傷を負うなど社会問題と取り上げられるようになっていた。使い終わったエアゾール缶(スプレー缶)やガスボンベの処分方法も、穴を開ける、開けないで、地方自治体によって異なり、問題解決の有効な対策が見えない状況が続いていた。

 そんなある日、取引先の東京コヤマプラスチック(東京都文京区)の小山達也社長が訪れ、後藤社長などと工場内での雑談中に「直径35ミリのショート缶のキャップに付けられるガス抜きキャップがあれば、爆発的に売れるだろうなあ」と話した。その一言がきっかけで、次男の光央さんは考案した図柄を、父親である後藤社長にぶつけたのが、新製品「イーキャップ」開発の始まりとなった。

 最初は「これじゃだめだ」と言って取り合わなかった後藤社長も、光央さんの何度となく考案する図柄のひとつを見て「これなら面白そうだな、やってみようか」と言い出し、30年ぐらい前の金型を奥から引っ張り出し、改造して試作品1号を作り上げた。「息子が一生懸命考えた」と子を想う親心と考案した絵柄のなかの一枚にひらめきが走ったためだ。「実際に、思いがけず良いものが出来上がってしまったんです。今だから言えますが、その試作品のおかげでそれから3年間、約1000万円という開発費を投じて、大変な苦労が始まりました」と光央さんは回想する。

 後藤金型興業所が考案した「イーキャップ」が出る前の従来のガス抜きキャップは、缶から噴射ヘッドを外し、キャップをひっくり返して再び、缶にはめるという方法だった。同キャップは、噴射ヘッドが固い場合、力の弱い女性などは取り外しが出来ないためにガス抜きができないことや、噴射ヘッドを外した後、そのキャップを缶にはめたときに誤って自分の顔などに残ったガスを吹き付けてしまったり、残ガスが飛び散らないようにちり紙を詰めたりと何か物が必要だったり、という大きな問題があった。【つづく】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト (PJ)コーディネーター 佐藤学【 東京都 】
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