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村上ファンド事件から学ぶメディア・リテラシー(上)

2006年06月07日14時12分 / 提供:PJ

pj
マスコミが持つ2つの顔

ニッポン放送株の売買をめぐって、村上ファンドがインサイダー取引をしたとして、東京地検特捜部が5日に、同ファンド代表の村上世彰(よしあき)容疑者(46)を、証券取引法違反(インサイダー取引)の疑いで逮捕しました。今回はこの事件を通して、PJ小田とPJ佐藤は、メディア・リテラシーについて考えていこうと思います。

 PJ小田:「六本木ヒルズ周辺がまた騒がしくなってきたね」

 PJ佐藤:「最近まで、ロビーや入り口付近に多くのマスコミが一日中、うろうろしていたよ。村上氏や堀江氏が住んでいるマンションの辺りにもたくさんいた。そのマンションの住民が迷惑しているんだって、事件に関係ないのにカメラやマイクを向けるから。住民のプライバシーなんて関係ないんだ」

 PJ小田:「現場を見てきたよ。そのマンションの下で『立ちレポ』していたテレビのレポーターが、住民から苦情がきているけれど、辺りは平静だなんてカメラに向かって話していた。辺りはマスコミだらけで、ふつうの人は近寄りがたいだけだったのに。あれじゃ、住民はマンションに出入りしづらい。どうかしてるよ」

 PJ佐藤:「さて、今回は村上ファンド事件?」

 PJ小田:「いや、村上ファンド事件を通して、メディア・リテラシーを学ぼうって企画だよ」

 PJ佐藤:「なに、メディア・リテラシーって」

 PJ小田:「メディアの言説・映像を批判的に読み解く学問のこと。平たく言えば、マスコミが言っていることや、映し出す映像について、一歩立ち止まり『ほんまかいな』って考えるお勉強のことだよ。カナダやイギリスでは盛んで、最近、日本でも浸透してきたんだ。虚偽報道や集団的加熱取材などマスコミ被害が広がっているから」

 PJ佐藤:「ほほー。マスコミが言っていること鵜呑みにすると、とんだ間違えを起こすもんね。村上ファンド事件でも、懲りずに『関係者によると報道』がはびこっている。ライブドア事件の時の産経新聞にあったような真偽定かでない記事がたくさんある。この件に関しては、産経新聞はほおかむりしている」

 PJ小田:「『関係者によると報道』の問題点については、この前書いたから詳しくは言わないけど、これはマスコミが権力の喧伝(けんでん)機関となっている証しだね。非常に危険な言論状況だよ。一方的な報道しかされない。異質な他者の言い分に耳を傾ける民主主義の原理に反する報道だね」

 PJ佐藤:「民主主義の原理なんて、難しい話はやめようよ。もっと具体的に、わかりやすく話してよ」

 PJ小田:「ごめん、ごめん。さて、まずマスコミが持つ2つ顔のことを考えてみようよ。マスコミ、つまりマスメディアはいつも、民主主義や自由主義を守るため、社会の木鐸の役目を担っていると強調するよね。確かに、これは一つの顔だ。でも、もう一つの顔があるよ。資本主義の中にいる営利企業という顔だよ」

 PJ佐藤:「ふーん。確かに朝日新聞社にしても正式には『株式会社朝日新聞社』だよね。紙面のどこにも書かれていないけど。ふつうの営利企業だよね。ほかの新聞にしても同じだね」

 PJ小田:「営利企業だからこそ、売り上げを伸ばし、利益を上げなければならない。これは当然だ。そうでなければ、倒産してしまう。だから、記事の内容は多くの読者が関心があり、興味を持たれるものが選ばれてしまう傾向がある。マスコミはよく、『より多くの人々が知らなければならないことを伝える』ということばかりを強調するけれど、これは民主主義の顔だ。同時に、マスコミには『より多くの人々が興味を引くであろう出来事を選んでしまう』という、商業主義の顔もある。マスコミにアンビバレント(両義的)な性格があることを忘れてはいけない。経営的な論理も必ず働いている」

 PJ佐藤:「確かに、街角の小さな出来事はあまり伝えられない。それはその記事が影響を与えることが出来る人々の数が少ないからか。これじゃ販売部数を増やせないもんね。東京に住んでいるけど、朝日新聞や読売新聞など全国紙には肝心の東京の地元の記事が非常に少ない。これって、おかしくない?知りたい記事が載っていない」

 PJ小田:「そうだね。最大公約数的な記事が多くなるのは、マスメディアが抱えるジレンマといったところかな。恐竜のように巨大化したマスメディアは多種多様な情報に対応できないんだ。『声なき声をすくい上げることが使命』なんていっているけど、販売部数を上げないと経営が安定しない大新聞社は、これがもっとも不得意なんだ、実は。だから標語にしているのかな」

 PJ佐藤:「『村上ファンド事件』を大々的に取り上げるのは、村上さんが有名人だからという側面もあるよね。社会的意義という面と共に。村上さんやホリエモンはメディアに露出して成長したんだけど、その一方でメディアもそれを取り上げることで儲けていたんだ。主義主張だけの論理ではないんだね、マスコミも。だけど、産経新聞の右翼路線はどうなんだろう、立派な主義主張があるモノ言う新聞だ。系列のフジテレビのエンターティメント(エンタメ)路線とはまったく関係ないように思えるけど」

 PJ小田:「そういうふうに主義主張、イデオロギー的に考えるからさっぱり分からないんだよ。主義主張を前面に押し出すことで、営利的な顔を隠しているのかもしれないよ。フジサンケイグループ全体が『マーケティング路線』と考えるとすぐ分かる。これは(上)(下)の2回にわたって書いたよ。要約すれば、朝日新聞や読売新聞などの強敵に囲まれる中、産経新聞は一定のニーズのある所を狙ったニッチ戦略を取る必要に迫られる。日本国内にも右よりの強硬路線を好む人々もいて当たり前。そのニッチなニーズに合わせたのが産経のマーケティング路線だ。朝日や読売など発行部数が多くなると、最大公約数的な紙面展開になってしまう。裏返せば、産経のようなことはできないんだ。フジテレビもエンタメに特化することで、生き延びようとしているんだ。これはどのマスメディアでもそんなに変わらないよ。経営の論理から見てみてよ」【つづく】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小田 光康

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