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【書評】「症例A」多島斗志之著、角川書店

【PJ 2006年06月07日】− 内容は多重人格の話。それとは別の話も含まれるが、あくまでも付随的なもの。多重人格を否定していた精神科医が、実際に多重人格の同僚と出会い治療を決心する。多重人格の説明が大部分を占めている。普通なら医学的な話しは漢字がいくつも続いて、一つ一つ単語をかみ締めて読み進まねばならないが、本著は違った。多重人格についての話は理解しやすく、しかもすらすらと読めた。

 解離性同一性障害(多重人格)と精神分裂症、境界例。いままで、ほとんど聞いたことも見たこともない漢字が並んでいても、ほとんどつまずくことなく読み進めることができた。これは著者の広い知識を駆使して、難解なことをさまざまな角度から説明してるからだ。著者の精神医学の知識は、巻末の2ページ半にも及ぶ参考文献リストからも伺える。

 ひとつの小説を書くため、ここまで精神医学を学ぶ必要があるのかと思ったが、あいまいな部分の多い精神医学を扱うのだからこそ、しっかりとした見識が不可欠だったのだろう。また、多重人格を扱っているため、ひとりの人物の中に多くの人格が現れる。どの人格についても、その特徴が事細かに綴られていたことが、この本の読みやすさにもつながっている。

 欲を言えば、登場人物の多重人格は幼少期の虐待が原因とされていたが、それをもっと具体的に説明してほしかった。さらに、分量的な問題があったのか、著者がこれで満足したのかわからないが、結末があまりにも中途半端な印象を受けた。続きがあってもよかったとも思う。【了】

■関連情報
ライブドアブックス:多島斗志之著『症例A』、角川書店
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 安田 モモコ【 東京都 】
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