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止まれ!敵意の伝染

【PJ 2006年06月06日】− 小さな不満が原因を探す。心の中と外に。中に向かえば、自分の生い立ちや自分の身体的、能力的不満につながり、両親からの遺伝や育った過去に原因を求める。両親がこうだったから、今の自分は不幸なのだという方向だ。内なる外といっても良いかもしれない。

 欲望渦巻く現代では、テレビが自分の不運をいやと言うほど見せてくれる。テレビに出てくるタレントは、きらびやかに生きているように見え、大金持ちは何億の金を努力もなしに一瞬で稼ぎ出すように見える。外に向かえばこうなる。

 小さな不満は、まかれた種や植物の根っこのように育ってゆく。不満は隣に不満の種をまきながら、伝染してゆく。不満の先端は、植物の根と同じように、細く頼りなく見えるが、成長の力はもっとも強い。鬚根は不満から栄養をもらいながら、広がるところがないか探しながら伸びてゆく。子どもの不満が兄弟に伝染する。敵意となって友達に向かう。親の不機嫌が子どもに伝染し、敵意はどこかにはけ口を求めて、根をはろうと探す。一つの敵意が二つ、三つに増えてゆく。

 ほとんどの鬚根は、誕生日のお祝いや、友達同士の遊びの中に、ふとしたことで消えてゆく。伸びる鬚根が何か良い火花に当たって、燃え尽きることがほとんどだ。しかし、何か良いことが無かったら、不幸と、敵意の連鎖は、ますます大きく根をはってゆく。子どもの時からの不幸の連続は、時として、大きな殺意に発展したりする。

 日経新聞の私の履歴書で、遠藤実さんの生い立ちを連載しているが。赤貧洗うがごとき子ども時代の両親のこと、自分のことを書いている。母親の財布から金を盗んで、小さな欲望を満たそうとして、父親に交番に連れて行かれると、かえってお巡りさんに慰められた。失意の河原で聞こえてきたメロディーに感動した。その後、メロディーが次から次へと出てくる話が続くのだが、彼はその才能によって、不幸をバネとして、有名な音楽家となった。

 これは、誰もができることではない。だが、自己破産して生活保護を受けていた秋田の不幸な子どもの親は、こういうチャンスがなかった。腹を痛めた子どもの不審死を捜査した警察に対する敵意は、子ども時代から根をはった固まりから肥大したものだ。その矛先が、小さな子どもに向かっていったのだ。

 豊かな経済の中で、自殺3万人現象が続くのも、こうした敵意が自分に向かい、失意やあきらめとなって、そこから回復することができないからだ。一方で、ぎりぎり生活をしながら、たくましく生きているホームレスの人たちがいる。亡くなった今村監督が描いた人間のおもしろさでもあるが、現実になるとやりきれない。せめて、敵意を少しでも枯れさせるために、何かを持たないといけない。子どもにとっては、親身の一言や笑顔であるかも知れないし、パンドラの箱に最後に残った希望かも知れない。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 安居院 文男【 東京都 】
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