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一世紀の歴史誇る「阪神電鉄」、その起業から上場まで

2006年06月02日09時19分 / 提供:PJ

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阪急ホールディングス(旧阪急電鉄)は5月29日、臨時取締役会を開き、阪神電気鉄道株の株式公開買い付け(TOB)の開始を決議したことを発表した。TOBは1株930円で、発行済み総数の45%を目標に買い付けるというものだ。阪神電鉄も同時に開いた臨時取締役会で、阪急ホールディングスが決議したTOBへの賛同を決議した。さらに、阪急と阪神はTOBの成功を条件に、経営統合することも決議した。

 経営統合の方式は、阪急ホールディングスの傘下に阪神電鉄を収める方式で、TOBによる阪神株の買い付け後、株式交換によって10月1日付で阪神電鉄を完全子会社化する。株式交換比率は、阪神株1株につき阪急株1.4株を割り当てる。持ち株会社の社名は「阪急阪神ホールディングス」で、子会社となる阪神電鉄は上場廃止となるという。阪急ホールディングスがTOBに成功し、阪神電鉄が上場廃止になると、阪神電鉄は創業100年の歴史に幕が閉じることになる。一世紀前に創業した阪神電鉄が上場に至るまでには、どのような経緯があったのだろうか。また、当時、一株あたりの株価はいくらだったのだろうか。阪神電鉄の起業から上場するまでの経緯について、「阪神電気鉄道百年史」(発行:阪神電気鉄道株式会社:2005年12月27日発行)に、次のように記されている。

「神阪電気鉄道」
 1893(明治26)年12月27日、神戸の実業家5人が発起人となり、軌道条例に基づき、「神阪電気鉄道」(資本金30万円)の社名で、神戸―尼崎間の電気鉄道敷設特許を出願した。大阪側の終点が、尼崎とされたのは、1893年12月12日に、尼崎―池田間が開業した摂津鉄道に接続することとしたからである。しかし、当初から、目論みとしては、神戸―大阪間の電気鉄道を計画しており、短縮された区間については、「追って、計画を立て、尼崎町より大阪市まで、線路の延長の見込み」とされていた。

 発起人5人のうち、2人は神戸市会議員・商工会議所会員、2人は酒造業などで実業グループを形成していた酒造業の番頭格、1人は土木請負業を本業としていた人が、神戸市の市街鉄道調査委員会のメンバーになり、会社設立時には取締役に就任した。

 翌年の1894(明治27)年3月12日、さらに、5人の発起人が追加申請された。追加申請された5人の発起人のうち、1人は衆議院議員で、神戸の政財界における重鎮な立場であった人で、阪神電鉄の成立後は筆頭株主・取締役として経営を助けた。さらに、同月22日、神戸の貿易商ら14人の発起人が追加され、社名を「神阪電気鉄道から、「摂津電気鉄道」に改称することを決定した。続いて、同年11月24日、発起人らで発起人会を開き創立規定を制定し、12月10日には、神戸市花隈町に創立事務所が開設された。

 翌年の1895年5月31日には、さらに、造船所関係者ら6人が、新たに「摂津電気鉄道」の発起人に加わり、発起人の人数は合計30人に達した。

「神阪電気鉄道」(摂津電気鉄道)の計画
 発起人らによる神阪電気鉄道の計画は、1)4フィート以内の軌間として、軌道を在来の道路上に敷設する。2)やむをえない場合は、単線とする。3)電圧500Vの架空線式とする。4)客車は、「長3間以内、幅6尺以内とし、通常16人の乗客を乗せ、混雑の時においては、28人までを乗せるもの」を導入する。5)時速15マイル以内の運転とする。6)客車の運転が、終わった夜間には、貨車を走らせるなどを内容としており、全体として資本金30万円で、まかなえるような簡易、軽便な電気軌道のレベルにとどまった。

 また、収支については、1年間の収入を旅客で3万5040円、貨物で1万7520円、合計5万2560円と見積もり、これに対して、支出は人件費が7200円、発電に要する石炭代が1万5200円、積立金が3000円などで、配当金は2万1000円(配当率7%)を予定していた。

「坂神電気鉄道」
 神戸の実業家が中心となって発起された「神阪電気鉄道」(摂津電気鉄道)の出願から約1年半後の1895年5月30日、大阪財界の大御所、財界の著名人らで、資本金120万円の「坂神電気鉄道」が発起された。同年6月、さらに、造船所関係者ら9名の発起人が追加された。

「坂神電気鉄道」の計画
 「坂神電気鉄道」が予定したルートは、大阪府西成郡を起点とし、尼崎、西宮、御影などを経て、神戸市小野浜に至る路線であった。「坂神電気鉄道」の計画を具体的にみると、例えば、「客車は長さ18尺、幅7尺(中略)定員は50名とする」と、「摂津電気鉄道」よりも車両の幅が1尺ほど広く、定員は2倍近いものを想定していた。

 「坂神電気鉄道」の計画は、予算面では、新設軌道の建設にともなう土地買上費(28万円)、土木工事費(10万円)、橋粱架設費(11万6000円)などの費用によるところが大きかった。収支については、年間収入を25万円、支出総額を15万400円と見積もり、差し引き9万9600円の利益を想定していた。収入の内訳は、旅客運賃が、官設線の6割に相当する1マイル6厘として15万円、貨物運賃が9万9500円、雑収入が500円であった。

 「坂神電気鉄道」の計画は、収入ベースで、「摂津電気鉄道」の3倍ほど大きく、また、資本金に対する利益率も8.3%と、単純な比較はできないものの、「摂津電気鉄道」の予定配当率を上回っていた。

計画の一本化
 1893(明治26)年12月に登場した「攝津電気鉄道」は、発起人30名をかかえる大集団となっており、また、1895年5月に出願を行った「坂神電気鉄道」も、19人の発起人を数えた。こうして、大阪―神戸間の電気鉄道敷設は、「摂津電気鉄道」と「坂神電気鉄道」という2つの発起人グループが、特許の下付を争う形となった。

 両者合計49人に達した発起人の中には、例えば、造船所の有力者が、二手に分かれて、発起人に加わるなど、相互に関係のある者が含まれていたばかりではなく、大阪、神戸の財界における指導者的立場の人間が、少なくなかった。そのため、両発起人グループの間で、統一の機運が高まり、1896年7月には、合併契約が結ばれるようになった。会社設立の実務で先行していた「摂津電気鉄道」に、「坂神電気鉄道」が、事実上、吸収された形であり、社名についても、「摂津電気鉄道」を用いることとされた。

「阪神電気鉄道」株式会社設立で総会の開催
 1897(明治30)年6月29日、軌道敷設特許を得た「摂津電気鉄道」は、会社設立に向けて、早速同年7月31日に、発起許可の申請を行い、同年9月21日に、その許可を得た。これ以降、株主の募集など、株式会社「摂津電気鉄道」の創業総会が、神戸市で開催された。

 創業総会では、1893年12月の出願時に作成された仮定款を、「攝津電気鉄道」の定款として確定したほか、これまで、発起人に要した1万4760円の費用を、創業費として計上することなどを決議した。役員の選出については、計画段階において、神戸側、大阪側、それぞれの発起人から5人ずつの役員が選ばれた。この原案は、満場一致で承認された。

 1899年5月30日、設立準備の整った「攝津電気鉄道」は、農商務大臣に対して、設立許可の申請をなし、6月12日に、これを免許された。ここに、「阪神電気鉄道」に直結する前進会社として、「摂津電気鉄道株式会社」の設立をみたのである。阪神電鉄では、現在、この設立免許日を、創立記念日と定めている。

 「摂津電気鉄道」という社名は、神戸側の発起人によって、命名されたもので、大阪側の発起人が計画した「坂神電気鉄道」を合併した後も、この名称が用いられていた。ところが、設立許可から約1カ月後の1899年7月7日、臨時株主総会が開かれ、「摂津電気鉄道」という社名を変更して、「阪神電気鉄道」に改めることが、決議された。

「阪神電気鉄道」という社名について
 「阪神電気鉄道」とは、大阪側の発起人における「坂神電気鉄道」という名称と、漢字こそ異なるが、読みも意味もまったく同一であった。この社名変更は、「別段、深き理由あらず、唯、鉄道敷設の箇所を、広く、何人にも、分かり易いように、かつ、起終両点を示すに過ぎず」とも言われるが、電気鉄道の敷設特許を得たことで、神戸側の役割は後退し、大阪側のイニシアチブが強まったことを示しているといえよう。

「阪神電気鉄道」の株式上場
 阪神電鉄の株式は、1902年3月、東京、大阪、名古屋、神戸の各株式取引所に上場した。大阪株式取引所における上場当時の株価は、一株あたり、12円50銭の払込に対して、最高20円、最低14円80銭で取引されていた。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 新納 直子

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阪神  起業  市会議員  阪急電鉄  命名  
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