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【書評】安部司著『食品の裏側』

【PJ 2006年05月28日】− ご家庭で、地域で「食育」を実践する前に是非読んでほしい一冊。今の「食」を支える社会構造が噛み砕いて解説されている。平成17年7月に食育基本法が施行され、平成18年3月には食育推進基本計画が決定された(文部科学省)。今後5年間、食育を国民運動として取り組む目標であるが、日本の危機的な状況にある「食」の背景にあるもの、とりわけ食生活の問題は教育分野を遥かに超えた社会問題である。『食品の裏側』は「食」を取り巻く社会の現代病を捉えているという点で興味深い。

 結婚して教わった義母の家庭の味。醤油・酒・みりんが基本の伝統の和食の味。義母の台所には何種類もの醤油が並んでいた。料理によって使う醤油が違うのだ。おふくろの味は奥が深い。私にもできるだろうか。外食中心で長年仕事をしてきた私にとって、家庭で子どもたちの食事を作る日々は失敗の連続だが、せめて食材には気を配りたいと「食」への関心を高める。仕事の合間の慌ただしい買い物、食品の原材料表示を凝視する。驚いたのは、原材料の欄が聞き慣れない言葉で溢れていることだ。現代の食品はどうなっているのだろうか。
 
 この本はかつて食品添加物の商社に勤め、加工食品の開発に精力を注ぎ、数多くの添加物の産物を世に送り出した著者が語る、食品製造の舞台裏だ。以前は添加物に心血を注いだセールスマンが、今は「食」の情報公開を求めて執筆し、講演活動を続けている。現代社会は添加物が蔓延している。加工食品の原材料表示は添加物の猛威が一目瞭然である。家庭の調味料は「ニセモノ」にすりかわっている。昔ながらの丸大豆醤油も、今店頭に並ぶ商品の多くは醸造醤油、つまり醤油風調味料である。何よりもショックだったのは義母が使い分けていた醤油、その殆どが醤油風調味料だったことだ。家庭の味の継承というがこれも怪しくなってしまった。

 また食品添加物の猛威は子どもたちの味覚破壊に及んでいる。食品に蔓延するうま味成分、塩、化学調味料、たんぱく加水分解物。ジュースやお菓子の甘味成分、ブドウ糖果糖液糖。とくに「たんぱく加水分解物」と「ブドウ糖果糖液糖」、この二つは子どもたちに与えたくないものとして講演でも呼びかけている。

 この本は食品添加物を非難することが目的ではない。食品添加物のメリットも忘れてはならない。今の食品業界やマーケット、外食産業、家庭のお財布事情そして私たちが享受している便利な生活が、食品添加物の使用を前提に成り立ち相互依存している、その現実を伝えるのが一つの目的だ。働く母親として私は実感している。今の食品添加物が、夫との家事の分担が期待できない共働き家庭の食卓を何とか支えていると。そのうえで、食品添加物とどう付き合うかを意識し、子どもの味覚の衰えに対する問題意識を持ち、家庭の生活を見直そうと語っている。「食」の裏側、失われつつある大切な何か。豊かな社会を破綻させないためにも、私たちは何を得て何を失っているのか、そのことを考えるきっかけになってほしいという著者の切実な想いが込められている。【了】

■関連情報
ライブドア・ブックス:安部司著、『食品の裏側』
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 高橋 泉【 佐賀県 】
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