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市民ランナーよ、マラソンは『愛』で優勝を狙え(下)

2006年05月21日08時52分 / 提供:PJ

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市民ランナーよ、マラソンは『愛』で優勝を狙え(下)
北海道マラソンで、『のり子大好き』のゼッケンをつけて、女子優勝者と併走した平沢直樹さん。(撮影:穂高健一)
(上)からのつづき。2001年に平沢直道さんが所沢のデパートで、偶然に知り合ったのが、のり子さん(妻)だった。

 交際が始まって、彼女がはじめて応援にきてくれた大会で、22回チャレンジして一度も成しえなかったフルマラソン初優勝ができたのだ。それは渡良瀬遊水地マラソンだった。タイムは2時間31分04秒、6年半ぶりの自己新。その後は優勝街道を突っ走りはじめたから、のり子さんはまさに勝利の女神だった。翌2002年も1勝、2003年が5勝、2004年が5勝、2005年が3勝、2006年はすでに1勝している。

 2004年は優勝回数が多いが、平沢さんの人生で忘れられない年になった。悪性肉腫(ガンの一種)で闘病中の母親が末期状態となった。『息子の優勝がいまの一番の楽しみ』といい、だれよりも応援してくれていた。母親を励ますためにも、優勝したときには記者たちに、「私の所属名は『母さんもガンに克て』というチーム名で載せてください」とたのんだという。新聞を見て母親は喜んでくれたと語る。

 たまには妻にもサービスをしないと…、と北海道マラソンで「のり子大好き」というゼッケンをつけた。「今度は母親がヤキモチを焼きました。女性はむずかしいですね」と平沢さんは苦笑する。病床の母の願いは、「地元で勇姿をみせてほしい。遠くの大会へは身体が持たなくて応援にいけないから、応援にいける地元の大会に出場して」というものだった。

 自宅近くがコースになっている所沢シティマラソンはハーフマラソンだが、母親の要望に応えられる大会だった。平沢さんは所沢小学校OBという所属名で、エントリーした。「母は満足そうでした」。ところが大会開催日の前日、12月4日に死去した。

 失意の平沢さんは母親の願いを胸に出場した。優勝の表彰状を手向けにもたせてあげたいという願いが力となった。優勝のゴールを切ると、平沢さんは感極まって突っ伏して泣いたという。一週間後には招待選手としてホノルルマラソンに出かけた。看病の不眠、葬儀疲れ、さらに精神的なダメージを乗り越え、日本人男子2位。総合男子10位という好成績だった。

 小学生のころ肥満体少年が、高校時代に先輩女子部員への恋心から市民ランナーとなった。やがて妻となった『のり子』さんとの出会いで、フルマラソンの優勝。病身の母からの励まし、それに応えるために優勝回数を積み重ねてきた。

 「マラソン人生は、女性がらみ。動機とはそんなものですね」という。親子の愛、夫婦愛、先輩と後輩のほのかな愛。それらが競技に集中させる原動力のようだ。

 渡良瀬川遊水池マラソンは四連覇がかかっていたが、招待されたアテネマラソン(アテネ五輪と同じコース)に出場した。アテネは2時間24分55秒で、日本人で1位だった。金メダルの野口みずきさんよりも速いタイム。野口さんは猛暑で、平沢さんのときは外気温が20度前後だから気温が違っていた、と控えめに話していた。

 平沢さんは2時間20分を切るという、ベストタイムは目標にしていません、とはっきりと言い切る。走ることが仕事の実業団は1年間に80人くらい、20分を切る人が出る。しかし、実業団のランナーは限界を狙うために、大会には数多く出らない。

 「市民ランナーには制約がありません。優勝をくり返せば、多くの人の心に残る。とくに市民ランナーたちの心に残るランナーになりたい。いろんな夢のかたちをつたえていきたい」。平沢さんは四連覇の偉業を目標に、洞爺湖マラソンにむけて出発した。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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