新聞の「特殊指定」が言論の自由を滅ぼす
2006年05月15日12時33分 / 提供:PJ
新聞紙面ではこのところ、新聞の「特殊指定」維持を訴える記事がはんらんしている。「特殊指定」という用語だけが一人歩きしている感もある。そもそも「特殊指定」とは何か、はたして「特殊指定」を維持することと、言論の自由を担保することに因果関係があるのか、貴族的な体質を持つ新聞業界に「特殊指定」される資質があるのか、後出しジャンケン的な「特殊指定」関連報道に問題はないのか、そして言論機関としての新聞社に政治権力からの独立はあるのか−−などを考えていきたい。
大雑把にいえば、新聞の「特殊指定」とは、差別価格販売や定価割引、新聞社が実際の販売部数以上を販売店に押し付ける、いわゆる「押し紙」を禁止するきまりを指す。これは大戦直後に、公正な競争を阻害するおそれがあるとして定められた。ここでみなさんに考えていただきたい。新聞を割引販売することが今現在、はたして公正な競争を阻害する要因となるのだろうか。逆に、定価販売を定めることで公正な競争を阻害していると考えられないだろうか。長期購読契約で割引があるとすれば、読者層を増やしたり、新聞社経営の安定化を図ることにつながるのではないか。
新聞社側の「新聞は一般商品と同列に語られるべきではない」という主張の根拠はどこにあるのだろう。公共財、もしくは公共性について語ったものだと思われる。ただ、新聞の内容について、つまりジャーナリズムについては公共性の高いコンテンツであるとはいえるが、それを伝えるメディアとしての新聞が、イコール公共財とは絶対的にはいえないのである。特殊指定が撤廃されたからと言って、言論の自由を担うジャーナリズムのすべてが棄損されるわけではないのだ。テレビやラジオ、そしてネットなどメディアが多様化した現在、むしろ、新聞だけを特別扱いする理由はどこにあるのだろうか。「新聞イコールジャーナリズム」というレトリックに騙されてはいけない。
これまでもお伝えしてきたが、新聞社の経営内容は極めて不透明だ。「情報開示」と「説明責任」を大々的に主張している新聞社が、自らに関してほおかむりすることは誰も納得できないだろう。特殊指定を主張する前に、コスト削減などの自助努力がなされているのか疑問を抱く。財務的基盤がしっかりしていれば、定価販売を定める特殊指定など必要ない。特殊指定が新聞社の放漫経営を助長させる道具になってはならない。そもそも、読者から新聞への絶対的な信頼・支持があることを新聞社が主張するならば、特殊指定など必要ないはずだ。
先日、東京拘置所前で堀江貴文被告の保釈についてメディアの取材風景を取材した。駅から徒歩5分の場所に高級ハイヤーがずらりと並んでいた。新聞社を往復するには電車が一番速くて便利な場所にだ。都心にある新聞各社から電車で往復1000円とかからない場所に一日中、高級車を待機させておく体質に、市民感覚があるとはとうてい思えない。新聞メディアは残念ながら、市民社会に対峙する貴族的な権力に成り果ててしまったようだ。この一件を取り上げても、新聞業界が特殊指定される資質があるかは疑わしい。
このところ、特殊指定撤廃を意図する公正取引委員会の竹島一彦委員長のインタビュー記事を目にする機会が多くなってきた。新聞業界はこれまで、いわゆる文化人や政治家を巻き込んで「特殊指定」撤廃反対の報道を繰り返してきた。その結果、本当のところはわからないが、新聞紙面では「特殊指定」撤廃反対があたかも世論になったように報じている。新聞は公取委の外堀を埋めるまで、公取委の主張を取り上げることはなかった。この後出しジャンケン的な報道の仕方には大きな問題がある、フェアでない。この一方的な報道の影響からか、新聞紙面では竹島委員長が孤立化してしまった感がある。
5月15日付朝日新聞朝刊に「特殊指定」問題が大きく掲載されていた。そこで少々、気に掛かったことがある。「全政党が廃止反対表明」との大見出しである。特殊指定の問題については朝日新聞のみならず、撤廃反対を表明する新聞社すべてが当事者といえる。「独立不羈」や「客観報道」、「権力の監視」を掲げる新聞社が政党と結託する姿には、首をかしげざるを得ない。政治家にとって、この機会に新聞メディアに恩を売っておこうという魂胆がみえみえだ。このありさまでは、新聞の「特殊指定」が言論の自由を滅ぼすことにつながりかねない。【了】
■関連情報
理性欠く「新聞特殊指定」報道
新聞の再販制度と特殊指定はホントウに必要か?
公正取引委員会HP、特殊指定の見直しについて
大雑把にいえば、新聞の「特殊指定」とは、差別価格販売や定価割引、新聞社が実際の販売部数以上を販売店に押し付ける、いわゆる「押し紙」を禁止するきまりを指す。これは大戦直後に、公正な競争を阻害するおそれがあるとして定められた。ここでみなさんに考えていただきたい。新聞を割引販売することが今現在、はたして公正な競争を阻害する要因となるのだろうか。逆に、定価販売を定めることで公正な競争を阻害していると考えられないだろうか。長期購読契約で割引があるとすれば、読者層を増やしたり、新聞社経営の安定化を図ることにつながるのではないか。
新聞社側の「新聞は一般商品と同列に語られるべきではない」という主張の根拠はどこにあるのだろう。公共財、もしくは公共性について語ったものだと思われる。ただ、新聞の内容について、つまりジャーナリズムについては公共性の高いコンテンツであるとはいえるが、それを伝えるメディアとしての新聞が、イコール公共財とは絶対的にはいえないのである。特殊指定が撤廃されたからと言って、言論の自由を担うジャーナリズムのすべてが棄損されるわけではないのだ。テレビやラジオ、そしてネットなどメディアが多様化した現在、むしろ、新聞だけを特別扱いする理由はどこにあるのだろうか。「新聞イコールジャーナリズム」というレトリックに騙されてはいけない。
これまでもお伝えしてきたが、新聞社の経営内容は極めて不透明だ。「情報開示」と「説明責任」を大々的に主張している新聞社が、自らに関してほおかむりすることは誰も納得できないだろう。特殊指定を主張する前に、コスト削減などの自助努力がなされているのか疑問を抱く。財務的基盤がしっかりしていれば、定価販売を定める特殊指定など必要ない。特殊指定が新聞社の放漫経営を助長させる道具になってはならない。そもそも、読者から新聞への絶対的な信頼・支持があることを新聞社が主張するならば、特殊指定など必要ないはずだ。
先日、東京拘置所前で堀江貴文被告の保釈についてメディアの取材風景を取材した。駅から徒歩5分の場所に高級ハイヤーがずらりと並んでいた。新聞社を往復するには電車が一番速くて便利な場所にだ。都心にある新聞各社から電車で往復1000円とかからない場所に一日中、高級車を待機させておく体質に、市民感覚があるとはとうてい思えない。新聞メディアは残念ながら、市民社会に対峙する貴族的な権力に成り果ててしまったようだ。この一件を取り上げても、新聞業界が特殊指定される資質があるかは疑わしい。
このところ、特殊指定撤廃を意図する公正取引委員会の竹島一彦委員長のインタビュー記事を目にする機会が多くなってきた。新聞業界はこれまで、いわゆる文化人や政治家を巻き込んで「特殊指定」撤廃反対の報道を繰り返してきた。その結果、本当のところはわからないが、新聞紙面では「特殊指定」撤廃反対があたかも世論になったように報じている。新聞は公取委の外堀を埋めるまで、公取委の主張を取り上げることはなかった。この後出しジャンケン的な報道の仕方には大きな問題がある、フェアでない。この一方的な報道の影響からか、新聞紙面では竹島委員長が孤立化してしまった感がある。
5月15日付朝日新聞朝刊に「特殊指定」問題が大きく掲載されていた。そこで少々、気に掛かったことがある。「全政党が廃止反対表明」との大見出しである。特殊指定の問題については朝日新聞のみならず、撤廃反対を表明する新聞社すべてが当事者といえる。「独立不羈」や「客観報道」、「権力の監視」を掲げる新聞社が政党と結託する姿には、首をかしげざるを得ない。政治家にとって、この機会に新聞メディアに恩を売っておこうという魂胆がみえみえだ。このありさまでは、新聞の「特殊指定」が言論の自由を滅ぼすことにつながりかねない。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康
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