バンダイナムコゲームス 中村勲氏
 プレイステーション3のロウンチタイトルでありながら、オンライン対戦に対応した「リッジレーサー7」。その開発者であるバンダイナムコゲームス中村勲氏とゲームジャーナリストである新清士のパネルトークスタイルで、「リッジレーサー7」のオンライン開発に関する対談が行われた。

 最初に、プレイステーション3を使ってのオンラインのデモンストレーション。ゲームのシステム紹介を、中村氏が直接解説。
 デモンストレーションの後には、中村氏のレースゲーム開発に関する経歴を紹介された。中村氏が最初にレースゲームの制作に関わったのは、1991年に発売されたアーケードゲーム「ファイナルラップ2」からだという。「ファイナルラップ2」では、最大8人での通信対戦を可能にしており、通信形式も独自に開発。接続方法も、ホストとローカルといった接続方法でなく、すべてのマシンを等価で扱う接続方法を採用していたという。また、通信速度は、1Mbpsぐらいだったという。
 「ファイナルラップ2」の通信部分で特徴的なのは、各マシンをつなぐ接続ケーブル。当時は、まだ通信の環境も統一されておらず、また、完全なる独自仕様だったため、オーディオの赤と白のケーブルが採用されたというのだ。このケーブルの採用理由は、壊れた時に近所の電気屋で買えることができるからだという。独自仕様だった場合、取り寄せなどを考えるとゲームセンターの営業を妨げる結果を招くので、その損失を防ぐのが目的だとか。
 また、「ファイナルラップ2」制作には、さまざまな部分で「リッジレーサー7」にまで活かされている要素があるという。例えば、多人数プレイのときのコースの選び方は多数決にすることや、順位が下がるほど速度が上がるアシスト機能などがそれに当たるという。

 「ファイナルラップ2」の時は、5、6名の開発者で行われており、中村氏もプランニングやコースのデザインプログラムなど幅広い業務を担当していたという。一方の、「リッジレーサー7」では、ピーク時に最大80から90人程度までのスタッフが所属。プログラマーが全体3割を締め、中村氏が担当したプロジェクトのなかでも、過去最大規模だったそうだ。

 「ファイナルラップ2」のときは、その時々で声を掛け合い、打ち合わせがスタートしたというが、「リッジレーサー7」の時は、職種ごとに定例の進捗報告を行い、会議室一杯になるほどのスタッフを管理していたという。

 また、スタッフが、大所帯になることでいちばんむずかしいのは、「完成系の共有」だと中村氏。「ファイナルラップ2」の時には、スタッフの少人数だったため、完成系の共有も容易にできたが、90名近いスタッフの関わった「リッジレーサー7」の場合は、「ファイナルラップ2」の時のような、直接のコミュニケーションが難しい。そこで、利用されたのが、Webを使ってのデータ共有である。企画立案時には、掲示板を立ち上げ、スタッフが思い思いの企画案を書くようなことも行われたそうだ。実際に「リッジレーサー7」では、その3分の1が採用され、残りの3分の2は、スケジュールや仕様の問題で、現在も残っているという。
 PSP版、Xbox360版、プレイステーション3版とすべてロウンチタイトルとして「リッジレーサー」シリーズを発売してきた中村氏だが、この偉業が達成できたのも、定例ミーティングなどのスタッフ管理と、不測の事態が起こったときの対処法にあるのではと語っていた。

 「リッジレーサー7」で、中村氏がいちばんこだわったのは、「フルHD、秒間60フレーム」。理由は、「リッジレーサー」シリーズは、操作感がゲーム性にも重要な要素になるためだという。しかし、開発当初は、「フルHD、秒間60フレーム」の目標は、遠い存在だったと明かす。実際に、目標を達成できたのは、東京ゲームショウ2006の1週間ほど前だそうだ。それまでは、プログラムリーダーの「自分には解決方法がみえる」という、長年のセンスと経験を信じ、それを貫いた結果としての「フルHD、秒間60フレーム」なのだとか。中村氏も、この時の経験を「毎日ドキドキしました」と語っていた。

 このような修羅場の時は、直接担当者に話しかけるのでなく、そのスタッフのリーダーに確認し、「信用して任せる」というスタンスが大事だと中村氏。
 それに対して、「中村さんは、ロウンチで多くの実績を残して来ていますが、なぜそれができているのかなと考えた時、そこには中村さんのパーソナリティによる部分が多いのではないかなと思うのです。やはり、リーダーは楽天的な方が良いのでしょうか?」と新氏が質問。それに対して、「厳しい現実を見ながら、楽しい空気を作るのはリーダーの仕事だと思います。やはり、ニコニコしながら仕事のできる環境を、計画的にすることが大事だと思いますね」と、独自のリーダー論を披露した。

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