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年金暮らしの老女にとって、お布施15万円とは

2006年03月16日08時40分 / 提供:PJ

pj
名古屋市郊外に暮らす女性、Aさん(75才)は、最近浮かない顔をしている。それというのも、Aさんはある浄土真宗のお寺の檀家であるのだが、お寺と檀家の集まりの場で、お堂の改修費用にと一軒につき15万円以上のお布施を出すことが決まったのだ。

 Aさんの暮らす土地は、昔ながらの富裕な農村地帯である。大都市近郊のため最近は市街地化が著しく、大方の家は先祖伝来の土地に幾棟もアパートを建てるなどして不動産収益を上げ、ますます富み栄えている。ところがAさんは、自宅以外には特別な土地財産もない。17年前にサラリーマンの夫を亡くし、遺族年金だけで暮らしている。息子は母親との同居を嫌い、都心のマンションに別に世帯を持っている。Aさんは、病気のため就職も結婚もできない娘Bさん(46才)と同居していて、乏しい遺族年金ではふたりの生活を支えてゆくのがやっとだ。けれども檀家の集まりを牛耳っているお大尽の長老たちは、Aさんのような家庭の事情など考慮しない。集まりで決まったことは守ってもらわねば困るという。

 娘のBさんは年老いた母に、「そんな15万円以上もの多額のお布施はうちは無理して払わなくともよい。払わなくとも仏様は罰は当てない」と諭すのだが、Aさんは「払わないと、うちのお寺の住職は、お経を頼んでも詠みにきてくれないとか、嫌がらせをするに違いない」と悩む。

 それはあながち老人の被害妄想ともいえない。住職は黒々とした髪をいつもポマードでこってりと固めて、趣味はカラオケとおまんじゅうという50年配の男 だ。ある日、父親の祥月命日に住職がお経を読みに来たとき、娘のBさんは用事で忙しくしており接待のゆとりがないので、仏間にお布施とおまんじゅうを前もって置いて二階へ引き上げた。住職は二階には声は届かないだろうとたかをくくってか、お経を詠むのをさぼって、お布施とおまんじゅうだけを懐に入れると、さっさと帰ってしまったことがあるという。そんな生臭坊主だから、お堂改修の布施を出さなければ、今後付き合いが難しくなることは必至だろうとBさんも納得する。

 そのようなお寺とはきっぱり縁を切ってしまえ、ということもできない。というのは、Aさんの夫はなくなる前に、お寺の敷地内にお墓を新しく建てたばかりで、縁を切ろうとすれば、お墓の引っ越しなど無用な費用がかさむからだ。いわばお墓を質に取られているようなものである。

 Aさんの住む家は築50年の老朽家屋だ。いずれ必ず来るといわれる東海大地震に備えて、耐震補強を施しておく必要があるとかねてから思っているの だが、あいにく何百万もかかるその費用に当てる金がない。けれども、お寺の改修工事の15万円のお布施は、なけなしの貯金をおろして出そうという。大地震がきたとき、Aさんとその娘は潰れた老朽家屋の下敷きになって死んで、一方お寺のご仏像はぴかぴかのお堂に納まって罹災を免れるという図も十分考えられよう。

 浄土真宗の開祖・親鸞聖人は、「念仏は先祖供養のためにあるのではない」と明言されている。けれども現代の真宗寺の一部は、宗祖の精神を離れて、すでに単なる葬式産業と化している。お堂の改修もひっきょう葬祭業としての見栄えをよくするために過ぎないのではないか。

 巷では、悪徳新興宗教による霊感商法などによって、判断力の衰えた老人が金銭的被害をこうむる事例が少なくなく、消費者生活センターなどによって警告さ れている。けれども、いわゆる伝統仏教による布施という美名に名を借りた収奪は因習の奥深くにひそんだまま、おおやけに指弾を浴びることはない。後者の被害を受ける老人たちをいったい誰が救うのだろうか。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 

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