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パリから消えた芸術品が、日本で復活

2006年03月10日12時53分 / 提供:PJ

pj
パリから消えた芸術品が、日本で復活
パリジェンヌが憧れる、華麗なメタルビーズバッグ。日本で復活させた倉橋佳子さん(右)。高輪プリンスホテル『貴賓館』にて。(撮影:穂高健一)
1900年頃、金属製ビーズで織られた、メタルビーズバッグがパリ社交界の貴婦人たちの間で流行した。たちまちヨーロッパを風靡した。極小の穴を開けられるメタルビーズを作れる職人がいなくなると、店頭から姿を消してしまい、幻のバッグとなった。1973年、一人の日本人女性がパリ市内の骨董品屋で、神秘な輝きのメタルビーズバッグを見つけた。バッグに魅了された倉橋佳子さん(当時40歳)は夫の仕事の関係でパリに住んでいた。滞在期間は一年余りで、満足にフランス語が喋れなかった。身振り、手振りでそれを買い求めたのだ。

 帰国後の倉橋さんはメタルビーズバッグをタンスに仕舞い込みながらも、時々眺めていた。みずからの手で幻のバッグを織りたいと、取り組みはじめた。ガラス製と違い、微小の穴が開いた金属製ビーズとなると、世界中さがしても入手困難だった。そのうえ約6万個のビーズを使う織り方もわからない。事業家だった夫の支援を受け、極小の金属ビーズが作れる工作機械の発注からはじまった。そこからも試行錯誤と苦労の連続だった。みずから織り機を開発した。やがてメタルビーズバッグの復活に成功させた、倉橋さんは1981年に銀座和光で個展を開いた。それが倉橋さんのデビューだった。

 2005年11月、倉橋佳子さんはパリ市内の有名な『ホテル・プラザ・アテネ』で4日間の展覧会を開催した。企画をプロデュースしたのが、息子の倉橋智太郎(ちたろう)さん(45歳)だった。展覧会はスポンサーなし、費用はすべて自前だった。フランスからみれば、メタルビーズバッグは発祥の地、100年ぶりに復活し、里帰りしてきたことになる。地元で大きく報道されたことから、パリ市民のみならず各国大使が展覧会にやってきた。美しいデザインから、高い芸術品だと絶賛され、大盛況だった。

 パリにつづいて、3月7日から高輪プリンスホテル『貴賓館』で、『倉橋佳子 パリ凱旋展覧会』が開催されている。サブタイトルは『メタルビーズ〜巴里のかがやき』。北海道や四国からも観賞にきている。会場は小部屋ごとにテーマが決められている。『パリの街』をモチーフにした作品の数々。そこにはルイ十四世時代の長椅子、アンティーク人形、ヴェネチア製のランプなどが背景して演出されている。『音楽の部屋』ではピアノ、トランペットなどが図柄となったバッグが目を引く。音楽の絵柄のバッグは女性にはかなり人気があるようだ。

 「旅」をテーマにしたコーナーではスペイン、ドイツの図柄のバッグがならぶ。さりげなく皮製の旅行カバンが置かれている。京都をデザインした作品の背景には、安土桃山風の屏風画が演出されている。どの部屋も調和がいいし、見ごたえがある。ダイヤを使っているバッグの前では、見入る女性は傍を離れがたいようだ。

 智太郎さんの作品もならぶ。「いまのフランス人はだれも作れません。母が芸術にまで高めて復活させました。この文化的な財産を母の代で終わりたくなかった」と、次世代につなげる使命感をつよく語る。智太郎さんには実際の作り方を聞いてみた。「実物のバッグよりもサイズが1.5倍の図案を書きます」。母親が開発した織り機をつかい、赤、白、黒など多彩なビーズを図案に合わせて一つずつ針と糸で通していく。「バッグひとつに六万個のビーズ。一つでも狂うと、図柄が歪むし、だめになるんです。集中していると、電話も取れません。ときにはビーズがただをこねる日があるんです」という。作品づくりにはことのほかつよい緊張が伴うようだ。

 智太郎さんの妻・潤子さん(37歳)はアートディレクター。10年前に結婚したときから手がけている。「メタルビーズバッグには心から取り付かれてしまう、不思議な魅力があります。自分でスケッチし、色を決め、織るわけですから、嫌になったことは一度もありません。作品が完成したときの達成感が魅力です」と過去に挫折はないという。

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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