(図表)東京の最低生活試算結果(新宿・世田谷・北区モデル比較)

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「25歳で月25万円必要って、贅沢すぎるでしょ?」「いやいや、東京23区に住むには全く必要な額です」「そもそも、都内に住むのが無理。身の丈に合わせて千葉・埼玉でいいのでは」

25歳の独身者が東京都内に住むには「最低25万円が必要」という試算が、インターネット上で賛否両論を巻き起こしている。

「身の丈に合わせて千葉・埼玉でいいのでは」

話題のきっかけになったのは、東京春闘共闘会議と東京地方労働組合評議会(東京地評)が2019年12月18日に発表した「独身の若者が東京23区内で普通の生活をするために必要な金額を試算した『最低生計費調査結果』」だ。

この「25万円」という数字は、新宿、世田谷、北の3区に住む25歳の独身者を対象モデルとして算定した。都内に住む3238人の組合員の生活実態や所持品を調べたうえで、うち411人の若年単身者のデータを元に集計した。

ここで想定する「普通の暮らし」とは、こんな生活だ。

(1)25平方メートルのワンルームマンションに住み、家賃は5万5000円〜7万3000 円(共益費は1000円〜3000 円)。(2)職場(新宿)に電車で通勤(新宿区モデルでは徒歩か自転車で通勤)。(3)冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、掃除機は量販店で最低価格帯のもの。(4)1 か月の食費は男性4万4000 円、女性3万6000 円。朝晩は家でしっかり食べ、昼食は男性がコンビニ弁当(1 食500 円)、女性は昼食代節約で月の半分は弁当持参。ほかに月に2〜3 回の飲み会・ランチ(1 回の飲み会3000 円・ランチ1500 円)。(5)仕事の衣服は、男性がスーツ2 着(2万4000 円)を、女性がジャケット2 着(4000 円)を4 年間着回し、ワイシャツやブラウスは自分で洗濯してアイロンがけ。(6)休日は家での休養が多い。帰省も含め旅行費用が年9 万円。月に4 回、恋人や友人と映画やショッピング(1 回2000 円で月に8000 円)。

こうした生活を維持するために必要な額だが、時給換算はお盆や正月の長期休暇も考慮して月150時間で算出。住居費や食費、生活必需品を積み上げた結果、「新宿区モデル」が一番高く、男性で同26万5786円、女性で同26万2506円、次いで「世田谷区モデル」が男性で25万9471円、女性で25万6191円、一番リーズナブナブルなのが「北区モデル」で、男性で24万9642円、女性で24万6362円という数字になった=図表参照。

現在、東京都の最低賃金は1013円だが、こうした結果から東京地評では、

「東京で若者が普通に暮らすためには少なくとも時給1500 円が必要だ。最低賃金1500円以上への引き上げを目指す運動を進めていく」

と説明している。

インターネット上では「#都内在住単身者25万円必要」のスレッドが立ち、この結果について賛否両論が起こっている。まずは、「25万円必要なんて贅沢すぎる」という意見から。

「収入が低いのに23区内に住もうというのが、どだい無理。市川(千葉)や戸田(埼玉)あたりだと、10分よけいに電車に乗るだけで家賃3割安だよ」「ガイジンさんのように空き家やマンションをみんなでルームシェアをすればいいじゃん。ワンルームよりいいところに住めるよ」「独身寮がある会社に就職すればいいんだよ」「嫌なら青森県か沖縄県で働けよ」「労働組合が頑張って都内に住む人の待遇をよくしたら、ますます東京一極集中が加速してヤバくない? 若者は地方を目指せ!」

すると、地方在住者からこんな反論が――。

「秋田は月26万円必要だぞ。車必須だからな。家賃4万5000円としても車のローン、保険料、ガソリン代込みで月3万円、駐車場代も月5000円かかる」「本当に地方を活性化させたいなら、地方の最低賃金を2000円にしろ。東京に行く奴なんて激減するよ」

「月25万円も必要ない。15万円で大丈夫」の声も

一方で、都内在住者から「月25万円も必要ないよ。もっと安く済む」という指摘も意外に多かった。

「私、赤羽(北区)で手取り12万円強、家賃6万円で生活していますが、どんだけ贅沢な計算なの」「私も北区赤羽ですが、月15万円もかかっていません」

具体的に家計簿を明記して指摘する人も。

「独身の俺の出費。家賃3万円、通信費1万円、光熱費1万円、個人年金2万円、食費4万5000円、衣料費5000円、雑費1万円、タバコ1万5000円、計14万5000円。ただ生きるだけの生活ならこれだけの手取りで何とかなるけどね。人間そうはいかんわな。目下タバコを減らす努力中」

そして、そもそも算出モデルの生活が贅沢なうえ、個々の品目の額にも納得できないというツッコミが殺到した。

「1日1400円も食費に使うとか、どんだけ贅沢なの。自炊しなさいよ。食費は半分の月2万円ですむよ」「ランチなんて200円で十分。セブンの冷凍パスタを職場のレンジでチン。俺、4年間ランチはそれだけ」「それじゃ栄養足りないな。生野菜や果物入れてミキサーにかけるだけで栄養満点。工夫すれば手抜き自炊やスムージーでも、安く健康になれる」「理美容費月3500円って、なにこれ、セレブサロンにでも通っているの? 千円カットでいいでしょ。旅費年9万円って、カネがないのに旅行しすぎでしょ!」「世田谷で25平方メートルのワンルームを6万3000円で借りようとしたら、駅から徒歩30分築50年の木造アパートになっちゃうよ」

「貧乏自慢は上級国民をニッコリさせるだけだよ」

このように全体的には「最低生計費という割には贅沢すぎる」という批判が多かったが、一方で、「貧乏自慢はやめようよ」という意見も少なくなかった。

「『そんなにかからない自慢』は日本の労働条件をいたずらに悪化させるだけ。『こういう計算出たから賃金上げろ』というデータの足を引っ張ってどうする。我々を搾取する上級国民をニッコリさせるだけの奴隷根性だよ」
「チキンレースじゃないんだから、もっと貧乏でも暮らしていける自慢はもう流行らないよ。なぜできるだけ稼いで、もっとゆとりある暮らしをしてはいけないの。修行僧なの、私たち?」

もっとも、こんな意見もあった。

「今の若者に『若いころはカネがなくて三食すき家だった』と話したら、『なにそれうらやましい。すき家なんか週一の贅沢じゃない?』だよね。でも、バブル時代より今の時代のほうが物価は低いし、インターネットがある分、安く楽しく過ごすことができるから、今の若者が貧しいとか、かわいそうとか、言えないと思うな」

たとえ、月25万円に届かなくても、若者たちは賢く生活を送っているということだろうか。

(福田和郎)