原監督がぶち上げた「FA改革論」に隠された現役時代に味わった“黒歴史”

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 巨人・原辰徳監督の“球界改革案”が、波紋を呼んでいる。

 秋季キャンプ中の11月4日、国内FA権を行使した楽天・美馬学、千葉ロッテ・鈴木大地について、「いくなら正々堂々いったほうがいい」と獲得交渉への参戦を表明したのに次いで、「人的補償はなくす必要がある」「(プロテクトの)枠をもっと広げないと…。28人だと狭すぎる」「(獲得後の)明るい話が暗い話になる」と、持論を展開した。

「しかし、FA改革論は多くの支持を得られそうにはありません。獲得後に活躍した選手は少ないが、巨人の場合はFA制度導入後、多くのビッグネームを口説き落としてきた。言えばFA勝者である巨人が、人的補償として発生するプロテクト枠の拡大や廃止を訴えたところで、共感は得られませんよ」(球界関係者)

 とはいえ、原監督は以前からこうも訴えてきた。

「FAは選手の名誉。(行使した選手の)意見も聞くべきであり、それがルール」

 原監督は巨人一筋。選手、そして、指揮官としても成功しているが、現役時代の晩年は、寂しい思いもしている。4番の座をFA加入した落合博満に奪われ、ベンチスタートとなる日も少なくなかった。たまにスタメン復帰しても、自身の代打に長嶋一茂を送られる屈辱も味わっている。

「当時の原監督は、FA権を行使して本気で巨人を出るつもりで、“見返してやる!”と息巻いていたという話もあります。それを寸前のところで引き止めたのが、父親の故・貢さんでした。冷静になった後、球団幹部とも会い、自分に対する評価、将来の指導者候補であることなどを聞かされ、原監督自身も言いたいことを全て出し、思いとどまったといいます」(スポーツ紙記者)

「選手の意見を聞くべき」という姿勢は、些細な誤解から生じた球団サイドとの思いの食い違いという、自らの体験から生まれたものなのだ。こうした原監督の経緯を知ると、FA改革論について考えさせられる部分は多いが、やはりFA勝者チームが訴えても響かないというのも頷ける。

(スポーツライター・飯山満)