横浜港には「汽車道」「山下臨港線プロムナード」という遊歩道があります。どちらも貨物線の跡地を活用。近年は東急東横線の跡地も遊歩道として再整備が進み、将来は内陸の丘から海岸の港まで連続して散策できるようになりそうです。

明治時代の鉄橋を歩ける

 横浜高速鉄道みなとみらい線の開業に伴い2004(平成16)年に廃止された、東急東横線の横浜〜桜木町間。ここでは、残された線路敷地の一部が遊歩道として再整備され、2019年7月16日(月)から歩けるようになりました。


横浜臨港線の跡地を活用した遊歩道「汽車道」は桜木町駅の近くから横浜赤レンガ倉庫の近くまで延びている(2013年6月、草町義和撮影)。

 遊歩道に生まれ変わったのは、横浜市中区内の桜木町駅西口広場付近から紅葉坂交差点までの約140m。今後も東横線跡地の遊歩道化工事が進められる計画で、2021年度には横浜駅から桜木町駅までの約1.8kmが歩けるようになる予定です。

 横浜にはほかにも、鉄道の廃線跡を活用した遊歩道があります。特に横浜港の港湾部に沿って延びる遊歩道は、古くから国際港として発展してきた横浜港と東海道本線をつなぐ貨物線の廃線跡を活用したもの。沿道には横浜赤レンガ倉庫や山下公園があり、いまでは観光客の散策ルートのひとつになりました。

 2019年7月1日(月)、桜木町から山下公園まで、その遊歩道を歩いてみました。桜木町駅から北へ約200mに進み、日本丸交差点の横断歩道を渡ると「汽車道」という遊歩道の入口があります。

 これは1911(明治44)年、現在の桜木町駅付近から横浜赤レンガ倉庫までの区間に開業した東海道本線の貨物支線「横浜臨港線」の廃線跡を活用したもの。港湾部の工場が移転したことや鉄道貨物輸送の衰退で1986(昭和61)年に廃止されましたが、1997(平成9)年に全長約620mの遊歩道として整備されました。

 途中には短い橋があり、明治期に製造されたレトロ感あふれる鉄橋をそのまま活用。横浜港の歴史を感じながら、横浜赤レンガ倉庫にアクセスできます。

遊歩道の先にも踏切の痕跡が

 横浜赤レンガ倉庫の近くからは、全長約600mの遊歩道「山下臨港線プロムナード」が姿を現しました。これも「山下臨港線」という東海道本線の貨物支線跡を活用して2002(平成14)年に整備されたもの。横浜臨港線を延伸する形で1965(昭和40)年に開業し、横浜臨港線とともに1986(昭和61)年に廃止されました。


山下臨港線の高架橋も山下公園内を除いて遊歩道に生まれ変わった(2019年7月、草町義和撮影)。

 山下臨港線プロムナードは徐々に高度を上げて高架橋に。クルーズ客船が発着する横浜港大さん橋ふ頭を少し高い位置から見ることができます。高架橋は山下公園にぶつかったところで終わりました。

 この先も山下公園に沿って高架橋が続いていましたが、景観上の問題から遊歩道化に反対する声が上がったこともあり、2000(平成12)年に撤去されました。ただ、山下公園の南東側に抜けて山下ふ頭に入る部分には、道路上に踏切が残っています。

 このほか、東急東横線の東白楽〜横浜間も地下化に伴い地上の旧線跡が「東横フラワー緑道」という遊歩道として整備されることになり、2011(平成23)年に完成しました。横浜〜桜木町間の遊歩道が全面的に完成すれば、丘陵部の東白楽駅から港湾部の山下公園まで約6〜7km、ほぼ連続的に鉄道の廃線跡を散策できるようになりそうです。