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モスクワ五輪ボイコットの真相(92)

【PJ 2006年01月31日】− <激動五カ月間のドキュメント>
14.体協理事会に官房長官が特別出席
<「参加することに反対」の政府の真意を伝える>

 この懇談会は、飯沢の体協理事会結果報告から始まった。各委員の手もとには、午前中の体協理事会決議のコピーが配られている。その報告に関して、まず質問の口火を切ったのは、藤田明委員である。藤田は当初からボイコットに反対しており、既に前述したように、午前中の体協理事会を体協参与という立場で傍聴しようとしたが、非公開という理由で飯沢から拒否されている。

 藤田は「体協理事会の決議を見ると、“ナショナルエントリーを提出することに反対することを決議する”とあるが、これは参加しないということか」と核心をついた質問をあびせた。これに対して飯沢は平然と「参加しないということだ」と断定する。

 つづけて、IOC副会長の清川は、体協理事会決議をあえて無視しながら「前回のJOC総会では『参加することを原則とする』の『原則とする』をとったのではなかったか。これがポイントになると思われるので確認しておきたい」と質問すると「そんなことはどうでもよい」との野次が飛び出し、懇談会は、はじめから殺気だってきた。

 その雰囲気を和らげようと、青木半治、近藤天、安田誠克らは、自分の考え方や意見をやんわり披露する。

 そこで、体協理事会の根回しが相当に進んでいると察知した清川は、ここで鉾先を別な方に向け「この会議には文部省の柳川体育局長が出席されているが、柳川局長はオブザーバーかどうか」と質問。清川質問で河野は怒り出し、顔を真っ赤にして「柳川くん。君は帰れ!」と言い出した。

 柳川はどうしていいかわからず、席から立ち上がって、右往左往する。その時に立ち上がって「柳川局長、君が帰っては駄目だ。残れ! 残って政府の考え方を説明すべきだ」と、大音声で促したのは安斉実である。安斉の大音声はスポーツ界ではあまりにも有名で、大柄な体格も手伝って威圧感を与える。

 あとで知り合いの親しい体協記者クラブづめ記者に聞いてみたら、この時の舌戦はドアの外からでもよく聞こえ、一挙一動が手にとるようにわかったという。

 河野、安斉の大音声が中音声におさまるの見はからって、柴田は静かに「体協理事会の決議を受けて、JOC総会をどう進めるかを話し合って欲しい」と語りかけた。しかし、興奮さめやらぬ各委員に、柴田の冷静な語りかけも通じない。

 次に「政府が行くなというから行かないのか」と安斉が口走ると、飯沢は「政府と体協は不可分だ。しかし、100%従うというのではない。大きな要素であることは確かだ」と答える。宮川が「“原則参加”はまだ生きているのか」との質問に対しては、誰も答えようとしなかった。重い雰囲気が会場内を包み、手元の体協理事会決議をじっとにらんでいる委員が多い。【つづく】

■関連ブログ
伊藤公(いとう・いさお)の『モスクワ五輪ボイコットの真相』

■関連書籍
小田光康著、「スポーツジャーナリスト」という仕事
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 伊藤 公【 東京都 】
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