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モスクワ五輪ボイコットの真相(91)

【PJ 2006年01月30日】− <激動五カ月間のドキュメント>
14.体協理事会に官房長官が特別出席
<「参加することに反対」の政府の真意を伝える>
 JOCはこれまでモスクワで開催される第22回オリンピック競技大会は、世界の若人が参集して有効と平和のうちに開かれることを期待して、これに参加することを原則として対処してきたが、これは慎重かつ良識ある対応であったと考える。

 しかしながら、現在の諸情勢をみれば、必ずしもナショナルエントリーの提出を行う状態にはないといわざるを得ない。

 よって、財団法人日本体育協会理事会としては、JOC各委員および競技関係者の心情は充分理解するものであるが、わが国アマチュアスポーツの普及振興の責任を担い、その将来をあずかるものとして、JOCがナショナルエントリーを提出することに反対することを決議する。
誰もが気がつかなかったアクシデント
 体協理事会決議を読み終えた大西は「この決議はJOCを拘束するものだ」と指摘したが、ここまでくると、もはや少数意見でしかない。「体協理事会は、JOCがナショナルエントリーを提出することに反対することをここに決議した。よって、この決議を本日午後2時半からのJOC臨時総会に申し送ることにする」との飯沢の言葉で第一幕の幕はおろされたのである。

 体協臨時理事会がこのように異常な雰囲気のもとでの会議となったために、ほとんどの出席者は気づかなかったが、予期しないアクシデントがあった。選手強化責任者で、競技力向上委員長の福山が、会議の途中で姿を消していたのだ。福山はヨーロッパの主要NOCを回ってきた様子とIOC本部で仕入れた情報を報告し、伊東の演説する政府の本音を聞いているうちに気持ちが悪くなってきた。それでも我慢しながら会議の進行を見守っていたが、どうしようもなくなったので、トイレに行くふりをして会議室を出て、隣の応接室で体を横たえた。

 福山の異常に気づいた体協総務課秘書係の喜多香保里は、理事会を見守っている事務局競技力向上担当参事の射越栄一に知らせ、射越は理事会出席中の内科医の黒田(東大医学部卒)に相談した。福山の症状を診断した黒田は福山が危険な状態にあると判断したので、直ちに救急車を手配し、病院へ運ぶことを指示した。福山は連日の心身の疲労のために倒れたのだった。このようなアクシデントに見舞われたために、その日午後のJOC常任委員懇談会、臨時総会に参加派の福山、黒田の2人は出席することができなかった。幸いなことに福山は病院で数日過ごしたあと、退院することができた。

売り言葉に買い言葉のJOC常任委員懇談会
 第二幕のJOC常任委員懇談会は、午後1時から、岸記念体育会館5階の501号室で行われた。懇談会と銘打っているので、もちろん非公開である。

 出席者は委員長の柴田勝治、総務主義の岡野俊一郎をはじめとする常任委員10数名に、IOC委員の竹田恒徳、清川正ニの両氏。体協側からは会長の河野謙三、専務理事の飯沢重一、事務局長の鈴木祐一などが出席。それに、政府側のお目付役として文部省体育局長の柳川覚治も顔を見せている。【つづく】

■関連ブログ
伊藤公(いとう・いさお)の『モスクワ五輪ボイコットの真相』

■関連書籍
小田光康著、「スポーツジャーナリスト」という仕事
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 伊藤 公【 東京都 】
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