最近よく使われる言葉に、「エモい」という表現がある。

英語の「emotional」(感情的、情緒的)が由来と言われているが、音楽のジャンルの一つという説も......。感情に訴えかけられる、心が動かされる、しみじみ情緒を感じる、趣がある、グッとくる、といった意味で、ひんぱんに使われている。

2019年6月24日に投稿された次のようなツイートが、いま「エモい」と話題になっている。

投稿者のあんちゃ/執筆屋さんが絶賛するのは、千葉県香取市、佐原の町並みだ。まさに「嘘みてぇにエモい」風景である。「エモの極みオブ極み」と表現するほど、感動の極みだったようだ。

佐原の町並みは、いったいなぜ「エモい」のか? Jタウンネット編集部は、香取市の商工観光課で詳しい話を聞いてみた。

土蔵を改造したレストラン、古民家を改造したホテルも...


佐原、小野川沿いの町並み。あんちゃ/執筆屋さん(@annin_book)のツイートより

電話で答えてくれたのは、香取市生活経済部商工観光課の担当者だった。

「佐原は江戸時代に利根川水運で栄えた町でした。水運によって、江戸との交流が盛んであったため、江戸を強く意識し、『江戸優り』と呼ばれる独自の文化も花開きました。町を南北に流れる小野川沿いに、その名残を見ることができます」

江戸時代の物流は水運が中心だった。江戸という大消費地を控えた佐原の町は、小野川沿いの港を拠点に、物資の集散地として繁栄を極め、「江戸優り」と呼ばれるほどだった。柳の木が植えられた道沿いには、かつて米問屋や醸造業を営んだ蔵造りの商家や町屋が軒を連ねており、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。


佐原の町並み。あんちゃ/執筆屋さん(@annin_book)のツイートより

江戸時代の佐原を代表する人物といえば、伊能忠敬だ。忠敬は、「大日本沿海輿地図」を完成させたことで、よくご存じだろう。忠敬は、伊能家の養子となり、醸酒業や米穀薪炭販売に従事した。この佐原の町で、商人として活躍したのだ。50歳で隠居後、天文学や地理学を学び、世界に誇る科学的地図を作成することに......。

「伊能忠敬が30年余りを過ごした伊能家の旧宅には、土蔵造りの店舗のほか、炊事場、書院などが、現在も小野川沿いに残されています。その前には『だし』と呼ばれる荷揚げ場があり、今は観光船の乗り場になっています」と担当者は話してくれた。


佐原の町並み。あんちゃ/執筆屋さん(@annin_book)のツイートより

「小野川沿いの歴史的な建物の中には、今も現役で営業を続けているところもあります。佃煮屋さん、和紙、小物などの商店のほか、土蔵を改造したフレンチ・レストランや古民家を改造したホテルもあります。重要伝統的建造物群保存地区ではありますが、現在も生き続けているのも、佐原の町並みの特色です」

古民家のホテルに泊まり、土蔵のレストランで食事するなんて、インバウンドの観光客には喜ばれるだろう、もちろん日本人にも......。江戸時代の建物が並ぶ通りで、現代の生活、ビジネスが息づいているのだ。


小野川。あんちゃ/執筆屋さん(@annin_book)のツイートより

「2011年の東日本大震災では被害を受けたのですが、修復は終わりつつあります」と担当者。小野川に架る忠敬橋から徒歩数分の佐原三菱館(旧三菱銀行佐原支店本館、千葉県指定文化財)の修復が完了すると、ほぼ完了だという。

あんちゃ/執筆屋さんはこうもツイートしている。

江戸時代から明治、大正、昭和まで、幅広い年代の建造物が混在する重要伝統的建造物群保存地区でありながら、令和に生きる人々のセンスや感覚も受け入れる、佐原の町並み。これはもう、「エモの極みオブ極み」だ。