大手マスコミよ、ライブドア事件を正確に報道せよ!
2006年01月27日10時41分 / 提供:PJ
最近の書籍のヒット商品に、『大人の塗り絵』がある。河出書房新社(998円)。多くの人が幼いころクレヨンで塗り絵をした記憶を持つだろう。それがいまや大人向けの塗り絵という、目新しいヒット商品になったのだ。
『大人の塗り絵』の最初の数ページには美しい花の挿絵がある。それらを参考にしながら、各人が線画(花を線だけで描いたもの)に色をつけ、塗り絵を仕上げていくものだ。
同社の編集幹部の話では、企画段階で「だれが買うのか」という議論があったという。従来の常識では、大人の塗り絵など考えられない。「営業部は面白いというし、他の書籍に比べてコストがかからないから、老人施設の認知症(能の活性化)を対象に5千、6千部の発行と決めた」と幹部は経緯を語る。同社では想定外で、驚くほど書店で売れはじめた。増刷がつづく。ヒット商品にはかならず類似企画が出てくるのが出版業界。いまでは他社の大手出版社が16社参入しているという。
「四十代以上の女性が7割です。自分の好きな色がつけられるし、手軽に絵が仕上がるから、人気が出たのでしょう」と同幹部は語る。子育てが終わるころ世代で、生活のゆとりから、美術の香りをもとめている、という見方もできる。
過去の常識からいえば、大人が絵を描く場合は、真っ白な画布のカンバスに、自分の目で対象物をスケッチし、そこから色をつけていくもの。『大人の塗り絵』のヒットの裏には、自分の目でスケッチができない現象を読みとることができる。誰かがスケッチ(線画)してくれたならば、絵の具を塗ることができるのだ。
ライブドアをめぐる一連の報道にも、「塗り絵現象」を見ることができる。今月の半ばまで、大手マスコミはホリエモンをヒーローとして線画してきた。立候補した選挙活動の先々で、かれは熱狂的なファンに迎えられた。ホリエモンは光り輝く色で、塗られていたのだ。
ある日突然、線画のページが変わった。「偽計取引、風説の流布」の容疑でライブドア関係に家宅捜索が入ると、大手マスコミは堀江社長の姿を醜く、犯人と決め付けた姿で描く線画となった。「違法性の認識はない」という段階でありながらも、堀江社長の批判が連日、強烈におこなわれた。一般市民は、堀江社長の線画に黒一色の絵の具を塗りたくった。
怖いのは市民が堀江貴文という人物のスケッチができず、マスコミ報道にゆだねた「塗り絵現象」の下にありながら、自分の考えによる黒色だと思い込んでしまうことだ。
1月25日の午後、千代田区竹橋のある会館でライター15人の会合があった。週刊誌、書籍、各出版物に記事を書くフリーライターたちである。堀江容疑者に対する強烈な批判が数多くあった。彼らの意見の枠組みすら「塗り絵現象」かなと思えた。
一方で、堀江社長の最初の言葉は本心で、本物だろう、という見方だった。「えっ、ぼくが何も知らない。そんな細かなことなど知ってるはずがないだろう」。細かいことは任せるよ、という権限委譲がなければ、時価総額8千億円の上場企業まで駆け登れるはずがない、という認識が支配的だった。ここには多少のスケッチがあった。
違法かどうかのグレーゾーンは法の解釈しだい。逮捕された堀江容疑者が有罪か、無罪か、まだ判断できる段階ではない。起訴された場合でも、おおかた法廷で激しい法解釈の論争がなされるだろう。それを前提に、大手新聞社の一面トップを精査してみると、憶測、推測、想像、推理のオンパレードだ。語尾を曖昧にしてごまかした、責任回避の記事が氾濫している。「塗り絵現象」を利用し、堀江貴文は悪人という黒い絵の具で塗りなさい、と一般市民を誘導していると同じ。ある種の情報操作だ。
実例として二つ、三つ文面をあげれば、宮内容疑者は「粉飾だと言われれば、税理士として粉飾と認めざるを得ない」と供述。これなどは最悪だ。東京拘置所の取調室に、記者が立ち会ったわけではないだろう。講釈師が見てきたことのように語るのと同じ。こんな不正確な記事が一面トップなのだ。
宮内容疑者が堀江容疑者の関与に関して「知っていたのではないか」などと話しているという。情報の出所も不明瞭で、憶測だといわれても、反証すらできないものだ。
次に、「関係者の話でわかった」という紋切り型が実に多く踊る。これは読み手側にまったく検証ができない危険な表現だ。『ライブドア本体での粉飾を認める』一面トップの見出しである。この内容となると、お粗末だ。宮内容疑者が大筋で認め、堀江容疑者の承諾を得ていたと供述していることが関係者の話でわかった、と記載されている。「大筋で認め」とは裁判所が認めるような、決定的証拠ではないはず。曖昧模糊とした表現でありながら、見出しには「粉飾を認めた」と断定形になっている。
断定する以上は、「関係者の話とはだれなのか」。実名やせめて役職は書かなければならない。それが記事への責任というものだ。松本サリン事件のとき、河野さんを犯人扱いした手法とまったく同じ。一般の読者に対して、関係者とは長野県警幹部と思い込ませたのだ。それによって河野さんはどれだけ苦しみ、心を痛めたことか。マスコミによる日本全国への風説の流布だった。マスコミ各社はみな謝罪し、教訓を今後に生かしたいと述べた。
ライブドア幹部の逮捕の報道をみるかぎり、松本サリン事件の反省はなされていない。またしても、「関係者の話でわかった」という表現を乱用している。東京地検特捜部の幹部と思わせる書き方だ。堀江貴文容疑者がかりに裁判で無実になったら、東京地検はきっとそんな発表などしていないと突っ放すだろう。関係者が霧のなかに消えるのだ。
「塗り絵現象」の時代だから、一般市民が事実の列記だけでは納得せず、線描の報道記事をもとめていることは確かだ。線画には責務を負い、情報操作を回避し、後日の責任を明確化する必要がある。大手新聞社は各紙面のトップ記事を署名入りにするべき、方向転換を図る時代にきている、という認識をもつべきだ。【了】
『大人の塗り絵』の最初の数ページには美しい花の挿絵がある。それらを参考にしながら、各人が線画(花を線だけで描いたもの)に色をつけ、塗り絵を仕上げていくものだ。
同社の編集幹部の話では、企画段階で「だれが買うのか」という議論があったという。従来の常識では、大人の塗り絵など考えられない。「営業部は面白いというし、他の書籍に比べてコストがかからないから、老人施設の認知症(能の活性化)を対象に5千、6千部の発行と決めた」と幹部は経緯を語る。同社では想定外で、驚くほど書店で売れはじめた。増刷がつづく。ヒット商品にはかならず類似企画が出てくるのが出版業界。いまでは他社の大手出版社が16社参入しているという。
「四十代以上の女性が7割です。自分の好きな色がつけられるし、手軽に絵が仕上がるから、人気が出たのでしょう」と同幹部は語る。子育てが終わるころ世代で、生活のゆとりから、美術の香りをもとめている、という見方もできる。
過去の常識からいえば、大人が絵を描く場合は、真っ白な画布のカンバスに、自分の目で対象物をスケッチし、そこから色をつけていくもの。『大人の塗り絵』のヒットの裏には、自分の目でスケッチができない現象を読みとることができる。誰かがスケッチ(線画)してくれたならば、絵の具を塗ることができるのだ。
ライブドアをめぐる一連の報道にも、「塗り絵現象」を見ることができる。今月の半ばまで、大手マスコミはホリエモンをヒーローとして線画してきた。立候補した選挙活動の先々で、かれは熱狂的なファンに迎えられた。ホリエモンは光り輝く色で、塗られていたのだ。
ある日突然、線画のページが変わった。「偽計取引、風説の流布」の容疑でライブドア関係に家宅捜索が入ると、大手マスコミは堀江社長の姿を醜く、犯人と決め付けた姿で描く線画となった。「違法性の認識はない」という段階でありながらも、堀江社長の批判が連日、強烈におこなわれた。一般市民は、堀江社長の線画に黒一色の絵の具を塗りたくった。
怖いのは市民が堀江貴文という人物のスケッチができず、マスコミ報道にゆだねた「塗り絵現象」の下にありながら、自分の考えによる黒色だと思い込んでしまうことだ。
1月25日の午後、千代田区竹橋のある会館でライター15人の会合があった。週刊誌、書籍、各出版物に記事を書くフリーライターたちである。堀江容疑者に対する強烈な批判が数多くあった。彼らの意見の枠組みすら「塗り絵現象」かなと思えた。
一方で、堀江社長の最初の言葉は本心で、本物だろう、という見方だった。「えっ、ぼくが何も知らない。そんな細かなことなど知ってるはずがないだろう」。細かいことは任せるよ、という権限委譲がなければ、時価総額8千億円の上場企業まで駆け登れるはずがない、という認識が支配的だった。ここには多少のスケッチがあった。
違法かどうかのグレーゾーンは法の解釈しだい。逮捕された堀江容疑者が有罪か、無罪か、まだ判断できる段階ではない。起訴された場合でも、おおかた法廷で激しい法解釈の論争がなされるだろう。それを前提に、大手新聞社の一面トップを精査してみると、憶測、推測、想像、推理のオンパレードだ。語尾を曖昧にしてごまかした、責任回避の記事が氾濫している。「塗り絵現象」を利用し、堀江貴文は悪人という黒い絵の具で塗りなさい、と一般市民を誘導していると同じ。ある種の情報操作だ。
実例として二つ、三つ文面をあげれば、宮内容疑者は「粉飾だと言われれば、税理士として粉飾と認めざるを得ない」と供述。これなどは最悪だ。東京拘置所の取調室に、記者が立ち会ったわけではないだろう。講釈師が見てきたことのように語るのと同じ。こんな不正確な記事が一面トップなのだ。
宮内容疑者が堀江容疑者の関与に関して「知っていたのではないか」などと話しているという。情報の出所も不明瞭で、憶測だといわれても、反証すらできないものだ。
次に、「関係者の話でわかった」という紋切り型が実に多く踊る。これは読み手側にまったく検証ができない危険な表現だ。『ライブドア本体での粉飾を認める』一面トップの見出しである。この内容となると、お粗末だ。宮内容疑者が大筋で認め、堀江容疑者の承諾を得ていたと供述していることが関係者の話でわかった、と記載されている。「大筋で認め」とは裁判所が認めるような、決定的証拠ではないはず。曖昧模糊とした表現でありながら、見出しには「粉飾を認めた」と断定形になっている。
断定する以上は、「関係者の話とはだれなのか」。実名やせめて役職は書かなければならない。それが記事への責任というものだ。松本サリン事件のとき、河野さんを犯人扱いした手法とまったく同じ。一般の読者に対して、関係者とは長野県警幹部と思い込ませたのだ。それによって河野さんはどれだけ苦しみ、心を痛めたことか。マスコミによる日本全国への風説の流布だった。マスコミ各社はみな謝罪し、教訓を今後に生かしたいと述べた。
ライブドア幹部の逮捕の報道をみるかぎり、松本サリン事件の反省はなされていない。またしても、「関係者の話でわかった」という表現を乱用している。東京地検特捜部の幹部と思わせる書き方だ。堀江貴文容疑者がかりに裁判で無実になったら、東京地検はきっとそんな発表などしていないと突っ放すだろう。関係者が霧のなかに消えるのだ。
「塗り絵現象」の時代だから、一般市民が事実の列記だけでは納得せず、線描の報道記事をもとめていることは確かだ。線画には責務を負い、情報操作を回避し、後日の責任を明確化する必要がある。大手新聞社は各紙面のトップ記事を署名入りにするべき、方向転換を図る時代にきている、という認識をもつべきだ。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一
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