昔はスポーツモデルでも樹脂製が多かった

 昔から、クルマの運転をすることのたとえとして「ハンドルを握る」という。つまり「ハンドルを握る」というのは、「運転」と同義語になるほど重要であるということ。当然、そのハンドルの形状や材質はこだわったほうがいい。とくに素材に関しては本革がベスト。

 本革は、手に馴染みやすいし、滑りにくいし、吸湿性もあるので、操作性で選べばこれに勝る素材はない。昭和の若い走り屋たちが乗り回していた、トヨタ・スターレットやレビン・トレノ、ホンダ・シビックなどの純正ハンドルは、径は大きく、握りは細く、おまけに樹脂製で滑りやすかったので、チューニングの第一歩として、ナルディやモモの本革ハンドルに交換するのが定番だったほど。本革ハンドルが高価で買えない人は、革グローブをつけてハンドルを握っていたぐらい……。

 そうした樹脂製のハンドルでドライブしたことがある人なら、本革ハンドルのありがたみが身に染みてわかっているはず。パワーステアリングが普及する前のクルマなら、なおさらだ。

革なら何でもOKというわけではない

 もちろん本革なら何でもOKというわけではなく、革の質にもピンからキリまであるのはご存じの通り。上質な革を使ったハンドルはフィーリングがいいし、手や肩の余分な力も入りにくくなるので、ステアリングインフォメーションもキャッチしやすく、ドライバーの意志も操舵装置に反映しやすい。

 シートに関しては、高級感のある本革シートが機能パーツであるかというと、正直疑問な部分があり、スポーツ走行に関していえばファブリックのバケットシートが最適だと思うが、ハンドルに関しては本革はファッションではなく、完全な機能パーツといっていい。

 なお、革は革でもバックスキンを使ったハンドルも用意されているが、素手で運転をすることが前提なら、通常の本革製のほうが無難。バックスキンは、レーシンググローブをつけた方がなじみがいいので、レースなど競技用のハンドルとしては人気がある。