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人間を含めた多くの生物は、セックスなどで異なる個体間の遺伝子を組み合わせ、両親と異なる遺伝子を持つ個体を生み出す「有性生殖」を行います。そんな有性生殖が多くの生物で行われるようになったのは「ガン」に対抗するためかもしれないという仮説が発表されました。

Transmissible cancer and the evolution of sex

https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3000275

This Wild New Hypothesis Says Sex May Have Evolved to Fight Certain Types of Cancer

https://www.sciencealert.com/sex-might-have-evolved-to-fight-cancers-that-can-be-transmitted-like-viruses

地球上の全ての生物が有性生殖を行うわけではなく、無性生殖によって繁殖する生物も多くいます。中には有性生殖から無性生殖へと臨機応変に切り替える動物も存在し、必ずしも有性生殖でないと生物が繁栄できないわけではありません。

無性生殖の確かな利点として、配偶者を探すためのコストが抑えられるというものがあり、有性生殖の場合は配偶者を見つけないと子孫を残せません。この点でいえば有性生殖は無性生殖よりも非効率的ですが、多くの生物が有性生殖を選択している以上、そこには確かなメリットがあると研究者らは考えています。

有性生殖のメリットとして最もポピュラーな理論が、無関係な配偶者の遺伝子を組み込むことで、有害な突然変異が子孫に受け継がれるのを防ぐというものです。無性生殖の場合は生存に有害な突然変異が遺伝子に発生した場合、それが子孫へとそのまま受け継がれてしまうため、有害な突然変異に対して抵抗することが難しくなってしまいます。また、「有性生殖によってもたらされる遺伝的多様性が病気などへの抵抗力を増す」「生存に有益な突然変異を生み出す可能性を高める」などの説も唱えられています。



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フランス・モンペリエ大学の研究チームは、有性生殖によってもたらされる新たなメリットについての仮説を発表しました。研究チームは、有性生殖によって繁殖することで「伝染性のガン細胞」を減少させることができるため、多細胞生物において有性生殖が広まったと主張しています。

本来であれば、多細胞生物の細胞はいずれも生物の生存のために働きますが、突然変異のガン細胞は生物にとって有害な働きをして死へと導きます。人間では遺伝の影響でガンになりやすい人もいるものの、人から人へとガンが伝染することはありませんが、犬やタスマニアデビルの中には伝染性のガンが存在しているとのこと。

無性生殖では生物の遺伝子が変化しないため、伝染性のガンが広まりやすいというデメリットがあると研究チームは指摘。有性生殖を行うことで伝染性のガンが種の免疫システムに適応することが困難になるそうで、「伝染性のガンを防ぐ効率的な方法が、他の個体とは違うユニークな子孫を残すことです」と研究チームは述べています。



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今回の仮説を実証することは困難ですが、研究チームはこの説が理にかなっていると確信しています。「ガンの危険性と有性生殖を行うためのコストを考慮しても、有性生殖を選択することはリスクが少なく、より有益な子孫生産方法です」と、研究チームは主張しました。