Photography:Hirohiko MOCHIZUKI , Kazuhiro NANYO

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現代の変革期においても社是や価値観は変える必要がないという、リンダ・ジャクソン氏。豊富な現場経験を評価されCEOに就任した、世界でも3人しかいない女性トップの1人である。

「Oui are French(ウィ・アー・フレンチ、We are Frenchをもじったもの)」と記されたシトロエンのオリジナル・マグカップに、たっぷり入ったモーニング・ティを飲んでいるリンダ・ジャクソン氏は、まぎれもなく生粋の英国人だ。現在、GMのマリー・バラ氏、スマートのアン・ヴィンクラー氏と並んで、世界でも3人しかいない自動車メーカーの女性トップの一人でもある。
 
商品企画から財務まで豊富な現場経験を買われて就任した彼女は、モーターショーのプレス・カンファレンスなどでも敢えて前に出てくるタイプではない。ジュネーヴ・サロンではシトロエン100周年の機会ながら、ショートムービーとコンセプトカー「Ami One」を絡めたショー仕立てのプレゼンに徹した。

「100周年だからこそ、これまでにないプレゼンをしたかったのは確かです。伝えるべきは、私たち人間の人生において、移動と自由はつきものであり、そこにシトロエンが寄り添い続けていることですから」
 
創業から1世紀を迎え、自動車業界のパラダイムが自動運転やEVへとシフトしている今も、シトロエンとして社是や価値観は変える必要がないという。

「抽象的な価値観より何よりも、マーケットのコアへと入っていくことが肝心です。それはアンドレ・シトロエンの時代からシトロエンが得意としているところですから。デザインのユニークさで差異化を図ることも重要ですが、他社とは異なる独特性はそれだけに留まりません。この100年の間、シトロエンはコンフォートネスを象徴する車でしたが、つねに一歩先を行くモダンなソリューションを提案し続けています。例えばC5 エアクロスなどにはサスペンションにプログレッシブ・ハイドローリック・クッションを採用しただけでなく、アドバンスト・コンフォートというシートクッションをも一新することで、唯一無二の快適性を作り上げています。それに快適性は今の時代、コネクティッド環境や収納の使い易さ、室内の採光といった面でも左右されますから。シトロエンという車に乗り込んだ乗員全員に資する快適性、だからこそ現在、INSPIRED BY YOUというキャッチコピーを掲げているのです」


 
ゥ沺璽吋奪箸離灰△愼っていく とは、日本風にいい換えればゥ罅璽供爾亡鵑蠹困Δ海琵 でもあり、その方法論やソリューションとしての解が、具体的であることが必須だという。いわばコンフォートネスや雰囲気のよさ、和みや賑わいのある車内空間といった、漠然として思える特徴こそ、具体的な技術に下支えされているべき、というのだ。

「それでも今後は、自動車をこれまで同様に買われる方と、シェアやリースの方にユーザーの傾向が分かれることは確か。どちらに注力するかではなく、私たちがいずれの分野でもプレーヤーとして対応することが肝要です。都市部と地方で自動車の用途の違いもありますし、よく見聞きをすること、バランスを取ること、シトロエンとしてグ榮阿亮由イ鮖戮続けることです」
 
欧州で始まるCO₂ 排出量を1台あたり95g/kmに抑えるルールについても、「例えばC5 エアクロスのような上位モデルは、2020年後半から欧州市場でPHEVバージョンを投入しますし、2025年には上から下までラインナップすべてのモデルで、EV やPHEVを取り揃えていきます。対策の速かったグループPSAの中でもスモールとミドルが多いシトロエンは、まったく慌てる必要がないと思っていますよ」
 
むしろ100年の節目より変化すべきは、グローバル市場での販売バランスだという。「私の今後の新たな使命は、はっきりしています。グループPSAの方向性として、プジョーは米国市場を、シトロエンはインド市場を目指すことを公言しています。シトロエンの販売台数の80%近くが現在、欧州市場にありますが、そのシェアは保ったまま今後は海外展開を加速させ、欧州の割合を2021年には60%ほどにもっていきたいですね」
 
アンドレ・シトロエン以来のシトロエンの価値観が、今の時代、世界でどのように受け止められるか、目が離せなくなってきた。