スマートフォンをかざすだけで支払いが完了する時代。だが、「支払い方法が多すぎて、わかりにくい」という声も……。電子マネーや決済サービスを上手に使いこなすために、知っておくべきポイントを識者に解説してもらった。

キャッシュレスサービス200%活用法

スマホをかざすだけの「モバイル決済」。利用手順は意外と簡単だ。

電子マネーの場合は、スマホアプリなどにクレジットカード(クレカ)の情報を紐(ひも)づけておくだけ。1度設定しておけば、カードから電子マネーへのチャージと、支払いに対してポイントが付いて、二重にオトクになります」と話すのは、ポイント研究家の菊地崇仁さん。

表1は、国内で使えるメジャーな電子マネー。プリペイド(先払い)方式のものは1度にチャージできる金額に上限があるが、ポストペイ(後払い)方式なら、紐づけしたクレカの利用枠まで使えるものも。「使いすぎを防ぎたいなら前者、チャージが面倒なら後者といった使い分けをしてもいいでしょう」(菊地さん)

電子マネーでの決済には高額な専用端末が必要で、個人商店では使えないことも多いが、表2の決済サービスが救世主になりそうだ。

QRコードやバーコードを使った決済方法です。導入コストが安いので、中小規模の店や地方でもキャッシュレス化が加速するでしょう」と話すのは、キャッシュレス推進協議会の福田好郎さん。「キャッシュレスは、社会全体の効率向上にもつながる。店頭でステッカーを見かけたら、ぜひ試してみてください」

(2018年12月7日時点)

もたつく支払い&手続きなしでスイスイ!
交通費

■「JR東」以外のユーザーもSuicaがオトクな理由

交通系の電子マネーならSuicaが最強、と菊地さんは断言する。

イラスト=ヤマグチカヨ

「クレジットチャージとモバイル決済に対応しているのはSuicaだけ。発行元はJR東日本ですが、全国のJRで相互利用できるので、これだけで問題ありません」

ビューカード(JR東日本発行のクレカ)と連携すれば、チャージ時に通常の3倍のポイント(還元率1.5%)が付与されるのも魅力(一部例外あり)。貯まったポイントは1ポイント1円相当で電子マネーSuicaに交換でき、東日本圏外のユーザーも無駄なく消化できる。

タクシーのモバイル決済は会社によってまちまちだが、大手や都市部のタクシーなら、Suica(その他の交通系ICカード)、iD、QUICPayに対応しているケースが多い。QRコード決済なら、最大手の日本交通がOrigami Payにも対応している。

飛行機は各社のウェブサイトで予約時に所定の申し込みをすれば、スマホをかざすだけでチェックイン手続きを省略できるサービスがある。預ける手荷物がない身軽な一人旅や出張時に活用したい。

イラスト=ヤマグチカヨ

キャッシュレスの最前線。独自アプリやセルフレジ導入も
コンビニエンスストア

■ポイント還元が有利な電子マネーを使い分け

セブン-イレブンではWAONが使えず、ミニストップではnanacoが使えない――。一部の例外を除き、大手コンビニはほぼ全種の電子マネーに対応している(表3)。「コンビニをよく利用するなら、ポイントを貯めやすい電子マネーとクレカを使いましょう」と菊地さん。Suicaは街中のコンビニではポイントが付かないのだ。

「たとえばローソンは複数の電子マネーで決済ポイントが付きますが、一番トクなのはdカードを使ったiD決済。提示と決済でポイントが付き、請求時に3%オフになるので、合計5%の還元率になる。年会費が実質無料なので持っておいて損はありません」(菊地さん)

貯めたポイントは電子マネーに交換したり、コード決済で次回の支払いに使うのがもっとも効率的。

複数の電子マネーを使いたいなら、スマホに搭載されている決済サービス(表4)を利用する方法もあるが、Apple Payで使える電子マネーは3種のみ。非対応の電子マネーを使いたいなら、電子マネー機能つきのクレカを使うか、対応端末を別途購入するしかない。

(2018年12月7日時点)

キャッシュレス対応は発展途上。使えるサービスを見極めよう。
カフェ&レストラン

■よく行く店ならクレカとプリペイドカードを併用

プリペイドカード(現金チャージ)が主流だったカフェチェーン。電子マネーSuicaのみ(駅構内の店舗限定)という店が多かったが、大手カフェチェーン(表1)では、クレカでチャージできるプリペイドカードを導入している。

(2018年12月7日時点)

「クレカのポイントも貯まるので、よく行くカフェならプリペイドカードを活用しましょう」(菊地さん)

ただし有効期限があるため、たまの利用なら電子マネーにしておこう。

レストランや居酒屋チェーンは楽天Edy対応の店が多い(表2)が、「店舗によっては非対応」というケースもあるため、事前に確認を。

(2018年12月7日時点)

また、支払いが高額になるときは、残高不足に要注意。こまめにチャージするか、後払い方式のiDやQUICPayが使えると安心だ。

個人経営の店では、夜はクレカOKでも「ランチタイムは現金のみ」と言われることが多い。グループで行って、個別に会計すると時間がかかるので、可能なら割り勘アプリを使ってみよう。トークアプリ「LINE」のメニューから利用できるLINE Pay、paymo(ペイモ)などが有名だ。

ネットスーパーとリアル店舗。賢く使い分けるには?
食品&日用品

■ポイントは2、3種類に絞って効率よく貯めよう

「普段の買い物はネット」という人は、すでに還元率が有利になるクレカを使っているはず。楽天市場なら「楽天カード」、アマゾンなら「Amazon Mastercardクラシック」で効率よくポイントが貯まっていく。

とはいえ、「食品や洋服は自分の目で確かめてから買う」という人も多い。お気に入りの店と、ネットショップで貯まるポイントの種類が異なる場合はどうすればよいのか?

「本来、ポイントは1つに絞るのが理想ですが、よく行く店で有利なクレカがあるなら、ぜひ活用しましょう」と菊地さん。

「モバイル決済にすれば、カード自体を持ち歩く必要もないので、年会費無料なら入っておきましょう。ただ、ポイントの種類が増えると効率よく貯められないし、うっかり失効させてしまう危険もある。2、3種類にとどめるのが賢明です」

表3を参考に、利用額が大きく、貯まりやすいポイントを見極めよう。

「ちなみに、百貨店カードは高級ブランドではポイントが付かず、デパ地下ではポイントが少ないのでご注意を」(菊地さん)

イラスト=ヤマグチカヨ (表は2018年12月7日時点)

固定費こそカード払い。メリットは逃さず受け取ろう!
公共料金、税金 and More ...

■公共料金や税金の決済でポイントを生み出す!

大金にもかかわらず、多くの人が見逃している「オトク」の種。その筆頭が公共料金だ。口座振替や現金払いからクレカ払いに切り替えるだけで、毎月ポイントを獲得できる。

「クレカの還元率は通常0.5%ですが、年会費無料で1〜1.2%付くものもあります。どうせ払うなら、ポイントが貯まりやすいものを選びましょう」(菊地さん)

意外だが、税金も「クレカ払い」の対象。専用サイトを設け、クレカ決済を導入する自治体が増えている(ただし0.8%ほど手数料がかかる)。

「コンビニでも一部の電子マネーで税金を支払えます。決済ポイントは付きませんが、チャージにポイントが付くクレカがあります」(同)

インターネットや携帯電話の料金も、二大キャリアのユーザーなら、系列のクレカで支払うことでポイント優遇が得られ、大幅な節約になる。

車検、家賃、学費なども、ごく一部ではあるがクレカ払いが解禁されている。「この支払いはさすがにムリだろう」とあきらめず、クレカか電子マネーで払えないか、確認するようにしよう。

イラスト=ヤマグチカヨ (表は2018年12月7日時点)

(中津川 詔子)