米中貿易戦争「やっぱり長期化は避けられない」と言えるワケ

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米中の貿易戦争の落としどころが分らなくなってきた。米国のトランプ大統領も、中国の習近平国家主席も、自身の地位や支持基盤を保つために引くに引けなくなっている。

トランプ大統領は、短期間で対中交渉をまとめたいだろう。交渉が難航し長引くと、大統領選挙戦にマイナスの影響が出かねないからだ。一方、中国の習近平国家主席は、共産党内保守派の不満増大に直面しているようだ。習氏が米国に譲歩すれば、批判が強まり支配基盤は揺らぐ可能性もある。それは何としても避けなければならない。

習氏は、長期戦に持ち込んでトランプが折れるのを待ちたい。米中が妥協点を見出し、摩擦の解消に向かうことは難しくなっている。

ファーウェイ制裁のマグニチュード

5月15日に米国政府が中国の通信機器大手ファーウェイに事実上の製品供給の禁止措置を発動した。トランプ氏は制裁によってBATHの一角であるファーウェイを追い込み、習国家主席に「参った」といわせたい。8月19日までファーウェイには米国での通信設備の保守などを行う猶予が与えられたが、制裁措置のマグニチュードは軽視できない。

まず、今回の制裁が完全に効力を発すると、世界経済には無視できない影響がある。ファーウェイの売上高は12兆円程度で、昨年4月に米国の制裁を受けて経営破綻の危機に直面したZTEの8倍も大きい。加えて、ファーウェイは世界から7兆円程度の部品を調達し、うち米国からの輸入が1.1兆円程度ある。制裁のマグニチュードは大きい。

その上、制裁の影響は、長引く恐れがある。ファーウェイは長期戦に備え、守りを固めた。ファーウェイは必要な米国製の半導体などの在庫を6〜12カ月分積み増し、傘下のハイシリコンからスマートフォン生産に必要な50%の半導体を調達できる。同社はグーグルのアンドロイドが使えなくなった場合、最速で今秋にも自社OSを使い始める方針だ。

中国の習国家主席としても国内での批判を避けるために、これ以上米国に譲歩はできない。米中の摩擦が長期化すると、対中交渉で成果を示し大統領選挙に向けて点数を稼ぐというトランプ氏の思惑は狂い始める。それを避けるために、米国はあらゆる措置を動員して中国を抑えにかかるだろう。

一段と不透明感高まる世界経済の先行き

米国は、中国からの輸入品に対する第4弾(3250億ドル相当)の制裁関税を準備している。これが本当に発動されると、米国企業はスマートフォンなどの価格を引き上げざるをえなくなるだろう。米国のGDPの70%を占める個人消費は減少するだろう。一方、物価が上昇し始めると、FRBが景気の減速に配慮して利下げを行うことは難しい。

また、アップルのビジネスモデルが立ちいかなくなる恐れがある。なぜなら、アップルは、世界の企業から高機能の部品などを調達し、中国にある鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンの工場でiPhoneを組み立て、世界に輸出してきたからだ。制裁関税は中国だけでなく、米国をも傷つけることになる。世界経済の先行き不透明感は高まっている。

先行き不安が高まると、米国世論はトランプ政権の対中姿勢を懸念するはずだ。中国に圧力をかけて米国の経済を減速させるトランプよりも、中国との関係を重視する民主党のバイデン候補(前副大統領)のほうがよいとの見方が増える可能性もある。中国はそうした展開も視野に入れ、時間をかけて米国と交渉したい。

米中とも、引くに引けない状況に向かっている。当面、米国は、中国と折り合いをつけられる部分については妥協点を探り、玉虫色を演出する展開はあり得る。

ただ、両国が、習政権の補助金政策や技術強制移転など、覇権争いの根幹問題の決着に至ることは想定しづらい。米中の貿易戦争が長期化する可能性は高まっている。