ゲーム業界が一変?

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「プレイステーション」のソニーと、「Xbox」のマイクロソフト。ゲーム専用機においては長く世界でしのぎを削ってきた両社が、クラウドを活用したゲーム事業などの戦略的提携に向けた意向確認書を結んだ。

手元にあるゲーム専用機にソフトを入れる従来型から、インターネットに接続したスマートフォンやパソコンでゲームを楽しむ時代に移行しつつあり、これまでライバル関係だった両社が将来を見越して手を組むに至った。

端末にダウンロードする必要がない

任天堂の「ファミリーコンピュータ」(1983年発売)で幕を開けたテレビゲームは、ゲーム専用機と、それに対応するゲームソフトが手元にあり、家庭のテレビに接続して遊ぶスタイルが長く続いた。任天堂やソニーは数年ごとにより性能が高いゲーム専用機を市場に投入することで、ゲームソフトもより高度になり、消費を刺激してきた。

しかし、定着しつつあるクラウド型ゲームは、データセンターでゲームの情報処理を行っており、ゲームソフトをスマートフォンやパソコンなど手元の端末にダウンロードする必要がない。ゲーム専用機メーカーが決める規格に沿ってソフトを開発する必要がなくなり、専用機メーカー「3強」(任天堂、ソニー、マイクロソフト)体制を崩壊させかねないほどの衝撃がある。ソニーとマイクロソフトによる発表は2019年5月17日だったが、その2カ月前には、グーグルがクラウドゲームへの19年中の参入を表明しており、ゲーム界が堰を切ったようにクラウド化へ動き出した。

これまでクラウド型ゲームの弱点だったのは、ゲーム中の動きのズレだ。データセンターの処理能力やインターネットの通信状況によっては、わずかな遅れが発生しかねない。この弱点を克服するため、ソニーとマイクロソフトの提携ではマイクロソフトが提供するクラウドサービス「アジュール」のデータセンター活用も盛り込まれている。グーグルも世界中にデータセンターを構えており、データセンターがクラウド型ゲームの「鍵」となる。また、米国や韓国で商業利用が始まった次世代通信規格「5G」では、より高速で大容量のデータ通信が可能になるため、5Gの普及が進めばクラウド型ゲームはより高度にグレードアップすると見込まれる。

気になるのは「任天堂の遅れ」

両社の提携は「ゲームやコンテンツのストリーミングサービスでの用途を目的とした、将来のクラウドソリューション」の共同開発を検討する、ともしており、その対象はゲームに限らずエンターテインメント全体になっている。また、ハードである半導体についても、新しいイメージセンサーの共同開発の可能性を探るとしており、両社の提携はさまざまな方面に広がる可能性を秘めている。

そうなると「3強」の中で任天堂の遅れが目立つ。2017年に発売したゲーム専用機「ニンテンドースイッチ」が好調で業績はV字回復を達成したが、クラウド型ゲームへの取り組みは始まったばかり。ゲーム専用機関連の売り上げの数%に満たない規模だ。ゲームのクラウド化へ向けて各社が動きを本格化する中で、開発においては自前主義が強いとされる任天堂がどう出るか。次の一手が注目される。